待ち合わせ
前の方の話を色々変更しています。
変更点については、活動報告に記載します。
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地の文の一部の「私」を「零」もしくは「レイ」に変更しました
詳しくは活動報告へ
目を開けると、見たことのない天井が見えた。
すこしぼーっとした頭を振り、ベッドから起き上がる。視界の隅に、レイと書かれたネームバーが表示されている。
大きめの部屋にベッドがぽつんと置かれており、殺風景だ。
莉子の説明によると、この宿は、見た目は小さな宿なのだが、受け付けで鍵を受け取り、部屋に入ると個人のマップ、インスタンスマップになるらしい。
とりあえず、美代と莉子から教えてもらった、VRギアのIDを入力する。
『このギアの所有者とチャットを結びますか?』
「イエス」
目の前にウィンドウが2つ開き、2人のチャットが流れて来る。
『あ、零きたよ』
「今ログインしたよ」
『じゃあ、私の部屋に《招待》するから、扉が光ったら、入って来て』
唐突に扉が発光し、光が収まると、扉の色が金色に変わっていた。
扉を開けると、部屋の中には美代と莉子がいた。
美代は、長い黒髪を金に染め、瞳を真紅に変えていた。ベッドに座る、その姿が、仕草ひとつが上品で、まるでお姫様のようだ。
莉子は、活動的なその性格を表すように、短髪と瞳を薄水色に染めていた。部屋の中でぴょんぴょん飛び跳ねて、嬉しくて仕方ないという様子だ。
「零は、髪染めなかったんだね」
「髪の色に、白が無かったから、レアかな〜って思って」
「でも、その髪に緑の瞳…とっても似合うわよ!」
「うんうん、似合ってる!」
2人から褒められて、少し恥ずかしい。
「そういえば、2人って名前、何にしたの?」
「私は美代をひっくり返して、ヨミよ」
「私はβテストの時のまま、コリンだよ」
「私はそのままで、レイだよ」
2人の名前を聞いた時、視界の隅に表示されていた、空白だったネームバーに2人の名前が表示された。
「2人に質問」
「なに〜?」
「スキル本当にあれにしたの?」
レイが聞くと、2人は笑って、サムズアップをした。
「この3人だと、とんでもないパーティーになるね……」
「面白いじゃん!というか、聞くってことは、レイもそうしたんでしょ?」
「うん」
「なら、今更だね」
たしかにそうだ。大変な部分は、3人で補い合えばいい。
「よし、じゃあパーティーを組んで狩りに行こう!早くしないと狩場無くなっちゃうよ!」
「そうね、行きましょう」
「あ、ごめん。ちょっと待って」
2人が訝しむような目に見て来る。
「まだ、チュートリアル受けてない」
「ああ、レイはまだだったわね」
「じゃギルドの前で待ってるから、ちゃっちゃと終わらせて来てね」
「はーい」
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ギルドから出て来た零を見て、ヨミ達がやって来る。
「終わった?」
「うん……」
「じゃあ——」
「ごめん。2人に言い忘れてたことがあった…」
「なーに?」
「チュートリアルって武器スキルの数だけあるんだ……」
「「?」」
レイは今、剣士のチュートリアルを受けて来た。
つまり———
「———私、後チュートリアルを7回受けなきゃいけないみたい……」
2人は、それはもう、盛大にずっこけた。
「分かったわ…宿屋で待っているわね……」
「ごめんなさい……」
「いいのよ…レイのためだから……」
「頑張って来てね……」
2人は、打ち付けたところをさすりながら、宿屋へと戻って行った。
どこかその背中には哀愁と諦めが漂っていた。