20話 肉と政治
「「遅い!」です。」
ゲートから出て一番最初に言われたのがこの言葉だった。
王城で毒盛り事件を暴いた俺はカトレアが設置したゲートでがんどの村にとんだ。
米村(そう名付けた)からガンドの村まで馬車で3時間ほど行ったとこにある。
俺が王城で事件を解決しているあいだにガンドに着いてしまって俺が帰るのを待っていたらしい。
「しょうがないだろ。メアからの緊急の呼び出しだったんだから。てか、俺と同調してるんだから状況はわかるだろ。」
「それは、そうだけど。」
「ご主人様。シェリー様はメア様と一緒にいることにある種の危機を感じております。それでお怒りになられてるのではないでしょうか。」
「ちょ!カトレア!なんで言っちゃうのよ!」
「申し訳ございません。口が滑りました。」
ある種の危機?なんだそれ。
俺がメアといてなんかあるのか?
全くわからない。
「それより、これからどうするの?」
「そーいや、決めて無かったな。」
「なら、お腹空いたからなにか食べよ!」
「ここらは、たしか畜産が盛んでお肉が美味しいと聞きました。」
ということで肉を食べに行くことになった。
「お待たせ致しました。グラン牛のリブロースでございます。」
運ばれて来たのはグラン牛と呼ばれる畜産の代表格。
程よい脂に歯ごたえもあると評判だ。
畜産の代表だけあり量産が可能なため値段も銀貨10枚とそこまで高いという訳ではない。
偶にの贅沢で食べに来る程度だろう。
「お客さん。冒険者の方ですか?」
「ん?あぁ、そうだが。」
俺達が食べているとウェイトレスのが女の子が話し掛けてきた。
「ということはバジリに行かれるんですね。」
「そのつもり。」
「余計なお世話かもしれないですけど今ハジリに行くのはオススメしませんよ。」
「なんで?」
「バジリはこの前丁度政権譲渡がしたんです。つまり、政治をするのが父親から息子に変わったんです。
それで、変わった息子がやたら目たらな政治をしているっていうのです。」
「ハジリの領主さまには二人の子供がいて。息子と娘がいるんですが今、好き勝手に政治をしている兄を止めるべく一緒に戦ってくれる冒険者を探しているんです。領主の娘──アリスとは幼馴染で私が酒場で働いてるもんだから探してくれと頼まれちゃいました。」
中々にめんどくさい状況になっているんだな。
「その兄貴は具体的にどいう政治をしてるだ?」
「まず、初夜権という法律を作ってその次に労働法を改定して指名された女の人は決まった時間に身体を捧げなきゃいけないって話です。あ、でも、指名されるのは獣人限定で人間はあまり指名されないらしいです。」
は?獣人限定?
「きゃ!」
ウェイトレスの子が尻餅をついた。
おっと。殺気を諸にだしてしまった。
失礼。
獣人というとミミとカトレア。
ミミは犬の獣人だしカトレアは猫の獣人だ。
しかも、聞いたところによると初夜権というのは指名された女の子は領主に処女を捧げなければいけないという巫山戯たものだった。
「はにほれ!ほんなのふるへない!」
訳「なにそれ!そんなの許せ無い!」
.....口になにか入った状態で喋るなよ。
「その共闘だけどまだ募集してるか?」
「は、はい。まだしてますが相手が領主とというだけあってハジリに居を構えている人は全く参加しませんしそうでなくても参加者はあなたがただけになるかもしれないです。」
それは、それで好都合。他の参加者がいると足でまといになるかもしれないしな。
それなら、慣れたパーティで慣れた連携をとった方が勝率は格段にあがる。
「別に構わない。その、アリスという子に伝えてくれ。」
「わかりました。伝えて置きますね。あ、アリスから返事があるまでこの村に滞在して貰えませんか?」
「大丈夫た。元よりそのつもり。」
この村にには数日滞在する予定だったから問題ない。
なんでも、シェリーが肉を沢山食べておきたいんだとか。
ま、確かに他だと肉はあってもここまで高品質とはいかない。
肉質も調理方法もそれぞれ違うからそれはそれで面白いんだがな。
あれから2日が経った。
「すいません。わたしです。」
宿屋の部屋をノックされて俺は扉を開けた。
そこにはウェイトレスの姿じゃなくて私服姿のあの子──いい加減名前で呼ぶか。
ナツがいた。
「アリスから連絡があって是非会いたいって。私の家に来てるので一緒にきて貰えませんか?」
「わかった。ちょっとまっててくれ。」
俺は準備をしてミミとナツの家に向かった。
俺1人て行こうとしたら浮気が心配だからと付いてきてしまった。
そんなに浮気症でもないと思うけどな。
ナツに連れて来られたのは俺達が泊まっている宿からそんなに離れていない場所にある一軒家だった。
「アリス。冒険者のひとを連れてきたよ。」
俺達と話す時とは違う口調。
ほんとに幼馴染なんだな。
部屋に入って最初に目に入ったのはシア程の身長のロリだった。
「こんにちはアリスさん。ナツさんからお話は伺っています。」
「ご丁寧にどうも。そちらの方は?」
アリスはミミの後ろに隠れるかたちとなって入った俺に意識を向けた。
「ナイトだ。冒険者だ。」
うん。この自己紹介便利。
一気に名前と立場を話せる。余計な事を言わなくていいからホントに便利。
「え!貴方がナイト様でしゅか!」
いきなりアリスが興奮した様子で立ち上がり前のめりになりながら聞いてきた。
「ナイト様。お知り合いですか?」
ミミの視線が痛い。
「いや、知らない。初対面のはずだ。」
いくら、ひとを覚えるのが苦手といってもこんなあからさまにロリ!といった感じの子を忘れる分けない。
「ナイト様はメアお姉ちゃんと婚約してますよね!あー!まさか、会えるとは思ってなかった!」
オケー取り敢えず落ち着かせよう。
アリスが落ち着くまで数十分かかった。
「先程は失礼しました。少々取り乱してしまいました。」
ん?少々?
大分取り乱してただろ。
とツッコミたかったが話が進まないのでそのツッコミは飲み込んだ。
「私の兄、ザフトは父から政治の権利を譲り受けると好き勝手に政治を始めました。私も父もやりすぎだと止めたのですか全く聞く耳を持ってはくれませんでした。それだけならまだしも兄は初夜権という、女性の尊厳を踏みにじるような法を作ってしまいました。だから、もう、実力行使しかないと思って今回募集しました。」
「それで、俺がかかったというわけか。」
「はい。でも、大丈夫なんですか?」
「なにが?」
「ナイト様はメアお姉ちゃんの婚約者です。いくら王族とはいえ他者の政治に口出しするのは不味いんではないでしょうか。」
「それなら問題ない。さっき聞いたら好きに暴れていいって言ってた。だから、暴れる。」
「メアお姉ちゃんも適当だね。」
ま、実際に被害は出ている訳だし被害者がいる以上それを理由に他者から攻撃を受けても仕方ない事だろう。
それに、今回は俺の怒りもそうだがそれより怒ってるのは女性陣だ。
まだ、好き勝手に政治をするのは許容範囲だったのかもしれないが初夜権は調子に乗りすぎた。
それ故に女性陣はどうやってザフトを懲らしめるか熟考していた。
もうダメだとなったら俺に任せると言っていた。
それまではお預けだそうだ。
ちくせう。
せっかく暴れられると思ったのに。




