100話 裏切りの暗殺者
祝100話!
本当にありがとうございました!
次回、本当の最終回となります。
「ミミ!全員に勝利の言葉を伝えろ!」
段々動かなくなってきている口を動かしミミに伝える。
「もう、してありますよ。」
ミミの声は泣いていた。
「なんで泣いてんだよ。」
「ナイト様が悪いです!何もなしにそんな能力使って!残される人の気持ちを考えたことありますか!」
「私は少なからずナイト様のお側で仕えて来ました。それなのにまだ分かりません。」
「ナイト様はどうして自身を犠牲にするような能力、スキル、技術を使うのでしょう?」
「そうでもしないと守れないからだ。」
実際、最強と言われても最初は最弱に近い存在だった。
強くなったのだって、ルージュがきっかけ。
最強というのは実際そんなもん。
誰かを守らなきゃという使命からなるもの。
けど、守る対象が守る対象ではなくなったら例え最強でも用無しとなる。
今回がいい例だ。
最高神ゼウスの脅威はなくなりミミ達はこれから安寧の生活を送ることが出来る。
たしかに、多少の争いはあるだろうが、最強が出る幕ではない。
物語の勇者だってそうだ。
魔王を倒したら用無しとなりどこかに消える。
もう、この世界に最強というものはいらない。
だから、俺は消える。
「そんな...無責任です!私達がどんなに強くなったってナイト様は私達を守っていかなきゃいけないんです!それなのに.....」
怒りからか悲しみからかミミは肩を震わせた。
「大丈夫。俺は元々消える存在だったんだよ。」
「?どういうことでしょう。?」
「俺は異世界の住人。この世界に来ちゃいけない人物なんだよ。そういう意味では俺が消えてこの世界はまた秩序を取り戻す。なにも悪いことなんてないじゃないか。」
「悪いことしかありません!世界の秩序とか来ちゃいけない人物とかそんなことはどうでもいいんです!私はナイト様とまた一緒に冒険して生活出来ればいいんです!」
「ごめんな。」
今の俺には謝ることしか出来ない。
体は寝返りをうつ程度しか出来ず愛剣を持つことすら出来ない始末、ホントに締まらない最後だ。
「ハハハハ!無様だな。神様。」
ミミとの会話に割って入ったのは今までその存在を忘れていた人物だった。
「ザラキ。」
「最高神との戦い。実に見事だった。しかし、誤算だったのはそこの犬獣人が神だったことに驚きだ。」
「この子は我が貰おう。じきに貴様も消える。なら、問題はなかろう。」
俺はうつ伏せになって構えた。
「ミミに触んじゃねぇ!」
今あるだけのパワーを使った威嚇。
地面に置いてあるが剣も一応持ってる風にしてる。
実際は、地面に置かれている剣に手を置いてるだけ。
「まだそんな力が残っていたのか。しかし、瀕死の貴様に負けるほど我をナメるな。」
さて、どうやってくる?
出来れば早く来て欲しいもんだ。
体が持たない。
「死ね。」
ザラキが剣を振り下ろすのと同時かそれより少し速いくらい。
風切り音が耳元を通った。
ザクッ!ブシュッ!
音だけ聞けば心地いいのにそれを見てしまったら幻滅する人の方が多いだろう。
俺を殺そうとしたザラキの首元には暗殺者がよく使う暗器(小刀など小回りのきく武器)が刺さっていた。
そして、それを刺したであろう人物がその暗器を引き抜いた。
あの威嚇は仲間の殺気を隠すための小芝居。おかげで見事に首を狙ってくれた。
「遅せぇよ。危なく殺されるとこだった。」
「ずっと探してたの。仕方ないでしょ。」
小さな体に黒いマントを翻す少女。
「サーヤ!なぜ.....裏切った!」
「あれ?私言わなかったけ?」
「(楽しみを奪うようで)ナイトには悪いけど裏切らせてもらう。って。」
「それに、ナイトがいる屋敷内で通信なんかしたらすぐにバレちゃうよ。まぁ、私はザラキに執着してたわけじゃないし体のいい駒として使われるのは嫌なんだ。」
「なぜだ!なぜいつも邪魔がはいる!一生恨んでやる。呪い殺してやる!」
その言葉を最後にザラキは消えていった。
俺もそろそろ限界だ。
「ナイト。死ぬの?」
「あぁ、共闘感謝する。」
「うん。バイバイ。」
ミミは最後まで泣いたままだったしサーヤは素っ気ないし他の奴らとも喋っておきたかった。
この戦場での思い出として。
瞼が重い。その代わりに体が軽い。
俺の意識は深い闇に落ちていった。
次回、ホントの最終回。
この『最強は異世界でも最強ですか?』
というテンプレ盛りだくさんのこの小説を今まで読んでくださった皆様に感謝を。
む、無理やり100話にしたかったわけではな、ないです。




