29話 能力の秘密。
なんか、今回はグダグダになりそうな予感。
ラート達と別れて一旦宿屋に帰った。
「さぁナイト!説明して!」
なんかすごい既視感。
ま、いっか。
「俺がなんで二刀流を隠していたかは話したと思う。」
「戦争のきっかけになる。だったわよね。」
「そ、けどそれだけじゃない。」
「あれは、前の世界じゃかなりの頻度で使ってた。それは、戦争中ということもあったし何より守るものがあったからな。あの技でかなりの人を斬ったよ。」
「つまり、あれは、血塗られた技なんだよ。」
比喩でもなんでもない。
真実。
アレを人の目の前で撃つのはかなり抵抗があった。
それは、この世界の住人は俺のことをよく知らないから黙っていればバレない。
俺にとってあの技はある意味特別な技でもあった。
「ばっかみたい。」
俺が深く考え込んでいると頭上から罵声が浴びせられた。
「聞いたところによるとその技はなんか不吉な技ぽいけどそんなこと気にしたって今更じゃない?あんたの世界がどうだったかは分からないけど冒険者なんかしてれば死ぬ思いをすることだっていくらでもあるし死んじゃうことだってある。それを一々気にしてたらなんにも出来ないよ。」
「つまり、深く考えすぎ。前にも言ったと思うけど私はナイトが好きでついて行ってるの。そこにナイトの過去なん関係ないの。他のことでは頭が回るのに自分のこととやると鈍るんだから。」
「それがナイト様ですよ。」
「ご主人様。その技は誰かを守る為にお使いになったらよろしいのでは無いでしょうか。」
「誰かを守る?」
「はい。今まで通りにミミさんやシェリー様などを守るための技にこれからしていくのです。」
誰かを『守る』?俺が?
今までそんなこと意識した覚えは一度もない。
そんな奴が誰かを『守る』ことなんて出来るのだろうか。
その時頭がなにか柔らかいものに包まれた。
それは、ミミの胸だった。
「大丈夫です。ナイト様はもうたくさんの人を『守って』いますよ。言い方を変えますと『助けている。』になるますね。」
「私はナイト様に最初に『助けて』頂きました」
「私も鉱山で『助けて』貰ったわね。」
「私も処刑されるのを『助けて』もらった。」
「私も欠損して死にそうだったのを『助けて』頂きました。」
「私も街をドラゴンから『助けて』貰いました」
「私も処刑台行きから『助けて』貰った。」
「全員がナイト様に『助けて』頂いてるんですよ?」
「これが何よりの証拠よ。ナイトが助けた人はまだいるし。前にも言ったと思うけど過去なんて気にいないの。」
「そうか。俺は誰かを助けられてたか。よかった。」
そう思うと自然と涙がでた。
今まで人を殺して人を喜ばせていた。
それも立派に助けになっているが俺としてはあまり実感がわかなかった。
優越感なんか湧かないし湧くのはまたやっちまった。という罪悪感みたいな感情。
けど、今回は人をあまり殺さず感謝された。
それが俺としてはかなり嬉しかった。
なんにも罪のない人を殺して喜ばれるより一滴も血を流さずに喜ばせていた方がいいに決まってる。
なんにも罪のない人は殺していない。
つまりは、そういう事だ。
「なんか、いつもすまん。時々前のことを思い出して落ち込むことがあるんだ。迷惑かける。」
「迷惑ではありませんよ。」
「それ言ったら私たちの方がナイトに迷惑かけてるでしょ。」
「私達。ご主人より弱い。」
「私もまだまだ未熟者です。」
「私も槍はまだまだですね。」
「私も盾はいい感じなのだが剣はまだまだだな。」
「ナイト様。いつか、私におっしゃいましたよね。」
『この世に完璧なんてない。あっちゃいけない』
「と。私はあの言葉を今でも覚えています。」
「自分でいないとか言っておきながら完璧になろうとしないの。わかった?」
「ああ、わかった。ごめん。」
「弱気なナイトさんも素敵ですね。」
.............。
なんか、めっちゃ悔しい。
自分の弱い所を見せているようでなんか嫌だ。
「誰が弱気だ!俺は元気だ!」
空元気じゃない。
ララに言われた言葉を元気に変えただけだ。
俺は基本負けず嫌いなはずなんだ、フェルテンにも何回も言われたし戦友からも幾度となく言われた。
けど、それが悪いとは思っていない。
「大胆不敵で無鉄砲がナイトさんの取り柄ではありませんか。」
「よし!なんか、やる気出てきた。」
「明日からクエストやるからそのつもりでいてくれ。」
「いきなり元気になったと思ったら戦うことしか頭にないの?」
「ナイト様ですから。」
「あ、うん。そうだったわね。」
二人はお決まりのセリフを言った。
前の世界で『最強』を冠する者故の辛さ、悩み。
強ければなんにも悩みがないと思ったら大間違い。
むしろ悩みは増える一方で、ちゃんと処理出来ないと今みたく爆発を起こして心が弱くなる。
人を殺した、罪悪感
誰かに従わなきゃいけない、不甲斐なさ
誰かを守るために誰かを殺す、矛盾
これら全て人間としての根幹にある感情だ。
俺は残念な事にこういった感情を捨てられなかった。
この感情を捨て狂戦士にでもなっていれば今日みたく落ち込んだりはしない。
けど、これらを捨てたら俺に一体なにが残る?
そうなったら俺はただの戦闘狂だ。
俺がこれらを捨てなかったからミミ達とこうして一緒に過ごせている。
カトレアにも言われたが技の歴史は塗り替えることが可能だ。
誰かを守るために技を使う。
実にいい案だ。この世界は戦争というのが起きてない。
なら、技を放つ相手は必然的にモンスターと言うことになる。
それなら躊躇はいらないな。
明日からまたクエストを再開する。
あーそだ。ラートに謝っておかなきゃな。
案の定なりましたね。
心情変化って書きやすいはずなんですけどね。
おかしいなー。