夢と天使と赤い風船
ぼやけた視界の中に、彼はいた。
私の前に、しゃがみこんで。
そうやって、私と目の高さを同じにして、泣いている私を見守ってくれていた。
――ほら、涙を拭いて。これをあげるから……。
優しい声。
私の小さな手に彼が握らせてくれたのは、赤い風船の糸だった。
なんだかホッとして、自然と笑みがこぼれた。
☆ ☆ ☆
目を開けると、見慣れた天井があった。
ああ……。またあの夢か……。
こんな風に目覚めるのは初めてではなかったので、私はすぐに自分の今の状況を理解した。
あれは、何年か前まではよく見ていた夢だった。最近はあまり見なくなっていたけれど、あの夢を見た朝は、なんとなく安心することができた。
夢の男の人に励まされているような気がしたから、かもしれない。
そういえば、私がこの夢を見るのは、何かつらいことがあったときや不安を抱えているときばかりだったような気がする。
今回は、そういうわけではないけれど……。
私は掛け布団を引っ張り、はみ出ていた肩をその下に隠した。
それにしても、いい朝だ。何より、何時まででも寝ていられるところがいい。今日は学校もないし、遅くまで寝ていても起こしにくる人はいないから。
でも……。
ふと気になることがあって、私は一度閉じかけた目をまた開いた。
あの男の人は、誰なのだろう……?
私はあの、夢の人を知らない。けれど、単なる想像上の人物にしてはイメージが鮮明すぎるような気もする。
あれは、実在の人物なのだろうか。夢の中の「私」はおそらくまだとても小さいから、彼が実在の人物だとすると、随分昔に会ったことのある人なのだろうけれど……。
それに、どうして「風船」なのだろう? ぬいぐるみとか、食べ物とか、泣き止ませるためなら他にも色々ありそうなものなのに。
夢に理屈を求めるのは間違っているかもしれない。だが、一度考え始めたら気になって、目が冴えてきてしまった。
「もう起きちゃおうかな……」
呟いて、私は何気なく窓の外に目を向けた。
空は見渡す限り青く晴れ、窓から差し込む光が部屋に陽溜まりを作っている。猫の額ほどの庭に植えた梅の蕾が膨らみ始めていて、春の訪れが近いことを感じさせた。
あの梅は、私達がここに引っ越してきた時、隣に住んでいたご老人から頂いたものだ。立派な梅だったので庭に洗濯物を干す余裕すらほとんど無くなってしまったが、父も私も気に入っている。
そのご老人も先月病気で亡くなり、隣は空き家になってしまっていた。もしかすると、彼は自分の死期を悟っていたのかもしれない。だからあの梅を私たちに託したのか……。
彼は私達父子のことを、随分気にかけてくれていた。笑顔を絶やさぬ穏やかで優しい人だったのに……。
誰かがいなくなるのは、いつも、寂しい。
私は、もっとよく梅を見ようと、布団から出て、窓を開けた。爽やかな風が入り込んでくる。
今日もいい一日になりそうだ。
時間があるから少し勉強でもしようかと机に向かったはずなのに、気付いたらぼんやりと考え事をしていた。風船を持った優しそうな天使の姿が思い浮かぶ。その天使は、夢の男の人と同じ顔をしていた。
あの人が天使だとすると、夢の中の「私」は何なのかな……。
そんな風に考えていたら、一つの物語が浮かんできた。
私は、いつも思いついた物語を書き留めているノートを広げ、そこに筆ならぬ鉛筆の赴くまま、文字を書きつけていった。
☆ ☆
あるところに、天使の女の子がいました。
名前はサーヤ。
サーヤはまだ成りたての、小天使と呼ばれる天使でした。
早くりっぱな天使になって、大天使さまたちや神様にお会いするのが、サーヤの夢でした。
今日は、小天使たちがお勉強のために地上へ降りる大切な日。
ところが、サーヤはたいへんなことに気がつきました。
なんと、羽を失くしてしまったのです。
サーヤはあちこちを探して回りました。けれども、どうしても見つかりません。
ついに、サーヤは泣き出してしまいました。
その時――
「どうしたのですか?」
優しい声に振り向くと、大人の男の天使がいました。
嘘をつけない天使のサーヤは、しゃくりあげながらも正直に答えました。
「はねを、なくしちゃったの。どこにおっことしちゃったのかなぁ?」
天使は不思議そうに首をかしげましたが、その表情はすぐに温かい微笑みへと変わりました。
「そうですか。でも大丈夫。代わりにこれをあげましょう」
そう言うと、天使はどこからか赤い風船を取り出し、その紐をサーヤに握らせました。
「これで地上に降りられます。だからほら、涙を拭いて」
天使の優しい言葉によって、サーヤに笑顔が戻りました。
☆ ☆
私の癖で、少し幼い文章になった。
けれど、私が物語を書くようになったきっかけは絵本なのだ。幼い頃に読んだ絵本に感銘を受け、自分でも書いてみたくて始めた。
絵は苦手なので、文章だけ。それでもやはり、どうしても絵本や童話のような雰囲気になってしまう。そういう風にしか書けないのだ。
天使に年齢や性別があるというのも、本当はおかしいのかもしれないが、私は、緻密に計算して「こう書こう」と考えながら書くのは苦手だった。
むしろ物語は、どこかから降ってくるという感覚だ。
私は、降ってくる物語をそのまま文字にしていくだけで、話はどんどん進んでいく。
読み返すときに読者の目線になると、この話を本当に自分が書いたのか、と不思議に思うこともあるくらいだ。
「大体、『あるところ』ってどこ? 地上へ降りるっていうからには空の上だろうけど、天国…っていうのもちょっと、ね……」
私は、一瞬胸がずきりと痛んだことに気付かなかったフリをして、文章の頭に「天上の」と書き加えた。
天国は死んだ人が行くと言われている場所だから。
同じ名称にはしたくなかった。
続き……そう、この話の続きを書かなくては。
私は気持ちを切り替えて、物語を先へ進ませ始めた。
☆ ☆
「いいですか、小天使さん」
サーヤが天上を離れる前に、天使は言いました。
「サーヤです」
「……では、サーヤ。地上に降りたら、自分の近くを探してごらんなさい。きっと、あなたの羽が見つかりますよ」
「ほんと!? ありがとう! がんばる」
風船を持って飛び立つサーヤを、天使は優しく見守っていました。
☆ ☆
実際には、風船ひとつで空が飛べるはずなどない。私は、「赤い風船」の本当の意味について考えてみようとした。
例えば、幼い私が風船の紐を放してしまって……、木に引っかかっていたその風船を、通りかかった男の人が取ってくれた、とか。
しかし、どうもいまいちピンとこない。
むしろ、私が泣いていたのは、風船とは何の関係も無いことが原因だったような気がする。
泣いて……。そう、私は、泣いていたのだ。夢と同じように。それは思い出せるにもかかわらず、その理由が分からない。
私は、なぜ、泣いたりしていたのだろう?
外の方が騒がしい気がして、私は僅かに開け放していた窓から顔を出した。
見ると、隣の家の前にトラックが停まっており、何人かの男の人がその中からいくつかのダンボール箱を運び出している。
引っ越し、だろうか。あのご老人の家を、誰かが買い取ったのか?
あの家が変わってしまうのは少し淋しい気もしたが、彼は以前、「家は人が住んでこそ家だ」と言っていたから、これを知ったら喜ぶだろう。
それにしても、一体どんな人が越してきたのだろうか。挨拶回りは「向こう三軒両隣」が基本だから、そのうち家にも挨拶に来るかもしれない。
そう考えると、なぜか胸がドキドキしてきた。
この気持ちは、期待? それとも不安?
いや……、予感、かもしれない。何か不思議なことが起こりそうな……。
その日の午後のこと。
玄関のチャイムが鳴った。
「――はい」
インターフォンで、相手を確認する。
『あの、隣に越してきた者です』
――来た!
新しい隣人は、男性のようだった。その声に、なんとなく聞き覚えがあるような……。
「しばらくお待ちください。」
私は玄関に向かった。出てみると、そこには一人の青年が立っていた。
――あ!!
「あの、はじめまして。僕はお隣に越してきた三橋数男といいます。これ……、つまらない物ですが」
言うと、青年は手に持っていた箱を差し出した。
上の空だった私は、機械的にそれを受け取ろうとして――、はっと我に返った。
「あの、これって、お蕎麦じゃありませんよね?」
「えっ!? 蕎麦だと何かまずいんですか?」
私の問いに、青年はうろたえた。――ということは、箱の中身は本当に蕎麦であるらしい。引っ越しそばというと「定番」というイメージがあるが、実際に持ってきた人は初めてだ。ちなみに、私達の引っ越しのときは菓子折りを配った。
「ごめんなさい。父が、蕎麦アレルギーなんです」
悪いなぁと思いながらも、私は手を引っ込めた。
「ええ!? いや、それはまた……。こちらこそ、すみませんでした」
青年は、本当に申し訳なさそうな顔をして、頭を下げた。
ムッとされるかもしれないと思っていたので、少しホッとした。
「ご存知なかったんですから、気にしないでください。それに、私は好きですよ、蕎麦」
私はそうフォローしておいた。
「……ええと、他に何も用意してなくて悪いんですが、これからよろしくお願いします」
頭を下げる青年に、私も頭を下げ返した。
「こちらこそ、よろしくお願いします。――あ、あのっ!」
「はい?」
私はこのことを訊くべきかどうか迷った。けれども結局、後々気になるのが嫌だったので、訊いてみることにした。
「昔、どこかでお会いしたことがありませんか? その……、十年以上前だと思うんですけど」
そう、青年は、声も顔も夢の男の人にそっくりだった。だから、もしかしたら……、と思ったのだ。
しかし、青年は首を傾げ、しばらく考えた後、
「さあ……。覚えてません。なにしろ、その頃僕は小学生だったでしょうから」
と答えた。
あ、そうか。
今更ながら、私は気付いた。夢の男の人が昔会ったことのある人だったとしても、この年若い青年と同一人物のはずがないのだ。
しかし、赤の他人にしては似過ぎている。
「じゃあ、歳の離れたお兄さんとか、歳の近いお父さんとか……」
私がさらに訊ねようとすると、さすがに青年は不審に思ったようだった。訝しげな顔で、
「……あの、どうしてそんなことを?」
と訊いてくる。
「あっ、すいません、変なこと訊いて。ちょっと……、知っている人に、よく似ていたので……」
私はしどろもどろになりながら言い訳した。
「そうですか。……僕に兄弟はいませんし、父とも随分歳が離れていますよ。きっと他人の空似でしょう。世の中には自分と似た人が三人はいるといいますからね」
「そう…ですか」
私は少しがっかりした。
「あの、僕は他のお家にも行かなくてはならないので、これで失礼します。……お蕎麦、本当にすみませんでした」
「いえ。……さようなら」
帰っていく青年を私はぼーっと突っ立って見送った。一瞬期待しただけに、ショックが大きかったのだ。
あの人……、名前、なんだっけ?
確か、ちゃんと名乗っていたと思うが、夢の人かもしれないという考えに気を取られてまともに聞いていなかったのだ。
み…なんとかだったような気がする。み……、み……。
……まあ、いいか。後で表札でも見れば。
しかし、気になる。本当に、ただの他人の空似なのだろうか?
☆ ☆
地上に降りたサーヤは、町であの天使にそっくりな男の人を見つけました。
「天使さま!」
サーヤは、あの天使も地上へ降りてきたのかと思い、そう声をかけました。
ところが、
「え?」
と振り返った男の人は、サーヤを知っている様子がありません。
「天使さま…じゃ、ないの……?」
恐る恐る、サーヤはそう訊ねました。すると、あの天使そっくりな男の人は苦笑して、
「天使は君の方じゃないのかい?」
と、逆にきき返しました。
「え……?」
サーヤは驚いて、大きな目をさらに大きく見開きました。
「どうして知ってるの? やっぱり天使さまなの?」
「違うよ。でも君の背中には、小さいけれどちゃんと羽がついているだろう?」
「えっ?」
男の人の言葉に、サーヤは振り返って羽を見ようとしました。
けれどもうまく見ることができず、羽を追いかけてくるくると回ってしまいました。
その様子に、男の人は思わず吹き出しました。
「なんだか、自分の尻尾を飲み込んだ蛇みたいだ」
「え……」
男の人の言葉にびっくりして、サーヤは動きを止めました。
蛇というのは、サーヤたち天使の住む天上の世界では、邪悪な動物として忌み嫌われているのです。だから天使たちは、滅多にその名を口にしません。
やっぱり、天使さまじゃないのかな?
サーヤはしゅんとして、俯いてしまいました。
「サーヤ!」
男の子の声が、サーヤを呼びました。
声の主はサーヤのともだち、小天使のリックでした。
「こんなところで何やってるんだよ!? ちょっとこっちに来いよ!」
大声でそう言うと、リックは近づいてきました。
「……お友達がいたんだね。迷子じゃなかったんだ」
男の人はほっとしたのか呟くようにそう言うと、サーヤに背を向けて歩き出しました。
「さようなら、小さな天使さん」
「え? え? あの――」
追いかけようとするサーヤを、リックが引き留めました。
「待てよ! サーヤ、翼をしまえ。地上に降りたらそうしろって、言われただろ?」
「うん。でもリック、私の背中に、ちゃんと羽、ついてる……?」
「当たり前だろ? おまえ、どうやって地上に降りてきたんだ? おまえの翼、やたら小っこいけど、でも、ちゃんとついてる」
それは、さっきの男の人と同じ言葉でした。
「そ、そうなんだ……。よかったぁ。なくしちゃったかと思ったよ」
「はあ? どうやったら羽なんか失くせるっていうんだ? 変なこと考えるやつだな」
「うん……、そうだね」
気が緩んだのか、半ベソをかきながら、サーヤはうなずきました。
サーヤが羽を失くしたと思ったのは、見えなかったからです。実は、サーヤは生まれてからまだ一度も、自分の羽を見たことがありませんでした。今回下界へ行くことになったので初めて確かめようとして、自分の羽が「ない」ことに気づいたのです。
かんちがいだとわかって、サーヤは心の底からほっとしていました。
「お、おい、泣くなよ。いいからとっとと羽しまえ」
リックが、瞳をうるませるサーヤを見て、慌てたように言いました。
「うん」
サーヤは背中に意識を集中させました。すると、背中の先にある翼の存在を感じることができました。
「……このことだったんだ……」
近くを探せば羽が見つかると言った天使の言葉を思い出して、サーヤは呟きました。
「は? 何が?」
リックが不思議そうにききます。
サーヤは、にこっと笑って首を振りました。
「ちゃんと羽が見つかった、ってことだよ」
あの天使は、サーヤの背に翼があることを、すぐには教えてくれませんでした。
けれどもそれはきっと、目に見えるものが全てではないということに、サーヤが自分で気づけるよう考えてくれたからに違いありません。
今度会ったらお礼を言わなくちゃ。
サーヤはとても幸せな気持ちでそう考えました。
☆ ☆
「ふぅ……」
私は鉛筆を置き、椅子の背もたれに体重を預けた。天井を見上げる。そうしていると、空っぽになった頭の中で物語が動き始めることがよくあるのだ。
だから私は、話に詰まったとき、よくこうやって天井を仰ぐ。
けれど、今日は駄目のようだ。何も浮かんでこない。どうしても、引っ越してきた青年のことが気になって集中できないのだ。
「はぁ……」
私は溜息をつき、その姿勢のまま、目を閉じた。
夢の男の人の笑顔が、目の奥に蘇る。
今は、とても他のことを考えられそうにない。
何しろ、あの夢は私にとって特別なのだ。
あの夢は……。
――今から十三年前。私がまだ三歳の、無力な女の子だった時。
お母さんが死んだ。
私には最初、それがどういうことか分からなかった。
ただ、お母さんはもう二度と目を覚ますことはないんだよ、と言われたのが異常に悲しかったことを覚えている。
お母さんはもう二度と、私に微笑みかけてはくれない。
もう二度と、優しい声で私を呼んではくれない。
もう、二度と……。
悲しくて悲しくて、その日は泣きながら眠った。
そして、その夜。私は初めてあの夢を見た。
夢の中の男の人が、お母さんの代わりに、優しい声とまなざしで、私を慰めてくれた。
だから、あの夢は特別。あの男の人も特別。
ところが、隣の家に引っ越してきた青年は、あの人にそっくりなのだ。
これで私が混乱しないはずがない。
私にはどうしても、あの青年が夢の人と無関係とは思えないのだ。
☆ ☆
人間の世界で過ごす間、小天使たちは普通の子どもとして振る舞います。そして、何か一つ善いことをして、夜までに天上へ帰ってゆくのです。
「ねえリック」
無事に羽をしまったサーヤは、リックに声をかけました。
「大天使さまは、地上に降りたらべつべつに行動しなさいって、言ってたよね……?」
「だから何だよ?」
リックはムッとして訊きます。
「あの、そろそろわかれたほうがいいんじゃないかなぁ……?」
「だって、おまえをひとりにしておくと危ないだろ。おまえは落ちこぼれなんだから」
「おちこぼれ……?」
サーヤの瞳に涙が溢れるのを見て、リックは頭を掻きました。
「まったく、おまえはすぐそうやって泣く。もう知らないぞ。じゃあな」
「あっ、リック!」
実はリックは、サーヤの涙を見るのがいたたまれなかったのですが、サーヤはリックに見捨てられたと思いました。
「待ってよぉ!」
追いかけようとしましたが、リックは小さい体で人込みの間をすり抜け、すぐに見えなくなってしまいました。
ひとり残されたサーヤの目には、ますます涙が溢れるのでした。
☆ ☆
お父さんは昨日から出張で、明日まで帰ってこない。私は一人きりの時間を持て余していたのもあって、物語を書くことに熱中していた。
私は、物語の主人公“サーヤ”が出会った男の人を、隣に越してきたあの青年とダブらせていた。それと同時に、この話の結末が私の未来をも示してくれるような気がしている。
物語は進んでいくけれど、どんな結末になるか、書いている私自身にも分からない。
☆ ☆
その時、サーヤに声をかけてきた人がいました。
「やあ……。また会ったね。どうして泣いているの?」
さっきの、天使に似た男の人でした。
「リックに、『おちこぼれ』って、いわれたの」
サーヤは、涙をこらえながら答えました。
「落ちこぼれ?
☆ ☆
玄関のチャイムが鳴ったので、私は中途半端なところで鉛筆の動きを止めなければならなかった。
一体誰?
まさか……。
「――はい」
『あの、度々すみません、三橋です』
やっぱり! 隣の人だ。三橋という名前だったのだ。
『良かったら、僕の描いた絵を見に来てくれませんか?』
「……絵を?」
『はい。蕎麦の代わりに、好きなのを一枚、差し上げようと思いまして』
私は戸惑った。絵をくれるということは、その絵にそれなりの価値があるということだろうか? 少なくとも、貰った人が喜ぶという自信はあるようだが……。
「……えっと……。三橋さんは、画家なんですか?」
『画家というか、絵本作家ですけど』
「絵本作家!!」
びっくりした。遠い存在だと思っていた作家という職業の人が、こんなに近くに現れるなんて。しかも大好きな絵本の作家だという。
「絵本」という言葉に、私の警戒心は薄れ、興味が湧いてきた。この人が、どんな絵を描いているのか、ぜひとも見てみたい。
「本当ですか? それは是非、見てみたいです。じゃああの、しばらくしたら行きます」
一応、お父さんに置き手紙をしておこう。
私は、メモ用紙に鉛筆で「隣の家に行ってきます」と書いて、テーブルの上の目立つ所に置いた。もしお父さんが私のいないときに帰ってきても、一目で分かるように。そして、玄関のドアに鍵を掛け、出掛けた。
隣の家には、表札が出ていなかった。まだ取り付けていないのだろう。
「やあ、いらっしゃい」
玄関で私を迎えた三橋さんは、優しそうな微笑みを浮かべてそう言った。
「おじゃまします……」
「どうぞ、入ってください。絵はこっちです」
三橋さんについていった私は、思っていたより狭い部屋に案内された。おじいさんが住んでいた時も、ここには入ったことが無い。だから元は何の部屋だったのか分からないが、今この部屋の中には、運び入れたばかりといった様子のダンボール箱が雑然と置かれていた。
「すみません、なにしろ今日引越してきたばかりなもので、片付いてなくて……」
三橋さんは照れくさそうに言った。
「箱の中に絵が入っていますから、面倒だと思いますが順番に出して見てくれますか? 僕、コーヒーを淹れてきますから」
「はい」
もしかしたら自分の作品を目の前で見られるのが恥ずかしいのかもしれないと勝手に想像し、私は素直に頷いた。
「じゃあ、ゆっくり選んでくださいね」
と言い残して、三橋さんは部屋から出ていった。
私は、一つ目のダンボール箱を開け、中の絵を取り出して順番に見ていった。
「これは……」
絵はどれも温かい色を使って、柔らかいタッチで描かれている。そして――、私はこの絵を描いた絵本作家を知っていた。おそらく、間違いないだろう。
「どうですか? 良い絵が、ありそうですか?」
コーヒーを手に戻ってきた三橋さんを振り返り、私は勢い込んで訊ねた。
「もしかして、津橋一臣さんですか!?」
「え? ええ、そうです。三橋の『み』を後ろへもってきただけの、単純なネーミングですけどね。ご存知でしたか」
三橋さんは、少し驚いたように言った。
「はい! この年齢で絵本を買うのって、少し恥ずかしいんですけど、随分買って読みました」
絵を一目見て確信はあったが、彼が肯定してくれたことで嬉しくなって私は言った。私は津橋一臣がかく絵本のファンなのだ。
「それは……、どうもありがとう。嬉しいよ」
「あ、後でサインを頂いてもいいですか?」
隠し切れない喜びを声に滲ませてしまいながら、私は訊ねた。
「もちろん。じゃあ、大江さんの選んだ絵に、サインしましょう」
三橋さんはにこやかな表情で、コーヒーカップの載ったソーサーを床に置いた。ソーサーの上にはカップの他に、スプーンと、スプーンの上の角砂糖が付いていた。
「ここに置きますね。あ、それとも、テーブルのある所へ案内しましょうか?」
「いえ! ここでいいです!」
もっと絵を見ていたかった私は、大げさなほどぶんぶんと首を振った。
彼の描く絵は、優しい。絵全体から、それを描いた人の優しさが溢れてくる気がする。
こんな絵の描ける人なら、警戒する必要もなかった。絶対、いい人に違いない。
「……あれ?」
ふと、我ながら外れたタイミングで、私は奇妙なことに気付いた。
「どうして私の名前を……?」
さっき、三橋さんが私のことを「大江さん」と呼んだような気がする。しかし確か、私はまだ名乗っていなかったはずだ。
「……さっき、表札で見ましたから」
「ああ、なるほど」
当然だった。それは私自身がやろうと思っていたことでもあったし、彼は二度も家を訪ねてきたのだ。表札を見たに決まっている。
もしかしたら、何度かファンレターを出したことを覚えていてくれたのかもしれない、などと淡い期待を抱いたのが間違いだったのだ。第一、顔写真も入れていないのに、手紙の主が私だと分かるわけがない。
「あっ、私、大江森子といいます」
今更ながら、私は名乗った。
「森子さんですか。……いい名前ですね」
「そうでしょうか? 筋肉モリ子とか、よくからかわれて嫌だったんですけど」
「はは、それはひどい」
三橋さんは思わず笑い、それから一つ咳ばらいをして、
「――いや、失礼」
と謝った。
「でも、大江さんはそんなに力が強いようには見えませんが?」
「はい。ただの言葉のあやだと思います。私をからかいたかっただけじゃないでしょうか」
「それはまた、どうして?」
私は、コーヒーに砂糖を入れて、スプーンでかき混ぜた。
「授業参観です」
「え?」
「ほら、授業参観って、大抵の子は母親が来るでしょう? でもうちは、いつも父親が来ていたんです」
「なるほど、それで……」
「私の母は、私が三歳のときに他界したからなんですけどね」
「……そうでしたか」
初対面の人にこんなことを話すのは初めてだった。憧れの人と出会えたことで、私は興奮していた。しかも、その人は私に絵と直筆のサインをくれると言っている。そしてこれから先、少なくともしばらくの間は隣の家に住んでくれるのだ。
気持ちを落ち着けようと、私はコーヒーを一気に飲み干した。
「……すみません、嫌なことを思い出させてしまって」
三橋さんは、静かにそう謝った。
「いいえ。……仕方ありません。病気だったんですから」
「……病気?」
「え、はい。……何か?」
「ああ、いえ」
三橋さんは、なんでもないというように小さく首を振った。
「……ところで、お父様は今、どうされているのですか?」
「出張です。昨日から、明日まで」
「……出張? じゃあ、大江さんは一人で家に?」
「はい。そうですが……?」
「それでは淋しいでしょう」
淋しい?
……そうかもしれない。だから今朝、またあの夢を見たのかも……。
「でも、もう慣れましたから」
「……そう、ですか。あ、コーヒーのおかわりはいかがですか?」
「え? ……えっと、じゃあ、いただきます」
三橋さんがカップを持って出ていった後で、私はまた絵を見始めた。
ダンボール箱の中には、見たことのある絵も無い絵もあった。古い絵、新しい絵……。それらが分類されずに適当に箱詰めされている。
ようやくダンボール箱一つ分を見終わって、私は次の箱を開けた。その中にも、ぎっしりと絵が詰まっている。おそらく、他の箱の中もそうなっているのだろう。
絵を描くための道具が無いところをみると、どうやらここはただ絵を保存するための置き部屋にするつもりらしい。描くのは別の所なのだろう。
しかしこれだけ絵が多いと、中から一枚選ぶのは大変そうだ。
無理も無い。津橋一臣は、絵本業界ではかなり有名な人物で、絵本の売り上げは国内で五本の指に入るといわれている。私はデビュー当時から彼に目をつけていたが、本の刊行ペースの割に雑なところが全く見られないのに、何度も驚かされていた。それだけの枚数絵があるのだから、端から見るだけでも時間がかかる。それに、どれもこれも欲しくなってしまうから、たった一枚に絞るのはなおさら難しい。
改めてよく見ても、一枚一枚丁寧に描かれているように見える。彼は朝から晩まで、他のことを何もせず、絵だけ描いてでもいるのだろうか? と思ってしまう。それだけ絵本に情熱を傾けているのだろう。だからこそ、彼はここまで有名になったに違いない。
そんな人が、隣に越してくるなんて!
今更ながら、そのすごさが分かってきた。
しかも、彼は絵本に自分の写真を載せていない。だから私は本当に今日初めて彼の顔を見たのだ。それが、あの夢の人にそっくりだなんて。
なんだか、運命のようなものを感じる。
「あれ、この絵……」
私は、一枚の絵を見て手を止めた。動かずにじっとその絵を見ていると、二杯目のコーヒーを淹れて戻ってきた三橋さんが、不思議そうな顔で近づいてきた。
「どうかしましたか? 気に入る絵が、見つかりました?」
コーヒーをまた床へ置く彼に、私はその絵を見せた。
「あの、この絵なんですけど……」
絵の中には、涙を浮かべてこちらを見上げる少女が描かれている。少女が中心に大きく描かれ、背景はぼんやりと夕焼けのような赤で塗られていた。
「ああ、その絵は、まだどこでも発表していないものなんです。ちょっと特別な絵で……。一般に公開したくないんですよ」
と三橋さんは言って、私の反応を見るように見つめてきた。
未公開の、絵。どうりで見たことが無いはずだ。
しかし、見たことの無い絵なら他にもあった。私がこの絵に目を留めたのは、描かれている女の子に見覚えがあるような気がしたからだ。
それはアルバムの中で見たことのある、私。
そう。幼い頃の私に似ていた。
「私……、小さいときからよく見る夢があるんです。泣いている私に、三橋さんそっくりな男の人が赤い風船を渡してくれる夢……」
私は思わず喋っていた。
三橋さんは驚いたように軽く目を見開き、
「それは、僕だ……」
と呟いた。
「えっ?」
「僕にも、いつからか見るようになった夢があるんですよ。夢の中では、僕はちょうど今くらいの年齢になっていて、それで、泣いている女の子に風船を渡すんです」
「…………」
私は、あまりのことに声を出すこともできなかった。
では、絵の中で泣いている少女は、彼が夢の中で見ていた女の子であるというのか? 一般に公開したくないのは、それだけ思い入れがあるから?
私達は会う前から、お互いを夢に見ていたということだろうか? そんな奇跡のような出来事が自分の身に起こるとは、今まで思ってもみなかった。この人は……、この人は、私と同じ夢を見ていたのだ!
もしそうなのだとしたら、この世界には本当に神様がいるのかもしれない。
私は、今なら物語の続きが書けるような気がした。結末は、もちろんハッピーエンド。
やっぱり、物語はハッピーエンドが一番だ。
「不思議なことがあるものですね。……じゃあ、その絵に決めますか?」
心なしか、やや興奮気味に三橋さんは言った。彼も驚いているのだろう。喜んでくれているなら、私も嬉しいのだが。
「はい。あの、これ……、本当に貰ってもいいんですか? 特別な絵なんですよね?」
「貴女が受け取ってくれるなら、いいんですよ。じゃあ、約束どおり、サインを入れますね。あ、コーヒー、どうぞ」
胸ポケットからサインペンを取り出しつつ、三橋さんは言った。
「……いただきます」
私は二杯目のコーヒーを持ち上げ、飲んだ。砂糖が無かったせいか、さっきと少し味が違うような気もしたが、今はそれより三橋さんの手の動きの方が気になる。
「――やっぱり、駄目だな」
くすっと笑うと、三橋さんは何も書かないうちにペンを胸ポケットへ戻してしまった。
「残念だけど、やっぱりこの絵はあげられないよ」
「え……? どうして? だってさっきは――」
「ごめんね。まさかこんな所で君に会うなんて思ってなかったからついあんなこと言っちゃったけど、本当は初めからそんなつもりなかったんだ」
どういうことだろう? この人は、何を言っているの?
……違う。この人は、違う。
あの夢の人は……それに津橋一臣も、見せかけじゃなく、本当に優しいと、信じていたのに。
やめて。私の世界を、壊さないで。
――思い出したくないの……。
おかしい。なんだか、頭がくらくらしてきた。
胸が痛い。考えがまとまらない。
「あ、あの私、そろそろ帰りま――」
「帰さないよ」
立ち上がった私の腕を、三橋さんが摑んで引っ張った。
私はよろけて、三橋さんの腕の中へ簡単に収まる。膝に力が入らない。
……そういえば私、さっき、お父さんは出張で帰ってくるのは明日だって、教えちゃった。
でもどうしてだろう? 頭がぼーっとして、危機感はあんまりない……。
それに……、なんだか、眠く、な…って………
☆ ☆ ☆
「兄さん、この子に見覚えある?」
「……この子は!!」
「大江森子。この子だろう? 兄さんがあの大江夫人を殺したときの、小さな目撃者はさ」
「おい、数男。お前、この子に何をした? まさか殺したんじゃないだろうな?」
「まさか。ちょっと油断させて、睡眠薬で眠ってもらっただけだよ。ほら、兄さんが『眠れない』って言って僕に買わせたのがあっただろう?」
「……そうか」
「でもどうするの? この子、兄さんの顔を覚えてたよ。兄さんに風船を貰ったことも」
「何?」
「もっとも、母親の死因は病気だと信じていたみたいだけど。……まあ、目の前で母親を殺されたんだ。きっとすごくショックだったんだろうね。記憶を失うほどに。いや、それとも、実の母親に殺されかけたことの方がもっとショックだったのかな?」
「ああ……。あの時も、ひどく泣いていたよ。だから俺は、手近にあった風船を膨らませて、あの子にあげたんだ……」
「馬鹿じゃないの? 指紋は残さなかったのに、唾液を残すなんてさ。幸い、兄さんには動機がなかったから、疑われなかったけど。疑われたら、おしまいだよ」
「分かっている」
「解ってないだろ? この子をどうするつもりだよ? この子は僕を見て、歳の離れた兄はいないかって訊いたんだよ? 咄嗟にいないって言ったけど、いつ、母親が殺されたことを思い出すか……」
「あの時、その子は証言能力のない、ほんの子供だった! 覚えていないなら、それでいいじゃないか。それに、風船は、俺があそこへ行ったことの証明にはなっても、俺が殺したという証拠にはならないだろう」
「甘いよ、兄さんは。捕まってもいいの?」
「数男、お前は俺の描いた絵本を、自分のものとして発表したいだけなんだろう? それは構わん。俺はこのまま一生、表舞台に出る気は無い。だからその子に、手を出すな」
「何偉そうに言ってるのさ。ただの『絵本作家』じゃ、そんなに売れないんだよ? 僕はもっと一般の人に知られたいんだ。だからもっと有名になれるようなものを描いてよ」
「いいのか? 有名になればなるほど、ゴーストライターの秘密がバレやすくなるんだぞ?」
「兄さんが黙ってさえいれば大丈夫だよ。まあ、兄さんが言うってことは、自分が身を隠したがる理由を話すっていうことでもあるわけだしね」
「俺は……、最悪そうなっても構わない。だが、その子が忘れているなら、余計なことを思い出させたくない。その子は、俺のファン第一号でもある。とにかく無事に家へ帰してやってくれ」
「へえ。兄さん、この子が兄さんのファンだって知ってたの?」
「ああ。俺がこの仕事を始めたとき、一番にファンレターを送ってくれた子だ。名前を見て、もしかしたらとは思っていたが……。お前だって読んだだろう?」
「そんなのいちいち覚えてないよ。……あ、じゃあまさか、兄さんが引越し先にこの家を選んだのって――」
「いや、それは偶然だ」
「ふうん……? まあいいや。それよりどうするの? 眠らせちゃったよ?」
「何とかごまかせ。お前は口だけはうまいからな」
「……。ポケットに、鍵が入ってる。……家に連れ帰って、全部夢だった、とでも思わせるか……」
☆ ☆ ☆
何が起こったのか分からない。
赤い。赤い、世界……。
違う。これは違う。こんなの現実じゃない。現実なわけない。だって、ダッテオ母サンハ病気デ……。
なのにどうして、目の前がぼやけるの?
……誰? あなたはだれ?
見たことのない、男の人。彼が膨らませた風船は、彼の手を離れ、空気の抵抗を受けて、力なく私の手の中に落ちた。
風船。赤い風船。
赤い――
☆ ☆ ☆
あ…れ? ここ、私の家? 私……、三橋さんの家に行って……、あれ? 夢、見てたのかな?
「頭、痛い……」
私は物語を書いているうちに眠ってしまったのか、さっきまで机に突っ伏していた。
変な姿勢で寝ていたせいなのか、頭痛がする。
あるいは窓を開けっ放しにしていたせいで、風邪をひいたのかもしれない。
日が傾いて、少し寒くなってきたようだ。私は一つ身震いをして、窓を閉めた。
そうだ。続き……。物語の続きを、書かなければ。
私は鉛筆を持ち上げた。
☆ ☆
「落ちこぼれ? ああ、それなら僕もよく言われるよ。僕も、落ちこぼれだからね」
「そうなの?」
サーヤは目を丸くしました。
男の人はうなずき、
「ただし僕は、悪魔の落ちこぼれだけどね」
と言うと、翼を広げました。
漆黒の翼を。
☆ ☆
「……!」
私は驚いて手を止めた。ついさっきまで、こんな展開にするつもりは全然無かったのだ。
一体どうしてこんなことを書いてしまったのか、自分でもよく分からない。しかし、書き直そうという気も起きなかった。
☆ ☆
サーヤは驚いて声も出ませんでした。
天使に似た人は、なんと黒い翼を持っていた、つまり悪魔だったのです。
「で、でも、おちこぼれっていうことは、いい悪魔さんなのかな……」
「ああ。僕は落ちこぼれだよ。兄のせいでね」
「……お兄ちゃん?」
「僕の兄は、天使なんだよ。しかも顔は僕とそっくり。悪魔仲間は、僕がいつ裏切るかと疑っている」
「……え?」
「人間の世界で人間に成りすまして悪さをするのが、今回の目的だった。だが、お前を見たとき、ひらめいたんだ。天使を一匹、魔界へ連れていけば、俺は認めてもらえる。一人前の悪魔としてな。さっきは邪魔が入ったが――
☆ ☆
「駄目だ!」
私は、セリフの途中で耐えられなくなり、書きかけのページをノートから破り取ってぐしゃぐしゃと丸め、ゴミ箱へ捨ててしまった。このままだと、バッド・エンドになるのは目に見えていたから。
「…………」
いや、本当にそうだろうか。例えばここで、誰かが助けに来るという展開は?
……駄目だ。それでも、助けにきた“リック”が死ぬとか、兄弟が殺しあうとか、または兄の天使が魔界へ行って堕天使になるとか、そんな話しか浮かばない。
一体私はどうなってしまったのだろう?
よく思い出せないけれど、さっき見ていた夢が原因だろうか?
……夢? 本当に、夢だったのか?
私はリビングへ行ってみたが、目立つ所に置いておいたはずの、父に宛てた手紙は無かった。
やっぱり、夢か……。
私は一つ溜息をついて部屋へ戻り、机の上のノートを閉じた。
……どうしてだろう?
あの夢は今まで、私の心をいつも温かくしてくれていたのに。
この物語は、ハッピーエンドにはなりそうもない。