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37話 悪夢と『純白』

「ということでしばらく『純白』がメンバーに加わることになった。」

「いきなりですね。」

「そうよ、帰ってきたと思ったら女連れとか有り得ない。」


「メアからの仕事依頼だ。まぁ、シーラには俺の情報は既に知られてるから自重する必要がないからいいけど。とりあえず自己紹介だけ頼む。...余計なことは言わないように。」


「分かってますよ。お初にお目にかかります。『純白』の名をメアから頂きましたシーラと申します。以後お見知りおきを。」


「真面目な人じゃない。」

「物静かで大人の女性という感じですね。」


見た目に騙されるな。

さっきまで恋人を前提とした自己紹介とか考えていたからな。


見た目に反して意外とお茶目。


「ありがとうございます。」


ま、ミミ達からの反対もなくこの時は何事もなくやり過ごせた。

『この時は』←ここ重要



暗躍する組織の情報を集めるといってもなんも手がかりがなく探すのでは必要な情報量が違う。


だから、6人のうちだれかが情報を掴んだらそれを頼りに本腰を入れるという作戦だ。



「なんで、俺とシーラなんだよ。」


出会って数時間なのに物凄い疲れた。


「相性がいいからではないですか?」

「いや、今日初対面の相手に相性とかないだろ。」

「そこは勘ですよ。」

「1番重要なところ勘じゃダメだろ。」

「まぁ、いいではありませんか。相性などいくらでも変わるものです。」

「そういうもんかね。」

「そういうもんですよ。実際ナイトはミミさんのことが好きではありませんか。最初は仲間意識だったのに自然と両思いになっていくなんて素敵ですね。」


「.....................は?」

「言ったでしょ?私は人と人との関係が見えると。」


うん。それは、知ってる。

けど、俺がミミを好きとか全く自覚がなかったんだが…。


しかし、同じ『神眼』持ちとして分かるが『神眼』に嘘は通じない。


そのままの情報をそのまま伝える能力だ。


ということは、俺はほんとにミミのことが好きらしい。


「気づいてなかったのですか?」

「あ、うん、まぁ、うん。」

「『漆黒』が聞いて呆れますね。それだから乙女心が分からないんですよ。」

「うぐっ。」


それを言われると辛いものがある。

実際乙女心なんて全く分からない。

乙女心が分かる魔法があればいいんだけどなー。



その夜ある懐かしい夢を見た。



()()君。何してるの?」


俺をコアと呼んだのは恋人のルージュだ。


「昼寝。」

「神様がお昼からぐーたらしてー。だから、『駄天使』とかいわれちゃうんだよ。」

「んなもん、言わせとけばいいさ。俺をどう思うかは自由だ。」


「寛大だね~。」

「神様だからな。」

「ぷっ。なにそれー。」

「そういえば、俺達付き合ってどれくらい経っけ。」

「そういうのは覚えてないとダメだよ!明日で丁度半年だね。」

「んじゃ、明日どこか行くか。といってもどこに行く?」


「私は別に部屋でもいいよ?」

「そうか。なら、部屋にしよ。」


「あー。出るのがめんどくさいんでしょ。」

「うん。めんどくさい。」

「素直なのか無気力なのか分からないね。」


こんなふうにルージュとどうでもいい話をするのが好きだ。


俺とルージュは最初の出会いはルージュの生まれ故郷の村だった。


迎撃拠点として村に立ち寄った時に出会った。

出会った当初のルージュは髪に艶などはなく今より全然やせ細っていた。


ルージュの生まれ故郷は敵国と近く度々襲撃に来るという。

そのため食料がなくその日暮らしがやっとらしい。


話を聞いた俺は持ってきていた俺の分の食料を村の人に分けた。

その時、俺は何を考えていたのか俺にも分からない。

多分、後で狩りでもすればいいと思っていたんだろう。


そして、配る時に最初に配ったのが好奇心旺盛だったルージュだ。


他の団員も俺が配ってるのを見て配り始めた。


それからはお祭り騒ぎだ。

騎士団で森の危険なモンスターを狩って村の人でさばく。

それで食料を得た。


それからはまもなくして敵の軍隊と衝突。

怪我人は出たものの死者は1人も出なかった。


疲弊した兵を王都へ返して俺はしばらく駐屯することにした。


また、敵の別隊が襲ってくるかもしれないからだ。


その時に何かと来ていたのがルージュで色んな要求をされたのを覚えている。


数日して女王から撤退令が出たため俺は王都へ帰ることにした。


その時ルージュはこういった。


「なんでもします!だから、私を連れて行って!」

村の面々を見ても反論がありそうな者はいない。

「俺の生活はルージュが思ってるほど幸せなものではないしましてや楽しいものじゃないぞ。」

「それでもいい!コア様と一緒にいられれば。」


そういうことがあり俺はルージュを王都へ連れ帰った。


ルージュは主にメイドとして俺の屋敷に仕えた。


敵の軍隊を潰したおかけでしばらくは攻撃がなかった。


ルージュと出会った村での戦いから数年は平和な日々だった。

そして、今から半年前にルージュから告白をされて恋人同士になった。


ルージュは控えめに言って美少女だ。

銀色の髪を腰の高さまで伸ばして下の方は癖っ毛で所々はねている。

胸だって、そこそこある。けど、身長は158cmと小さい。

そんなアンバランス感が彼女の魅力でもあった。


「やぁ、お二人さん。こんなところで密談かな?」

「あ、フェルテン。違うよ...多分。」

「そこは、言い切れよ。別にやましい話をしていた訳じゃないんだから。」

「あ、うん。そうだね。」


ルージュの返事を聞いた俺はとうとう睡魔に負けて深い眠りに落ちていった。



熱い。痛い。苦しい。

気づくとそんな最悪の状況になっていた。


辺りは交戦により火の海と化し、俺は連戦により疲労困憊(こんぱい)だった。


そんな、ボロボロな体を引きずってでも、探している相手がいる。


ルージュだ。

敵の襲撃にあった俺たちはルージュを近くの村に逃がして俺は殿(しんがり)を務めた。


しかし、俺と交戦している部隊とは別の部隊がルージュが逃げ込んだ村を襲撃。


火の海となった。


そして、今はそのルージュを探している。


(どこ行ったんだ。索敵でも引っかからないし呼んでも返事がない。)


俺は焦燥感に駆られながらルージュを探した。



程なくしてルージュは見つかった。


全身血だらけで瀕死の状態で。


俺はすぐさま駆け寄りルージュを抱き上げる。


「おい!なんだよこの傷。」

「えへへ。村のみんなを逃がしていたら私がやられちゃった。」

「なんでだよ!逃げろって言っただろ!」

「むりだよ。この先にもう一部隊が待ち伏せされちゃってる。逃げてもそこで捕まっちゃう。」


ルージュとて伊達に俺と一緒にはいない。

俺には遠く及ばないが、ルージュの魔法は王国一とも言われているほど強力だ。


しかし、元々俺とセットで使う遠距離魔法しか習得しておらず詠唱中に接近されて剣で串刺しにされたみたいだ。


「ごめんね。私はもうダメみたい。」

「うるせぇ!黙ってろ。今回復してるから。」


すると、ルージュはゆっくり首を横に振った。


「コア君は回復魔法は苦手でしょ?コア君だって残り魔力は少ないはずだから無理しないで。」

「今は無理する時だ!いいから黙ってろ。」


今の魔力...最強の魔力をもってすればたとえ瀕死だろうがなんだろうが回復させることは出来るが当時はまだ最強と言われるには早かった。


その結果。俺の回復魔法では間に合わずルージュは死んでしまった。

死ぬ前に残した言葉が

『強くなって皆を守って。わたしの似の前を出さないで。それが私の最後の我儘。』

だった。

そして、ルージュは笑顔であの世へと旅立っていった。


俺は心にぽっかり穴が空いた感じがした。


それと同時に、無力な自分への怒りとルージュを殺した相手への怒りが合わさり俺は暴走した。


残り少なかった魔力は全回復し。

敵国で大いに暴れた。


いくつもの街を焼き村を襲撃させた指揮官も殺した。それに関わった者全員殺した。


それでも、怒りは収まらなかった。

しかし、ルージュのことを思い出すと急に脱力感が襲ってきて俺は暴走をやめた。


*****************


そこで、目が覚めた。

横ではミミが可愛い寝息を立てて寝ている。

まだ、夜明けまで全然ある。


「....胸クソ悪い夢だ。」


この世界に来てからこんな夢をみたことはなかった。

今日が初めてだ。


外の空気を吸ってこよう。

俺はミミを起こさないようにそっとベットから抜け出した。


愛用の黒いコートを羽織り外に出る。

夜目を使わなくても見えるくらい今日は月明かりが強い。

俺はベランダの扉を開けた。


「以下がなさいましたかナイト。」

丁寧な口調で俺をナイトと呼ぶのは今は1人しかいない。


「夢見が悪かったんでね。外の空気を吸いに来た。」

シーラはベランダでお茶らしきものを飲んでいた。


「どんな夢ですか?差し支えなければお話くださいませんか?」

「まぁ、昔の話だし別に構わないが特別面白い話でもないぞ?」

「構いませんよ。」


シーラがそういうので俺は見た夢のことを話した。


「そうでしたか。ナイトには恋人がいて戦いに巻き込まれて命落としてしまわれたのですね。」

「あぁ、そりゃ怒り狂ったね。」

「.....今は大丈夫なのですか?」


大丈夫というのは恋人が死んで正常を保っているのかということだろう。


「その辺の区切りは付けているつもりだしもう2度とあんなことが起きないように常に気をつけているから多分大丈夫。」


「そこは、言い切ってください。」


シーラの言葉でふと思った。


シーラは口調こそ違えどルージュにそっくりなんだ。


髪は銀色だし、長さも腰辺りだ。

唯一違うのが口調と胸の大きさだ。


シーラはお世辞にも大きいとは言えない。

良くて普通程度。


「何故か失礼なこと考えていませんか?」

「いや、ソンナコトナイヨ。」

「そうですか。胸が小さいのは仕方ないことです。女性の価値は胸の大きさではありません。」


あー。『神眼』の能力がこんなにも忌々しいと思ったことはない。

相手の能力を制限するスキル持ちいないかなー。


それから、俺は夜明けまでシーラとお茶会をした。

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