24話 関係と幽霊屋敷
バジリで温泉を楽しんだ?俺達は次の目的地について話していた。
「火都の次はどこだ?」
「次は魔都と呼ばれる魔族が住んでいる地域ですね。」
「魔族って言っても友好関係は築かれてるから普通に貿易もするし旅行もするわね。」
「それでも、中には敵対的な者もいると聞きますけどね。」
「それって大丈夫なのか?シェリーは兎も角ララはギッシュから預かっている状態だ。下手に怪我とかされるとギッシュに何言われるか分かったもんじゃない。」
「ちょっと!私も心配しなさいよね。」
「あ、うん。シンパイダナー。」
「なんで、棒読み!」
シェリーが横で項垂れているが気にしない。
「まぁ、すぐに出発する訳じゃないからそれまでに決めればいいさ。みんなもまだ、温泉楽しみたいだろ?」
俺?俺はもういいです。しばらくは。
トラウマが甦る。
ということでバジリにはもう少し滞在することにした。
このことはアリスにも伝えておく。
朝
俺は、いつもより早く起きてしまった。
まだ日は昇ったばかりで薄暗い。
それでも、見えない程じゃない。
頭がボーッとする。みんなはまだ寝てるからその間に風呂に入ってしまおう。
俺は、風呂場に向かった。
途中、調理場にいたお婆さんにその旨を伝えると鍵をくれた。
いいのか客に鍵なんか渡して。
俺が風呂場の鍵穴に鍵を差し込んだが鍵は開いていた。
意味ねー。
まぁ、泊まってるのが俺達だけだからいいのかもしれないけど。
俺は服を脱いで浴室に入った。
髪を洗っていると、ふと気配がした。
この宿外見はめっちゃ古いがその分の風呂場はかなり広い。
風呂場は泊まる母屋とは別にあって母屋から少し行ったところにある。
人通りが多い道路から見えない。
泡を落として気配した方を見る。
「な、ナイト!どうしてここに!」
俺をナイトと呼ぶのはこの世界では2人した居ない。大食い娘のシェリー。
エレノール国を統治するメアだ。
メアはここにはいないからシェリーだろう。
「風呂入りに来た。」
「そ、そうじゃなくて。どうして私が入ってるのに来たのって話。」
「いや、札かかって無かったぞ。」
「え?札?」
この宿は浴室は1つしか無いため昼間は時間制で交代で男女が入れ替わる。
しかし、朝は自由なため風呂場のドアノブに「~入ってます」という札を掛ける必要がある。
それが掛かっていなかった。
「それでも、調理場にお婆さんがいたはずでしょ?」
「入るっていったら鍵くれた。」
「な!」
全く。俺とシェリーの関係を勘違いしてやがるな。
シェリーとララとシアは人でミミとカトレアは獣人だ。
ミミとカトレアとシアは俺のことをナイト様、ご主人様、ご主人と呼ぶ。
しかし、シェリーとララはナイト、ナイトさん呼びだ。
様付けや主人呼びは従者の証でもある。
逆に呼び捨てさん付けはそれ程親しい、同じ立場を意味する。
つまり、あの婆さんは俺とシェリーの関係を夫婦とでも思ったのだろう。
この世界では一夫多妻はOKらしいし従者がいるのは余程裕福な証拠。妻が2人いても不思議じゃない。
それより、この状況どうするか。
まだ明け方のお陰でお互いに姿は見えない。
ま、俺は[反響]スキルでシェリーがどこにいるか知っているがな。
勿論、体のラインまでクッキリとな。
「シェリーがまだ、入るなら俺はあがる。」
「ちょっと待って!話があるの。」
「あ、でも、恥ずかしいからこっち見ないでこっちに来て。」
なんだ?急に改まって。
ってか注文が難し過ぎる。
[反響]スキルがなかったら絶対無理だな。
言われたとおりに湯船に入って背中合わせにシェリーと並んだ。
しばらくの静寂。
それを破ったのはシェリーだった。
「ねぇ、ナイト。あんたは私のことどう思ってるの?」
「どした、急に。」
「いいから、答えて。」
いきなりだから難しいな。
俺は思ったことをそのまま伝えた。
「可愛いとは思ってるけど?」
「とはってなによ。.....でも、よかった。邪魔とは思ってないのね。」
「?当然だろ?邪魔ならとっくに見捨ててる。」
シェリーとは何度か2人でクエストをこなしていた、その中で何度か危ない目にシェリーはあっていた。
ある時はサーベルタイガーに襲われたり。
ある時はゴブリンの集団に犯されそうになってたりと
様々だ。
そりゃ最初は連携なんて考えなかったし連携するんでもお互いのペースに合わせるのにも苦労した。
そもそも、邪魔だったら連携の練習だってしない。
「そうだったわね。今思うと結構助けられてたのね。ありがとう。」
「ど、どういたしまして?」
「ねぇ、今私がナイトを襲ったらどうする?」
「言ってる意味が分からないんだか?」
いや、ホントはわかってる。
この状況で襲うっていったらアレしかない。
「じゃあ、依頼する。」
「ナイト。私を楽にしてやり方はナイトに任せる。」
俺は迷っていた。
俺は今婚約者がいる立場だ。それなのにこんなことしてもいいのだろうか。
その時あの時の思いが甦ってきた。
冒険者になった時の感想。
自重しない
それが俺のスタンスだった。
なら、依頼をこなすのも自重しない。色んな手を使って達成する。
それに、ここまで女の子にさせておいて「怖いから無理」というのは男が廃るというものだ。
理性が音を立てて崩壊していくのが分かった。
俺はシェリーに首筋にキスをした。
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「ご主人。今日はクエストしない?」
「あぁ、それもいいな。最近全然やって無かったもんな。」
「ホントよ。ココ最近戦ってないから体が訛りそう。」
?最近、ザフトの屋敷で戦ったろ?
......あ、それは、俺だけだったわ。
朝、完全に日が昇った時間。
俺達は朝食を食べながら今日の予定を話している。
勿論シェリーも一緒だ。
シェリーと目が合うと顔を少し赤らめて逸らされる。
ま、当たり前か。
あの後俺はシェリーでお楽しみだったからな。
本人は初めてで大変だっただろうけど。
「ご主人様。いかがなさいましたか?」
「別に。」
危ない。
俺は、これからの事に集中した。フリをした。
「といっても、ここらのモンスターは初見だろ?大丈夫か?」
「ナイト様がいれば大丈夫だと思います。」
「ご主人様がいればなんにも問題は無いです。」
「ご主人、最強説。」
シア、そりゃそうだろ。レベル100に《常識無効》だもんな。
心臓穿いても死なない可能性だってあるんだから。
そんなことはさておき俺達はクエストを受けにギルドに向かった。
受注したクエストは「幽霊屋敷の探索だ。」
全員が俺に任せると言ったのでこれにした。
このクエストの名前を聞いた瞬間シアとカトレア以外から笑顔が消えた。
うん。知ってた。だから、やった。
「ナイト様は鬼畜かなにかですか?」
「ナイト。あんた一生恨むからね。」
「私も怖いのはちょっと.....。」
「俺に任せたのが悪い。それに、これ結構報酬がいいんだよ。クエストを達成した者にはその屋敷をくれるって。」
「「「要らない。」です。」」
「ま、まぁ、まだ出るって決まった訳じゃないし気楽に行こ。」
「これだから、無神経は。」
聞こえてるぞ。誰が無神経だ。
.....否定出来ない。
ギルドから数十分して問題の屋敷に着いた。
「うわ、以下にも出ますって感じの屋敷だな。」
「帰りたい。ねぇ、私入らなくてもいい?」
「幽霊が出るのは屋敷の中だけだとは限らないぞ。別に外で待っててもいいが直ぐには助けに行けないぞ?」
「じゃあ、ついてく。」
ということで、お邪魔します。
なかは、かなりオシャレな空間が広がっていた。
「こんな、いい報酬なのになんで、みんなさん棄権するんでしょうか。」
「ホントに出るらしいからな。このクエストの達成条件は探索。な実際やらなくても屋敷は手に入る。が、しかし、豪邸だと思った屋敷が幽霊屋敷だったらどうする?」
「誰かに譲りますね。それか、もやすとか?」
中々に過激だな。
「幽霊屋敷を貰ってくれるとこなんてないだろ。だから、ずっと掲示板に貼ってあったんだろ。」
「でも、ホントに出るなら、どうするつもりですか?」
「そこで、ミミの出番だ。ミミの白魔法で成仏させる。」
「えぇぇ!私、初耳ですよ!」
だって、今決めたもん。当たり前じゃん。
「いや、だって白魔法使えるのミミしか居ないし。」
「ナイト様がなさればいいのではないですか。」
「俺白魔法苦手だし。」
「そんなー。」
今現在、魔法が使えるのは俺、ミミ、カトレアの3人だけだ。
ミミは白魔法特化でほぼ全ての魔法が使える。
俺も全魔法使えるが白魔法だけは上手く出来ない。
カトレアも全魔法使える。青魔法特化だ。
と、こんなふうに適材適所でやっていこうと思う。




