第1章-6
【7月2日 月曜日 相原孝行】
2限目はいつものようにHR。
まず担任から連絡。センター試験の申し込みを20日に受け付ける。受け付けは1日だけなので、受験する人は忘れないように。
保健委員は12時半に第1会議室に集合。
委員会からの連絡は今日はなし。
いつもならここで終わりなのだが、今日は違った。
文化祭代表生徒の高木が、何やら動き出した。
「えっと、文化祭で何やるかのアンケートを取りたいと思います」
そう言うと高木は、何やらメモ用紙のようなものを配り始めた。
相原孝行、出席番号は万年1番。座席はもちろん左端先頭。用紙を1枚取って、後ろの井上に渡す。
視線を前に戻すと、高木が黒板に何か書いていた。
1 フランクフルト
2 たこ焼き
3 クレープ
4 焼きそば
「えっと、福井くんのグループ以外全員食べ物系なので、食べ物系で行きたいと思います。この中からやりたいもの1つ選んでください」
3年D組の辞書に、団結の文字はない。
ホームルームは担任の連絡と委員会からの連絡で終わり。あとは各自適当に喋ったり寝たり。勉強する人もいる。
そんなD組で、文化祭の話し合いをするのは今日が初めて。
そのはずなのに、既に選択肢が4つに絞られている。これはどういうことだろう。
俺の記憶では、みんなでメールアドレスや電話番号やLINEのアカウントを交換した覚えはない。
また、時間割がバラバラなので、HR以外で生徒が集まる時間も場所もない。
高木が勝手に決めたという説も考えたが、それもすぐに否定できた。
さっき高木は、「福井くんのグループ以外全員食べ物系」と言った。福井のグループが誰なのかは分からないが、「全員」ということは、3年D組の全生徒に、聞き込みか何かで希望を聞いたということだ。
聞き込みをした、3年D組の全生徒。
少なくとも俺は、希望を聞かれた覚えはない。