番外編、シェリーとのクエスト
これは、2部に渡って書きます。
1部では収まりませんでした!
「ナイト。ちょっとほしい素材があるんだけどクエストに付き合ってくれない?」
これはあの事件の始まりの合図だったのかもしれない。
シェリーにクエストに誘われ一緒に行くことにした。
どうせ暇だし。
「なんの素材が欲しんだ?」
「アイスドラゴンの牙と鱗と髭ね。」
「そんなもん、なにに使うんだよ。」
アイスドラゴンは名前の通り氷雪地帯に住むドラゴンだがドラゴンとは名ばかりで実際は臆病でほとんど住処から出てこない。それに柔い。
その為、見つけにくし氷雪地帯なため長時間の探索ができないということ。
「矢じりと小手と弦にね。欲しくて。」
「そんなに強度なかったと思うが?」
「強度は無くていいのよ。小手がガチガチだったら扱いにくいでしょ。」
あんまり弓矢を使わないから分からないがそういうもんなんだろう。
氷雪地帯にゲートは置いてないから正規に手段でいくことになった。
それにしても...
「なんでそんなに大荷物なんだ?」
シェリーの見た目からは家から家出してきたみたいだった。
「なんでって、寒いところに行くんだから防寒着に予備の弓矢、食料医療箱他にもいろいろあるよ?」
「クエストにそんな大荷物を持っていくのはシェリーくらいなもんだろうな。」
「!私はナイトみたいになんでも出来るわけじゃないのこれくらい仕方ないのよ。」
「あーはいはい。そうですね。」
「きいてないでしょ!」
行きはこんな感じでわいわいとしていた。
『まもなく、ブリドラ、ブリドラです。』
到着のアナウンスが響き俺達は氷雪地帯、『ブリドラ』に着いた。
「さむっ!なにこれ寒すぎる!」
「そんだけはしゃげれば問題ない。」
「あんただけずるい!」
なにを言うか、これも俺の実力だ。
「んなことはどうでもいいから早くクエスト達成して帰るぞ。」
「うん、そうしよ。」
俺は海のときに使った『クール』の派生、『ホット』を使っているため全然寒くない。
原理は『クール』と同じ。
対象が一人だからシェリーは自分でやってもらうしかない。
いや、いざとなったらシェリーの方にやるけど。
クエスト内容はそのまま、『アイスドラゴンの討伐。』
シンプルな内容だが見る人が見れば過酷な内容だ。
なぜかというと、アイスドラゴンが住む山脈は標高3000m級で、アイスドラゴンはその山々に住処を作って過ごしている。
こんな山脈地帯から小さな洞穴を見つけろとかどんな苦行だよ。
頂上付近は常に吹雪いて視界が悪いしかといって中腹にいればほかのモンスターに遭遇する。
非常に無茶ぶりをしたクエストなんだ。
勿論、シェリーは俺からの忠告を受けているため知っている。
なのに、このクエストを選んだ。
シェリーってドMなのかもしれないな。
「なにか失礼なこと考えてない?」
「いや、なにも。洞穴があった取り敢えずそこに入ろう。」
「わかった。」
洞穴にはいって赤魔法で火をつける。
「氷雪地帯ってこんなに寒いんだ。凍るかと思った。」
「凍ったら無限収納にいれて連れてくから安心しろ。」
「扱い雑!私も乙女よ?」
「乙女なら脚を閉じたらどうだ?」
シェリーはハッとして脚を閉じる。
しばらくの沈黙。
「シェリーに黒は早いと思うぞ。」
「ナイトの馬鹿ぁ!」
「ちょ痛いって!」
シェリーにポカポカと殴られた。
男の前で脚を開くのが悪い。
「!」
「どうしたの?」
今までポカポカしてたシェリーが手を止めて聞いてきた。
「モンスターも気配。」
「え?ここモンスターの巣だったの?」
「いや、俺達の熱をたどってきたんだろ。」
兎に角ここじゃ逃げ道がない。
「シェリーはここで大人しく待っててくれ。」
「私も手伝うわよ。」
「ガチガチの手でか?」
「うっ。...わかったわよ。ここで待ってる。絶対に帰ってきなさいよ!」
そんなに一人が怖いかね。
俺は洞穴の入り口に向かった。
俺が感じ取った気配は、ラングトラというモンスターだった。
多頭でその一つ一つの頭には単眼があり奇襲が難しくすべての頭を同時に攻撃できるくらいのスピードとパワーがないと食われる。
「なんだ、ラングトラか。」
俺はなんども戦ったことがあるから倒し方も知ってる。
俺はその辺に落ちている氷の結晶をラングトラの目の前に投げた。
そこに白魔法の部類の『フラッシュ』を氷の結晶に向けてはなった。
すると、氷の結晶は光を反射して爆発的な光量を生む。
多頭で複眼。
普通にやりあればめんどくさい事極まりないがこうして隙を作ってしまえば駆け出しの冒険者でも倒すことは出来る。
「せい」
俺はラングトラの核と呼ばれる心臓部を貫いて倒した。
「ちょっとナイト~。なに今の光~。」
「俺が使った爆発。」
「なんだ、警戒して損した。」
いや、今のは警戒というより完全に怖がってただろ。
「ん?なに、ナイト。」
「いや、何でもない。」
目で言うなと言ってきたから言わないでおいた。
命大事にだ。
「何こいつ変なの」
「ラングトラ。普段は渓谷とか地面の割れ目なんかに住んでるモンスターだ。」
「強いの?」
「シェリーが戦うとなればそこそこには。」
シェリーは白魔法の適正がないから『フラッシュ』は使えないから。
「さて、十分に休んだだろ。そろそろ行くぞ。」
「はーい。」
洞穴を出て数十分、
「吹雪いてきたな。また、どこかでやり過ごした方がよさそうだな」
「さっきの所戻る?」
「いや、この先に丁度いい洞穴を見つけた。そこで休もう。」
山の天候は変わりやすいからこうして休める場所を常に確認する必要がある。
「大丈夫か?」
「寒くて死にそう。」
まったく、
「あ、少し暖かくなった。」
「俺の魔法を少しシェリーのとこにやったんだ。」
その分俺のとこのやつが減って寒いけど。
バサッ。
急にかけられた厚手の大きな毛布。
「じゃ、私からはこれ。これで暖かいでしょ?」
「あぁ、サンキュ。」
にしても恥ずかしいな。いくら大きくても2人が入るには少し狭い。
まだ『ホット』の魔法が重複されるから問題ないが...。
「お腹減った。なにか食べよ。」
シェリーは荷物の中から色な携帯食を出した。
主に干し肉だったり干した果物だったりだが。
「ナイトも食べる?」
「いや、俺はいいや。食べたばかりだとすぐに動けないからな。」
「あ、そう。」
そう言ってシェリーは食べ始めた。
「よく食うな。」
「お腹減るし仕方ないね。」
「腹痛くなりそう。」
「ナイトはモヤシだし草食男子だから、仕方ないね。」
ピク
「ほう。俺が草食だと。」
モヤシなのは認めよう。
ゼクスみたいにムキムキじゃないし細マッチョってわけじゃないからまぁ言われてもしょうがないかなと思う。
けど...
「いや、あの、あれは言葉の綾というやつで...,」
「俺が草食男子じゃないってことを教えてやるよ。」
「いや待って近づかないでごめんなさい!」
俺がシェリーに手を伸ばそうとした時、またラングトラの気配がした。
「モンスターの気配だ。モンスターに感謝しとくんだな。」
「乙女の純潔が...」
「シェリー初めてじゃないだろ。」
「そういう問題じゃない!」
はいはい。そうですね。
俺は気配した方に[隠密]スキルで様子をみる。
気配の正体は、ウルだった。
氷雪地帯でも動けるようにしてある鋭い鉤爪。
寒さ知らずの剛毛。
食べれば上手いと聞くが見た目そんな風には見えない。
犬に剛毛が生えたような見た目のウルはとにかく素早い。
氷雪地帯でのスピードならモンスター界1番だろ。
しかも、運悪くここはそのウルの寝床だったらしい。
(シェリー連れて逃げるか。)
戦ってもいいんだがここは俺たちが引いた方がお互いのためにいい。
この慣れない氷雪地帯でいつ何がわかるか分からないから体力は出来るだけ温存しておきたい。
「シェリー。ウルがこっちにきてる。急いで逃げるぞ。」
「分かったわ。」
シェリーが荷物を片付けていると後から雄叫びが聞こえた。
俺たちが来た方向には既にウルが来ていた。
「逃げるぞ!」
俺はシェリーを横抱きに抱えて走った。
さっきも言ったがウルは氷雪地帯じゃ1番速い。
シェリーを生身で抱えてるからそんなにスピードが出せない。
そのうちウルに追いつかれた。
俺は後ろを向いて剣でウルの一撃を受け止めた。
ウルの体躯はゆうに3mは超える巨体でその一撃は重い。
なんとか受け止められたものの断崖絶壁まで押されてしまった。
下は底が見えない程の深さで落ちたらまず無傷ではいられない。
これ以上下がれないため俺はウルと戦うことにした。
シェリーを下ろして剣を抜刀。
ウルが持ち前のスピードで突っ込んでくる。
それを俺は剣をクロスさせ受け止める。
滑る床での戦いは相手に分がある。
青魔法を出してそれを凍らせて足止めをつくる。
それでようやく止まれる。
それより後にはシェリーがいる。
『グオオオォォ!』
寝床を取られたと思ったウルは相当にご立腹だ。
と、その時、ウルの後から強風が吹いた。
足止めがあったから俺はなんとか踏ん張れたがなにもないシェリーは風に煽られ谷底に姿を消した。
「きゃあああああああ!」
「シェリー!」
俺はウルを後にぶっ飛ばしシェリーの後を追って谷底へとダイブした。




