30話 覗きとエルフ
今年最後の投稿になります。
弱気から回復した俺はまたラート達とクエストをこなしていた。
「この前は悪かったな。せっかく打ち上げに誘ってくれたのに。」
「構わないよ。なにか話すことがあったのだろ?」
「うん。まぁ、それなりに。」
「なら無理強いは出来ないよ。」
何度か一緒にいて分かったがラートは人が良すぎると思う。
こっちに何かあっても詮索してこない。
その割には自分達の情報はかなり明かしてくる。
ラート曰く信頼しているからだとのこと。
かなり人が良すぎる。
痛い目に合わないといいが。
「よし。この辺で一旦休憩にしよう。この先に天然温泉があるから女の子達は入ってくるといいよ。見張りはナイトと僕でやっておくから。」
「分かりました。では、皆さん。先に湯浴みしてきましょう。」
ミミ達が温泉に入りに行っているあいだかなり暇だな。
「ナイト少しいいかい。」
「どうした?」
「『漆黒』は君だろ?」
「あぁ、そうらしいな。」
どこで分かったのだろうか。
俺は今まで自分から『漆黒』だと名乗ったことは勿論ないしそれらしい言葉も動きもしていない。
「やっぱりね。君がずっと黒魔法ばっか使うからもしかしてと思ったが。」
「別に隠しているつもりは無かっんだがな。」
「それでも、多分マリは分かってないと思うけどね。」
「じゃあ、ザフトを殺したのも君かい?」
「どうしてそう思う?」
「ザフトを殺した犯人はかなりの凄腕の暗殺者だ。ナイトなら気配を消す魔法を持っていても不思議じゃないし、たまたまか必然かは分からないけどナイトはザフトの妹、アリスにも接触しているね。だから、ザフトを殺したのも君かなと。」
俺は少し身構えた。
何故ここまで知っているのかと。
「そんなに身構え無いでくれよ。ザフトは僕の従兄弟さ。だから、この情報もアリスから聞いたものだよ。」
なんだ、そういう事か。
「俺を恨むか。」
「いや、むしろ感謝すらしているよ。」
「従兄弟が殺されたのにか。」
「ザフトは昔から独裁主義だったからね。自分の思い通りにならなかったらすぐ周りに当たり散らすからねアリスも被害にあってたんじゃないかな。そう考えると感謝するべきだと思うね。」
「いや、アリスにそんな傷はなかったからアリスには当たらなかったんだろう。」
俺の言葉にラートは目を見開いた。
アリスと風呂に入った時に大体は見たがそんな傷はなかった。
「まさか、ナイト。そういう趣味があったなんてびっくりだよ。」
「俺にそういう趣味はないぞ。アリスに言われたから仕方なくだ。」
そういう趣味とはまぁ、幼女愛護とかそういうのだろう。
いや、確かにシアは完全に幼女だしカトレアも年齢で言えば13.4歳程度だし。
仕方ないと言えば仕方ないのだが別に俺は特段幼女が好きという訳でもないからセーフだろう。
「アリスまでナイトの毒牙にかかるとは。」
「人聞きが悪いな。俺はアリスと風呂に入っただけだぞそれ以外は何も無い。」
「羨ましいね。僕なんか嫌だの一点張りだからね。」
それは、当たり前だろ。
年頃の女の子にいう言葉じゃない。
「さて、もういいかな。」
「なにが?」
「僕に付いてきてくれるかな『漆黒』」
ラートの意味は全く分からないが取り敢えず付いていくことにした。
木の枝から枝へ飛び移る。
しばらくするとラートが止まった。
「お前。運動神経ないな。」
「そりゃ僕は君と違って後衛だからね運動神経はそんなに要らないのさ。」
「それより、なんで、こんなの所に呼び出した。」
「簡単さ。『重力』」
ラートが放った魔法は重力倍加魔法。
対象の周囲を重力の檻で囲む集団魔法だ。
「何すんだよ。」
「大丈夫だよ。これから面白いものを見せてあげる。決して危険じゃないから安心していいよ。」
めっちゃ不安。
しかし、俺が重力に耐えられても枝が耐えられなかった。
俺が乗っていたのは枝の先端。
それが倍加された重力に勝てず折れる。
俺に飛行魔法はない。
俺は重力に従って落ちていった。
バッシャーン。
盛大に上がる水しぶき。
俺達の下は水.....ではなくお湯だった。
「全くなにしやがる。」
「ナイト!」
「ナイト様!」
背後から聞き覚えのある声がした。
「あ。」
そこには生まれたままの姿のミミ達がいた。
シアとカトレアとアサ以外が手で胸を隠してこっちを睨んでいた。
勿論、マリ、サチも一緒だ。
サチなんか顔真っ赤だ。
マリの胸はあまり大きくはなかった。平均程度だ
その代わりサチは着痩せするタイプなのかかなり大きかった。ミミと同じくらいだな。
「どういう事か説明ありますよね。」
そして、マリの視線が痛い。
まさか、物理攻撃か!
「いや、あの、ラートに落とされました。」
「つまり、覗いていたと?」
「いや、ちがう!ラートにこの上に呼び出されて重力魔法をかけられて落ちた。」
「居ないわよ。」
そりゃ、犯人がそこにずっといるわけない。
今頃ちがう木に移ってこの状況を見てるに違いない。
「そうですか。最後に言い残すことは?」
そう言ってマリの剣が紅く光る。
前にも見たことのある光だ。
マリの能力。
《赤煌の剣戟。》
その光だ。
「ごめんなさい。」
俺は謝った瞬間に肉眼では捉えることの出来ない速度で逃げた。
これのお陰でマリ達からは逃れる事が出来た。
完全勝利だ。
また、逃げた先に女の子が居なければな。
「あ」
「え?」
目と目が合う。
ヒュッ!ガッ!
一瞬見とれて何が起きたか分からなかったが見ると俺のすぐ横の木に短刀が刺さっている。
「貴方は何者ですか。」
「俺はナイト。君は?」
「私はリーファ。」
エルフの女の子は名乗った。
リーファ
性別:女
レベル80
種族:エルフ
スキル[剣術]、[体術]、[投擲術]、[魔眼]、[精霊術]
[幻獣召喚]、[精霊使役]、[幻獣使役]、[封印術]
備考、魔眼は神眼の下位互換。
なんで、エルフがこんな所に?
通常エルフは魔都の奥深く。最内陸部にある森に住むと言われていて人がエルフを見ることはまずない。
その、森の周りにはレベル90を超えるモンスター達が徘徊しエルフの許可無しに立ちいればすぐさま冒険者は肉塊と化す。
そんな、箱入りな種族がなんで、こんな所で湯浴みをしているのか。
「貴殿。なぜここが分かった。」
「いや、適当ににげ...歩いていたら着いた。」
「嘘は辞めた方が身のためだぞ。」
「いや、本当だって。」
「それは、まずない。ここら一帯は私の結界で人避けがされている。故意に入ろうとでもしない限り入ることはない。」
「あー。なんか途中で壁みたいのがあったから破ったぞ。でも、直したから安心しろ。」
「な!私の結界を破っただと!そんなことある訳、いや待て、現にこの男は私の目の前にいる。ということは、」
「なぁ。」
「なんだ。」
「服着てくれないか。目のやり場に困るのだが。」
リーファは俺が着てから服も何も身につけていない。
生まれたままの姿で湯気が申し訳程度に隠している程度だ。
「では、少し向こうを向いていてくれ。」
「あ、はい。」
本人も忘れていたらしい。
後ろでガサガサと音がしている。
まぁ、[反響]スキルがあるから形は分かるんだけどね。
残念なことに胸はそこまで大きくはなかった。
「いいですよ。」
そう言われて俺はリーファの方を向いた。
「で、なにから逃げていたのですか?」
「え?俺は普通に歩いてただけだぞ?」
「私は魔眼持ちです。嘘は通じませんよ。」
おーそれは、厄介だ。
「実は仲間とちょっと喧嘩と言うほどのものではないがちょっとな。」
「なるほど。大方女性の入浴を覗いてしまって怒られてここまで来たと言った所でしょう。」
読心術でもあるの?
諸に的中させてきたんだが。
「じゃこっちからも質問させてもらうわ。」
「なんてすか。」
「なんで、エルフがこんな所にいるんだ?」
「私は破門エルフです。エルフの森は純血のエルフでないといられないのですよ。」
破門エルフか。
それも、書物で読んだ程度だがダークエルフであったり他種族とのハーフであるエルフは破門エルフとなり森を追放となる。
リーファもその1人なのだろう。
「なんか、ごめん。」
「いえ。あなたが謝ることはありませんよ。謝るなら私の裸を見たことに対して謝って下さい。」
「ごめんなさい。」
「でも、いいのか?人間にそんな自分のことをペラペラ喋って。」
「えぇ、まぁ、自分の事ですので。それに貴方は人間ではないでしょう?」
あ、やっぱりバレてるのね。
俺に龍ともう一つの血が混じってることに。
「不思議ですね。人ではないのに見た目はまんま人ではありませんか。」
「お陰でかなり誤魔化せてるところはあるな。めっちゃ便利。」
とその時。後からまだ遠いいがシェリーの声がした。
「やべ!来た。」
「じゃな!俺行かなきゃ!」
「私は魔都で活動しています。なにか縁があれば共闘位はしてあげますよ。話相手をしてくれたお礼です。」
「こっちこそ。いい目の保養にはなったよ。じゃ!」
後から「な!」という声が聞こえたがあれは不可抗力だから仕方ないね。もし、俺が言わなかったらリーファはずっと裸だっただろうし。
あのあと見事にマリに捕まり男2人は説教を受けたことは言うまでもない。
今年最後になりますが年明けからどんどん執筆していきますので応援のほどよろしくお願いします。
今年この『最強は異世界でも最強ですか?』をご愛読して頂きありがとうございました。
来年からもよろしくお願いします。