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31話 廃村とアンデッド

ミミ達に2時間たっぷりと説教を受けた俺とラートは一生あんなことはしないと誓った。


理由はマリが常に抜刀していていつ斬られてもおかしくない状況になっていたことと、常に剣が紅く光っていて、いつ《赤煌の剣戟》を撃たれてもおかしくなかったこと。


こんな極限状態でまたやろうと思うのはなにかを超越した者しか出来ない。


「そういえば、今回のクエストの目的はなんだ?」

「あれ?言ってなかったけ?今回は討伐じゃなくて調査だね。」

「なんの。」

「この先に小さな農村があるんだけどそこで不穏な動きが見られるとの情報が入って女王陛下直々の御依頼だよ。」

「そうか。しかし、不穏な動きとか大雑把すぎだろ。」


「それも、仕方ないことさ。なんでも調査隊はほとんど全滅で辛うじて生き残った若い兵士が伝えたらしいからね。」

「その農村どんだけ強いんだよ。」


調査隊を撃ち倒すとか怖いんだが。

「いやいや。倒したのは農民じゃなくてアンデットだよ。」


「「え!」」


俺が反応するより早く反応したのはミミとシェリーだった。


「そうだったな。ミミとシェリーはお化けとかそういうのが苦手だったな。」

「でも、相手はちゃんと見えるし実体だからちゃんと攻撃も通るよ。」

「生理的に受け付けないのよ。」


「女の子は大変だね。」

「全くだな。」


「ナイトさん。私達も女の子ですよ?」

「わかってるって。全員可愛い女の子だよ。」

「もう。ナイトさんたらお上手なんだから。」


そういう言ってララに背中をバシバシ叩かれた。

痛いかった。


「イチャイチャするのはあとにしてね。問題の村に着いたよ。」


「はいはい。分かったよ。」

「否定はしないんだ。」

「いや、婚約者だし。イチャイチャするのは別に変じゃないだろ?」

「時と場合はわきまえてね。」


ま、可愛いから仕方ないね!



さて、そろそろ真面目にやりますか。


村を[索敵]スキルで見てみたがほとんど人は居らず廃村状態だった。


「全く人の気配がしないな。」

「そうだね。となると。どこで調査隊は全滅したんだろうね。」


「2人とも近くに人の気配がする。」


そう言ってシアが俺のコートの裾を引っ張った。


「どこだ?俺は全く感じないが。」

「あそこ。」


シアが指したのは教会だ。


「なるほど。教会ならアンデットが入れないのは納得だ。」

「けど、かなり弱ってる。」


俺達は教会に入った。


「誰もいないね。」

「隠し扉だな。」


米村の時もそうだったがこの世界は地下だったり隠し扉とか非常時に使うものが多い気がする。


それだけ危険な世界ということだが。


「よく分かったね。なにかのスキルかい?」

「まぁ、そんなところだ。」


「ナイトってどんなスキルを持ってるんです?」

マリは興味津々のようだ。


「大したスキルはない。索敵スキルが高かったりちょっと戦闘に役立つスキルが多いだけだな。」

「それだけでナイトのように強くなれるの?」


「まぁ、俺でも状況によっては死にそうになることだってあるし俺の場合殆ど経験だからな。」


「私も経験を積めば強くなれる。」

「けど、あんまり強さは求めない方がいい。」


「それは、なぜ?」

「誰かと競い会える環境の方が人間は伸びる。何も目標がないと全然伸びない。」


これも、一応経験則だ。

最強と言われるようになった俺に挑んでくるやつはいなかった。


相手は高ランクモンスターだけだった。


「そうですか。勉強になります。」

「ん。」


「さて、もういいかな?そろそろ助けてあげないとほんとに死んじゃうかもしれないからね。」

「そうだったな。んじゃ俺が先行するわ。」


「ご主人様。ここは私がいきます。」

「そうか、取り敢えず。『ホントに暗い』。よし。これで明るくなったな。先行頼んだ。」


「ホントに貴方は何者ですか。」

「ナイトがますます分からなくなったね。」


俺達は教会の地下へと続く階段を降りた。


『シア。反応はまだあるか?』

『うん。この先まっすぐ。』


未だに俺には感じられない。反応。

こりゃ警戒した方がいいかもしれないな。


俺の[索敵]スキルに引っかからない人間などまずいない。

それが1km離れていれば話は別だが今回は500m程度の距離だ。


階段を降りるとそこはドーム状になっていてかなりの広さがあった。

規模にして村1つが丸々入ってしまう程度には広かった。


「無駄に広い空間だね。」

「広すぎだろ。何のための空間だ?」


「これは、恐らく儀式を行うための空間ですね。」

「ミミ。分かるのか?」

「はい。少しですけど魔法文字が読み取れました。」


『魔法文字』

文字を魔法で改変したもの解除の魔法をかければ普通に文字として読むことができる。


「儀式ね。んじゃあれは生贄か?」


部屋の入口とは真反対。

必死になにか言っているがケースのようなもので遮られている。


「来るなって。早く逃げろって。」

「ナイト、分かるの?」

「だだの読唇術だ。唇の動きで大体分かる。」


「でも、逃げろって何だろうね。」

「左右から敵の反応有り。数は100。」


その瞬間大勢のゾンビがドームの中に押し寄せた。


「な、なにこれ!こんなの聞いてない。」

「ま、ここの村の奴と調査隊だろ。」

「なるほど。1人を生かしておいて助けに来た所を襲撃か。犯人は意外と知能犯かな?」


俺は後衛職、ミミとシェリーを守るようにして立った。


「そうかもな。さっきからゾンビ共は一定の距離から近づいてこないからな。」

「数で押すような真似はしないってことですね。」

「その分、どこから攻めてくるか分からないからな。神経が擦り切れる。」


ま、歴戦の兵士500人を相手にしろと言われるよりかわ遥かに楽だ。


「んじゃ。突っ込みますか。」

「ご主人様。私もお供します。」


そして、俺とカトレアはゾンビの大軍の中に突っ込んだ。


ミミ、シェリー、サチはイリスとラートのゴーレムに守ってもらって。他は俺とカトレアを援護する形でもあとに続いている。


「カトレア、俺から離れろ!」


『気高く吠えよ炎王!』

『唸れ氷神。万物を凍てつかせろ!』


俺は『ブレイブバーン』と『サースレア』

焔と氷の最高魔法。


向こうの魔法だがこれを使えるのは極僅かだった。


『ブレイブバーン』は広範囲を焼き尽くすもので、

逆に『サースレア』は広範囲を凍てつかせるものだ。


同じ範囲で鉄をも熔かす高温と炎をも凍てつかせる低温がぶつかったらどうなるか。


答えは簡単。


融点を軽く超え沸点に達した氷は水蒸気となりドーム状の部屋を埋め尽くす。

水が沸騰して出来るのが水蒸気だ。つまり、100℃の空気が部屋を埋め尽くすことになる。

普通の人間なら大やけどだ。


カトレアを下げたのもやけどを負わせないため。


100℃の水蒸気をうけたゾンビたちは体の内側、内臓を焼かれて次々に倒れていく。


「まったく。攻撃するならそう言ってくれよ。危うく僕まで焼かれるところだったぞ。」

「すまん。カトレアが下がったらわかるかなと思ってな。」


「いや、確かにそれで分かったけどさ。それでもなにか合図をくれよ?」

「次からは気を付ける。」


「あ、あの。さっきのはどうやったんですか!」


珍しくサチのほうから話かけてきた。


「いや、あれは消費魔力が大きすぎるから実践では使えない。」

「そうですか..........残念です。」


魔法のこととなると前が見えなくなる性格らしいな。

結構可愛いとあるんだな。


「ま、これでゾンビは片付いたな。」

「じゃ、彼女を助けてしまおうか。」


「いや、待て。あのケースから出す前に聞きたいことがある。」


そういって俺はケースに近づいた。


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