18話 討伐と新メンバー
シアと盗賊討伐に来た。
盗賊の数はおよそ100。
アルムの村に来たのはその半分であとの半分は自軍の護衛をしていたんだろう。
『ご主人。どうする?このまま突っ込む?』
『いや、少し考える、このまま突っ込んで俺たちは大丈夫だろうけど人質が危ない。』
ここで依頼内容を確認しておこう。
依頼内容:人質の救出。
人質の数:30人以上。
敵数:100位。
土地:敵陣が盆地で[隠密]スキルなしではすぐに気付かれる。
武装:剣─30 盾─20 弓─20 魔─10 槍─20
こんなものか?
今言った振り分けの中で移出な反応があったから[神眼]スキルで見てみる
イリス
性別:女
レベル:52
スキル[剣聖]、[白特化]、[統率]、[指揮]、[自動防御]
能力『挑戦者』
備考、『挑戦者』により能力所有者より強い敵と対峙する時ステータスが大幅上昇。
ただし、筋力はそのままなため長時間戦闘は危険となる。
中々に不便な能力を持ってらっしゃる。
相手が格上の場合ステータスが大幅上昇はいいんだが、長時間戦闘が出来ないのはあまりにも矛盾している気がする。
[自動防御]で少し耐えられるようにしているだけだろう。
通常格上との戦闘は耐久レースだ。
どっちが先に疲れるか、肉体的にも精神的にも。
この場合肉体的な耐久ががた落ちとなる。
正直あまり使えない能力である。
『よし。こうしよう。俺が表で暴れる。その間にシアは人質を救出。人質は焦らせず迅速にだ。』
『それは、早くすればいいの?落ち着いてゆっくりやればいいの?』
『...騒がずゆっくり頼む。』
『わかった。』
その言葉と同時におれ達は動いた。
「西南。崖上より敵襲!」
一人の見張り役が叫んだ。
その声を聞いた盗賊達がぞろぞろとテントらしきものから出てくる。
「貴様!何者だ!」
「ただの冒険者さ。お前らがさっき襲った村の資源、人質を置いて行けば殺しはしない。」
俺とて別に皆殺しにしたい訳ではない。
話し合いですめばいいのだが、
「ほざけ!お前一人に何が出来る!数の前には虫けらでしかない貴様が!」
そんなこと出来るわけはなかった。
ここにカトレアが居なくて良かったな。
いたら今頃、アイツは首と胴体がサヨナラしていたと思う。
その証拠に村の方角からもの凄い殺気が発せられた。
まぁ、アレからずっと同調したままだし。
視覚、聴覚は共有出来るから勿論カトレア達にも盗賊の声は聞こえている。
「数で押せば勝てるとか考えてんの?本当馬鹿だな。数で勝てるのは常識が通じる奴だけだぞ?」
「うるせぇ。野郎共!やっちまえ!」
最初に襲ってきたのは約30人程。
そういえば、前の世界で戦争したときは、10万程の兵を相手したっけ。
俺は女王の最後の盾であり剣だった。
だから、俺が敗退すれば王国は負ける。
そういった、関係にあったから敵は俺を殺そうとした。
しかし、俺は向けられた兵をことごとく殲滅。
俺と戦って生きて帰った者はいない。
そんな奴にたった30人で勝てるか?
いや、俺と同じ位の力の奴が30人もかかってきたら流石にまずいが、今いるのは全員鉄剣か木弓。
かくいう俺は魔剣。
装備からして差はかなりある。
それに、大量の戦闘による経験とほとんどチートといって差し支えない程のスキル。
これで負ける方がどうかしてる。
俺は向かってきた盗賊に向かって赤魔法を放った。
『インフェルノ・グラウンド』
赤魔法の最高魔法であり、それ故に威力も桁違いで範囲も広い。
一介の盗賊がよけられるはずも無く全員消し炭になった。
後ろからの増援40人が足を止めた。
目の前で一瞬にして仲間が炭となったら止まるのは必然だろう。
俺は構わず青魔法を放った。
『インテグラル・サイル』
青魔法の最高魔法。青属性を含んだ斬撃が盗賊を襲う。
青魔法の斬撃は次々と盗賊の首を刎ねる。
これで70人。あと、30人。
もう勝負は付いたも同然なのだが。
「姫!中にいて下さい。アイツ化け物です。」
「構わない。私はその化け物と戦ってみたい。」
「しかし、.....!」
「私が負けるとでも?」
イリスは笑顔だった。
しかし、目は笑っていない。
「いえ!そんなことは全く。」
「なら、問題なかろう。」
「貴殿の名を聞いてもいいか!」
50m離れている俺に向かって叫んだ。
テントの中から出てきたのは金髪碧眼の美少女だった。
全身を白い鎧で身を包み手には白い剣と盾を持っている。
盾役に良さそうだ。
「ナイト。」
「その名覚えておこう。所で一つ賭けをしないか?」
「どんな?」
「簡単だ。これから私と貴殿で一騎打ちを行う。どちらかが降参するか死ぬまで行う。負けたら相手の言うことを一つだけ言うことを聞く。」
「中々に面白い提案だ。乗った。」
「交渉成立だな。」
俺は盆地になっている場所でも比較的平らな土地でイリスと対峙した。
「では、参る!」
一瞬でイリスは俺との間合いを詰めて迫る。
それを半歩下がって避けて追撃も後ろに飛んで回避。
それからは体を右へ左へと捌きイリスの剣を交わしていく。
「なぜ攻撃しない!私が女だからか!」
「あ、違う違う。お前の能力上の都合だよ。」
「なに。」
「お前は長時間戦闘が出来ない。なら、長時間戦闘に持ち込めばいい。簡単な事だ。」
「クッ!何故それを。それに、さっきの最高魔法の連発も貴殿の仕業か!」
「ん、あぁ。あんなのただの火遊びと水遊びじゃないか。」
実際、最高魔法を連発したのにも関わらず魔力はそれほど減っていない。
「そんな!非常識だ!」
「それが俺の能力≪常識無効≫だ。」
まぁ、ホントの能力は違うけど。
魔法も剣も通じない相手にどう勝つというのか。
この時点で勝敗はついていた。
「はァァァァァ!」
それでもイリスは突っ込んでくる。
俺はイリスの剣を弾いて剣の切先をイリスの首元に突きつける。
「勝負ありだな。」
「そうか。負けたか。仕方あるまい。望みをきこう。何でもいいぞ。ただ、私は生娘なのでなそういうことには疎い。そのへんは考慮してくれ。」
「意外とあっさりしてんだな。これからひどい目にあうかもしれないのに。」
「勝負を持ち掛けたのは私だ。それに私は腐っても剣士だ。決闘に敗れた時くらいの覚悟は決めている。」
「そうかい。」
それにしても生娘か。
まぁ、そういうことをする奴には重要だな。
俺には関係ないけど。
「俺の望みは一つ。俺の仲間になれ。」
「え?は?そんなことでいいのか?」
「丁度盾役が欲しかったんだよ。」
今俺のパーティには盾役がいない。
今の前衛は俺とカトレアとシアで後衛がミミとシェリーだ。
前衛3人は問題ないとして後衛の2人は一応接近された時の対処方を教えているとはいえ、そういう危険はない方がいい。
だから、今回盾役であるイリスを仲間にして中衛をしてもらおうという魂胆だ。
中衛は前衛にも後衛にもなる万能な役回りだ。
「そうか。貴殿が良いならいいんだ。わかった。」
「では、奴隷術を使用する。」
奴隷術は主人側の血を配下側の背中に垂らすだけでいい。
という簡単なものだ。
普通は[奴隷術]を通して行われる。
理由は奴隷術を使用したときの奴隷紋を隠すためだ。
隠せば普通の人間と変わりない。
重役達がスパイを送るときに使うことが多いらしい。
しかし、隠す理由もないし俺の場合隠さない方が「俺のものだ。」という証拠になるから別に隠さない。
俺が血を垂らす。
すると、イリスの背中に龍に翼が生えた紋が刻まれる。
龍の紋
俺が龍と関係しているから龍の紋で通常はその人に所縁のある紋になる。
奴隷術が終わってイリスはなぜか嬉しそうだった。
ほかの盗賊たちは頭がやられたことにより降参。
アルベスタの憲兵所に出頭すると言ってアルベスタに向っていった。
「ご主人もう済んだ?」
「あぁ、シアもお疲れ様。それにしても早かったな。」
シアが人質を解放したのは俺と別れて僅か10分。
10分の間に30人以上の人質を解放した。
まぁ、それがわかっていたから最高魔法を連発できたんだけどな。
じゃなかったらあんな風に連発なんてできるわけない。
『インフェルノ・グラウンド』は発射あとまっすぐに飛んでいくだけだが、『インテグラル・サイル』
は正直どこに飛んでいくかコントロールが難しい。
多少のコントロールは出来るもののそれでも一発で敵に命中させるのは難しい。
今回はほぼシアのお手柄だな。
そんなことを考えながら俺たち3人は村に戻った。