99話 犠牲
「はぁ!」
「くっ!」
交戦から数時間経った今でも俺とゼウスの戦いは続いていた。
それもこれも、ゼウスの盾が硬いのが悪いと思う。
ミミの能力により、ステータスに大幅な上昇効果が付いているのは分かるがそれでも貫通させることが出来ていない。
熾天使となった俺には疲れはない。
一気に詰めて《神殺し》を放つ。
通常、神殺しは20連撃だが力余った俺は20連以上の連撃を与えている。
激しく散る火花。
斬り下ろし、斬り上げ、斬り払う。
ただこれを繰り返すだけだがそれでも貫通しない。
だがしかし、『無秩序』ではなくなった俺の攻撃は確実にゼウスへと蓄積されている。
『無秩序』は秩序を乱す者の攻撃を軽減させるものだ。
だから、今の俺には適応されない。
残像が出るほどの勢いで斬りかかっていく。
キンキンキンキンキンキンキン!
金属同士が連続でぶつかる音が辺りに響く。
神殺しじゃあ歯が立たない。
なら、最高技。
創造技二刀流《唯我独尊》
50連以上の連撃がゼウスに迫る。
ミミが神性を持ってから防御に徹してる。
それくらいに俺の攻撃はまるで嵐のように荒ぶっている。
『雷鳴よ!』
時短詠唱で放たれる黄魔法。
『無駄だ。』
[間接技無効]スキル。
俺は下がりながら銃を発泡。
オシリスに張ってある防御壁を貫通した。
徹甲弾様々だな。
その後も連続発砲。
動き回っているせいでエイムはガバガバだがそれでも足に命中させることは出来た。
弾丸の痛さは尋常じゃない。
その痛さを押し殺して詠唱するには相当な精神力が必要となる。
回復の魔法すらまともに詠唱出来ないオシリス。
ゼウスが回復することはもうないだろう。
「前のルシファーはそんなの持ってはいなかった。」
「次世代のルシファーは前世代のルシファーより強いんだよ。」
ミミの英雄作成は過去の英雄。
または、この場にいる英雄と呼ばれる人達の力をそのまま与える能力。
仲裁者の地位じゃなきゃ使えない能力。
記述にもあった神は恐らく『奇跡の女神』で間違いない。
だから、こういうこともできる。
『財なるものは我が手に。』
流石にまったく一緒って言うことは出来ないが真似程度なら余裕だ。
ギルガメッシュの能力。
空中に浮かぶ数千を超える魔法陣。
ギルガメッシュはそのまま広範囲を殲滅するが俺は少しアレンジを加えようと思う。
『集合』
数千の魔法陣が一つに集まる。
相手は1人、広範囲を攻撃する意味が無い。
なら、一点集中で攻撃した方が命中率は下がるが1度当たれば逃れることは出来ないほどの拘束力を生む。
「いけ!」
ゼウスに向かって数千の矢が連射される。
『鋼鉄なる守りよ!』
ゼウスは盾を強化し耐えようとする。
がしかし、数千を超える攻撃を受け止めきれる程頑丈ではなかったようだ。
強化して数分は耐えていたがすぐに崩れた。
「流石異端者なんでもありだな。」
「俺でもこんなことが出来るなんて驚きだ。」
「そもそも、ルシファーの後ろにいる獣人が神だったこと自体さっき知った。」
「それは、俺もそうだ。」
「『奇跡の女神』オレとルシファーの戦いを止めた神。」
「オレ自身、神の仲裁が入ったことは覚えているがどんな神だったかは覚えていない。」
「その神がミミだったと。」
「そういうことになる。」
「『奇跡の女神』熾天使でありながら権能はひとつしか持たずただ1度『奇跡』を起こすだけの権能。」
「その奇跡がどう転ぶか俺的には楽しみだ。」
「オレからすれば脅威でしかない。なら、瞬殺するまで。」
『神々の頂点に立は我なり。創世の神にして原初の神なり。その力、今解放せん!』
ゼウスは武器を捨てて白い球体を出した。
「オレの全力の力だ。受ける覚悟はあるか。熾天使ルシファー。」
ゼウスの全力。例え防御しても死ぬ可能性のある能力。
アレを使うしかないのか…。
俺の最後の能力。
犠牲。
ゼウスと要領は一緒だが俺の場合、完全に自己犠牲な能力。
俺の持ちうる全てのことを用いて使う。
使かうものによっては消えてなくなってしまう。
これで、空の魔法陣も消せればいいんだが。
「少し、考える時間をくれないか。」
「よかろう。生半可な戦いではない。なら、全力には全力をぶつけるべきだ。だから、考えろ。」
俺はミミの元に向かった。
「?ナイト様?どうされましたか?」
「いや、これからちょっと強力な魔法打つから離れててくれ。」
「.....ホントにただの強力な魔法ですか?」
「...あぁそうだ。だから、離れててくれ。」
「わかりました。絶対に勝って戻ってきてください。」
「ああ。」
ミミは察しが良くて困る。
「準備が出来た。」
「なら、行くぞ。」
『我が名は、熾天使ルシファー。我は万理のすべてを知り原初となる神なり。』
≪犠牲≫は詠唱が長いから使いにくい能力だがこうして相手との一騎打ちなら使うことが出来る。
つまりは....ということだ。
『我が身はこの世にあってはならずこと偽りの存在なり、そしてこの世界を救うため我が魂を糧としこの争いを終わらせる!』
俺の手にも白い球体が現れる。
ゼウスと大きさは同じくらい。
大の大人がすっぽり隠れてしまうほどの大きさ。
「うあああぁぁぁぁ!」
「はぁああああああ!」
お互いの白い球体がぶつかる。
一瞬の静寂の後、爆発。
莫大な質量をともなう衝撃はこの戦いを終わらせるには十分な威力だった。
俺達の爆発は空の魔法陣をも破壊する威力だった。
こうして、最高神ゼウスと熾天使ルシファーの戦いの幕は下がった。
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ナイト様はなにを考えているのでしょう。
ナイト様の言葉、「少し強力な魔法を打つから離れててくれ。」
嘘だ。
神性持った私なら記憶にある。
最高神ゼウスが放とうとしている攻撃は、『叡智の結晶』という能力によるもの。
この攻撃は、いくらナイト様の魔法だろうと相殺すら出来ない攻撃。
ナイト様は別の方法で迎撃しようとしている。
ナイト様の顔が脳裏に浮かぶ。
私が「ただの魔法ですか?」と聞き返した時の数秒の間。
私は最悪の自体を想像してしまった。
神眼で視る。
ナイト様の能力。『犠牲』
詳細はナイト様が隠しているのか視えない。
けど、この言葉からして自身の何かを犠牲にして放つ能力だと簡単に推測することが出来る。
相手の攻撃は生半可な攻撃では相殺出来ない。
ナイト様の全てを犠牲にして、迎撃出来るかどうか.....!まずい。ナイト様は自分諸共道ずれにする気なんだ。
止めようとした時、この戦いに終わりを告げる詠唱が聞こえた。
『我が名は、熾天使ルシファー。我は万理のすべてを知り原初となる神なり。』
『我が身はこの世にあってはならずこと偽りの存在なり、そして世界を救うため、我が魂を糧としこの争いを終わらせる!』
私はその詠唱を聞いて愕然とした。
詠唱を終えてしまえばそれを消すことが出来るのはナイト様のスキル、[間接技無効]しかない。
けど、私は持っていないスキル。
止められない。
目の前で大好きな人が散っていくのをただ見つめることしかできない。
.....いや、まだ希望はあった。
私の権能。『奇跡』。
確率はものすごく低い。1/10000くらいの確率。
けど、小さい大きいに関わらず『奇跡』を起こせる。
これにかけるしかない。
私が再び目をあけるとちょうど2人の能力がぶつかり爆発するところだった。
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最高神ゼウスの能力は物凄い質量を持ったものだった。
「ゴフッ!ダメだ体が動かない。」
そりゃそうか。魂を糧としてそれを外に出したんだ。
今の俺には魂がない。
こうして、喋ったり考えたり出来るのも膨大な魔力消費によるタイムラグ。
俺もあと数十分も持たない。
「熾天使ルシファー。その力、見事だ。」
「そりゃどうも。んじゃ殺してくれ。俺はもう動けない。」
「馬鹿言え。オレだって動けるわけなかろう。こうして喋れたりするのも時間の問題よ。」
「消える前の最後に一つだけ言いたいことがある。」
「?」
「やはり、ルシファーは最強の神だ。」
そう言って最高神ゼウスは光の粒子となって消えていった。
それに釣られるかのように俺の銃弾をうけ瀕死だったオシリスも消えた。
次回で本編は100話を迎えます。
ここまで読んでくださった皆様。
本当に感謝致しております。
今はそんなに多くは語りません。
では、また次回で。




