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33話 観光と迷宮

ゲートで魔都に向かった俺たちは絶賛観光中だった。


魔都マールは主に獣人や魔族などの人外の種族が住んでいる。


今から100年ほど前までは戦争していたらしいが今から40年ほど前に終戦条約を締結。

両者共に戦争をしないことを誓ったとか。


「やっぱり、どの街も平和だな。」

「終戦条約を締結してから戦争は起きていません。それどころか、人間の文化が魔都まで浸透しています。」


確かに俺達が歩いていても全く嫌な顔されないからな。

そういえば、リーファがここで活動してるんだったな。


「エルフって普通にいるものなのか?」

「いえ、エルフは魔都の最内陸部の森の中に住んでいます。街に現れても姿を変えているか人目につかない所で活動している場合が多いです。」


なら、リーファを見つけるのは苦労しそうだな。


取り敢えず今は観光に集中しよう。

俺は姿は変わってないから気づけばリーファから接触してくるかもしれない。


「魔都の魅力ってなに?」

「そうね。文化が入り交じってるから色んな文化を楽しめるわね。」

「それと、モンスターも1段と強くなっているのでそこも、魅力のひとつですね。」


「まぁ、ナイトからしたらまだまだ雑魚かもしれないけどね。」

「ですねー。」


まったく、人をなんだと思っているのか。


───────その通りだよ。


魔都のモンスター平均レベルは50。

俺の半分しかない。


いや、俺もこの世界に来て少しだけレベルがあがったから半分ではないがもっと低いことになる。

現在は102レベルだ。

ゴライアスやノーツとの戦闘でかなりレベルがあがった。


「取り敢えず腹減った。なにか食べようか。」

「この辺りでは兎肉に似た食感の食べ物が食べられると聞いています。」


「相変わらずの知識だな。」

「いえ、私はメイドが集めた情報を言っているに過ぎません。お褒めになるならメイド達にお願いします。」


メイド達はどこを目指しているのだろうか。

諜報も商売も戦闘もこなすメイドとか聞いたことない。


いや、そんなことができるメイド達がそこら中にいてたまるかってことなんだが。


「それにしても、兎肉に似た食感ってかなり適当よね。」

「それも致し方ない事だと思います。食材の名前が『カウラビット』ですから。」


牛兎?

体が牛で顔が兎?

顔が牛で体が兎?


どちらにしろバランスが悪すぎる。

元々の体の大きさが違うから当たり前だが。


「取り敢えず、食べてみようぜ。そしたら分かるだろ。」

「そうね。そうと決まったら食べるわよ!」


あ、うちの大食いモンスターのスイッチが入ってしまった。


結局『カウラビット』はただの兎だった。

ただ、頭に角が生えていてそれを使って突撃してくることから闘牛(cow)と名付けられたそうだ。

肉は筋ぽいのかと思ったがそんなことはなく普通に柔らかかった。


これなら、自分達で狩って食材にするのもありだな。



「よし。腹も膨れたし次はどこ行く?」

「この当たりに手頃な迷宮があるのでそこに行きます?」

「手頃な迷宮とは一体...。」


「ナイトさんなら10分もあれば制覇出来ると思いますね。」

「出来そー。」

「主殿だからな。それくらいしてもおかしくない。」


うーん。皆の俺の印象てどうなってるんだろう。



ま、そんなことは置いておいて。

俺たちは手頃な迷宮に向かった。



「うわ、かなり入り組んでやがる」

「ま、それが迷宮だからね。それくらいはしょがないんじゃない?」

「俺方向音痴だから、すぐ迷うんだよ。」


「へぇー意外。ナイトにも弱点あったんだ。」

「俺は完璧超人じゃないぞ。」


俺にだって弱点くらいある。

猫が嫌いだし、方向音痴だし、手加減が苦手だし、自重が嫌いだしな。


あ、猫の獣人は大丈夫です。

だって、意思疎通が出来るし、なにより、カトレアは従順だし。

カトレアで文句があるんだったら従者は諦めた方がいいと思う。


他にもあるが自覚してるのはこれくらいだな。


「よかった。ナイトも人間らしいとこあるじゃない。」

「そうなるように意識してんだよ。」


この世界にも見た目は人間だけど本当は違うみたいな種族は存在する。


エルフなんかがいい例だ。

耳さえ隠せば人間と変わらない。

少し色白な程度。


逆にミミやカトレアは犬と猫の獣人で耳は畳めばなんとかなるが二人には尻尾がある。


大体は尻尾で獣人か否かを見極めるとか。


「でも、この迷宮にはそんなに強いモンスターはいないから少しは安心できますね。」

「確かにそうだが、油断するな。特にこの先。少し開けた場所がある。そこで大軍に襲撃される可能性もある。常にとは言わないが少し警戒していてくれて。」

「了解です。」


ま、相手が熟練の暗殺者でもない限り俺の[反響]スキルで分かるがな。


俺たちは少し開けた場所に足を踏み入れる。

その瞬間、辺りは緑溢れる大地となった。


別に木が鬱蒼としている訳でもなくて草原が広がっているような感じだ。


「な、なに!どこここ?」

「カトレア。さっきのとこにゲートだとか転移魔法の反応はあったか。」

「いえ、そのようなものは見当たりませんでした。」


「ここは安全地帯(セーフティーゾーン)ですよ。」


俺達がキョロキョロしていると前から黒ずくめの女に声をかけられた。


女と分かったのは声が女声だったからだ。

と、同時に聞いたことのある声だった。


「久しぶりです。ナイト。」

「この声...リーファか!」

「やっとですか。すぐに分かって欲しかったですね。」

「いや、ここにリーファがいるとは思わなくてさ、すまん。」


確かにリーファは魔都で活動していると聞いていたが流石に都合よく会えるとは思ってはいなかった。


「ちょっとナイト。誰よこの女の人は。」

「そうです。ナイト様。また、浮気ですか。」


ミミとシェリーからジト目で見られてしまった。

それでも可愛い。


「ちょっとした縁でな、話をした程度だ。それ以降は会ってなかったから。」

「酷いですね。私の裸まで見たのに。」


事実なだけに否定できないのが辛い。


「裸ってどういうことよ!」

「ナイト様!説明ありますよね。」


この二人はまだ怒るから怖くはないんだが、一番怖いのが笑いながらこちらを見るララだ。


傍から見ればただ笑ってるだけに見れるが俺にはララの背後から黒い何かが出ているように見えて怖い。


「リーファ。話を省きすぎだ。」

「まぁ、事実ですし。」


いや、そうだけどね。言い方っていうものがあるでしょ。


取り敢えずミミ達には説明をした。

ミミ達も被害者だけありすぐに理解はしてくれた。

その後めっちゃ怒られました。


ラートのせいなのに。


ちなみにリーファがエルフだということはリーファの願いでミミ達にも話していない。


「で、ここが安全地帯(セーフティーゾーン)ってどういう意味だ?」

「そのままの意味です。ここはモンスターは近づくことができない空間。迷宮にはこういった場所が数多くありますね。ここに来る冒険者なら事前情報として知っているはずですが。」


「ここに来たこと自体思いつきだからな仕方ない。」

「思いつきで迷宮を攻略しようとか流石ですね。」

「まぁ、これくらいなら簡単に攻略出来るからな。」


この迷宮の階層は60階層まである。

シェリーと二人っきりで行った鉱山とほぼ同じ構造をしているから鉱山の10階層多いバージョンだ。


「俺たちはこれから、もっと奥に進むがリーファはどうする?」

「私は私でクエストを受けているのでそれを目的に進みます。そのため目的階層までご一緒してもよろしいですか?」


俺は別に構わないが問題はミミ達なんだよなー。


「横取りしないなら付いてきも私はいいわよ。」

「同じくです。横取りは許しませよ。」


なんか、二人とも闘志を燃やしているが何を取られると言うのだろう。

エルフには大切なものを取る魔法でもあるのか?


全く分からない。

.....ま、いっか。


俺達は迷宮の探索を開始した。

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