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異世界勇者の親友役になりました  作者: 桶丸
異世界戦争編
82/157

獣娘達と義父達の楽しい喧嘩祭

 フラン達との会話が一段落した後、腹が減ったので食堂へと向かう。

 本当は聞きたい事が他にもあったのだが、一度に聞いても覚えられる自信が無い。

 とにかく今はご飯。

 昨日から色々あったせいで、お腹がペコペコだ。


(さて、今日は何が出てくるかなあ)


 この遺跡には、勇者ハーレムの家事マスターであるサラが居る。娯楽の少ないこの異世界で、彼女の作るご飯は心のオアシスだった。


(昨日は肉ばっかりだったからなあ。今日はさっぱりとした……)


 突然の爆発音。

 何事かと思い、辺りを見回す。


『マスター』


 それに合わせるかのように、スピーカーから遺跡の声が聞こえて来た。


「キズナ、何かあったのか?」

『動力室が攻撃を受けています』


 それを聞いて、一瞬硬直する。

 動力室は遺跡の心臓部。破壊されたら遺跡がどうなるか分からない。

 俺は腹が減って居る事も忘れて、動力室に向けて走り出した。


(くそっ! 昨日の今日だぞ!)


 フランから得た情報から考えると、これは魔物側の攻撃だろう。

 それにしても、今までの相手は遺跡の外で迎撃出来て居たのに、まさか初手から遺跡に潜り込まれるとは思わなかった。


(相手は相当の手練れか。又は……)


 勇者ハーレム。

 しかし、今までの事を考えると、勇者ハーレムが遺跡を落としに来るとは思えない。

 そうなると、隠密性に長けた手練れが侵入している可能性が高い。


(俺一人で大丈夫か?)


 そんな事を考えたが、今はとにかく時間が無い。ネクロミノコンを失った今、この遺跡の機能が停止するのは致命的だ。


「……ったく! 次から次へと!」


 愚痴を言いながら動力室へと飛び込む。

 すると、驚愕の景色が広がっていた。


「ニャー!」


 平らな壁をかけ登りながら、適当に周辺機器を攻撃している猫人。


「ぴょん」


 楽しそうに動力バルブを破壊している兎人。


「がる」


 黙々と光柱に連続パンチをしている狼人。

 完全に予想外。

 勇者ハーレムである獣人三人娘が、楽しそうに動力室を破壊していた。


「お前等ぁぁぁぁぁぁ!」

「あ! ミツクニだニャー!」


 猫人であるテト=キャッツが俺に気付き、こちらへと飛んで来る。


「死ぬのニャー!」


 そう言いながら、猫パンチを繰り出す。その攻撃シールドで受け止めると、テトは空中でクルリと回り、俺の前へと降り立った。


「中々やるのニャー」

「やるのニャーじゃねえよ!」


 シールドを閉じてテトを睨み付ける。


「何でこんな事してんだよ!」

「王様達からの命令だにゃ」

「命令って……! あの声明が出されたのは今日の朝だぞ!?」

「それが何なのニャー!」


 再び宙に舞い、動力室を攻撃するテト。


「おい! こら……!」

「私達は魔物軍の先行部隊なんだぴょん」


 ゆっくりと歩いて来る兎人、パル=バニー。


「魔物軍の声明は前から予定されていたぴょん。だから、それに合わせて奇襲を仕掛けたぴょん」

「それにしては早すぎるだろ!」


 俺の言葉を無視して攻撃して来るパル。その攻撃をシールドで弾き、シールドバッシュを返す。

 しかし、パルはその攻撃を軽々と躱して、後ろに回り込んで来た。


「私達は獣人の中でもスピードに長けた一族。これくらいは当然ぴょん」


 そう言った後、後ろから俺を羽交い絞めにする。

 否。

 優しく抱きしめる。


「そう言う事で……私と子作りするぴょん」


 俺の胸元を這うパルの両手。

 流石は動物界屈指の繁殖力を持つ獣人。とても気持ちが良い……


「のぉぉぉぉぉぉ!」


 大きく両腕を広げてパルを吹き飛ばす。

 こいつは色々な意味で危険な奴だ!

 この物語が幾らR15でも、これ以上の行為は許されないぞ!?


「本当に自由な奴等だな!」


 乱されたペースを深呼吸で整えた後、改めて辺りを見渡す。

 すると、この混乱にも動じずに、遺跡の心臓である光柱を攻撃し続けている、狼人ヴォルフ=ベルガーの姿が見えた。


「やめぇぇぇぇい!」


 大声と共に駆け出して、ヴォルフに掴み掛ろうとする。

 しかし、ヴォルフはその手をサラリと躱して、横にある突起物の上に降り立った。


「いきなり襲うなんて……男は狼がる」

「ガチの狼に言われたく無え!」


 遂に我慢が出来なくなり、腰の双銃を手に取る。

 射撃! 射撃! 射撃!

 ミス! 獣人達はダメージを受けない!


「これだから獣人はぁぁぁぁ!」


 銃弾さえも避けてしまう圧倒的な機動力。はっきり言って、戦いの相性が悪すぎる。


「お前等! 自分達が何してるか分かってんのか!」

「勿論だニャ! 敵を素早く倒すには、拠点を襲うのが効果的ニャ!」


 ……。

 まあ、確かにそれは間違いでは無いよ?

 だからこそ、本来は拠点の守りが一番堅い訳であって……


(……っ勇者ハーレム!)


 マスターである俺が警戒して居ないせいで、勇者ハーレムは遺跡の警報に引っ掛からない。ここに来て、その仲良し状態が裏目に出てしまった。


「頼むから、これ以上遺跡を破壊しないでくれ!」

「子作りするならやめるぴょん」

「それは無理です!」

「どうしてぴょん? 簡単だぴょん。ただ、お互いの体と体を……」

「倫理! 倫理的に無理なのだよ!」


 それを聞いて、再び攻撃を始める獣人達。

 ああ、俺達のキズナ遺跡がぁ……。

 予言の事についてだって、まだ遺跡から聞いて居ないのに。


「あ、居たぜ!」


 そんな俺の後ろから、男の声が聞こえて来る。

 振り向いて見ると、前の戦いでフラン達にボコボコニされた挙句、この遺跡に居座った強硬派の魔物達が居た。


「おい、ミツクニさんよ!」


 リーダー格である犬の獣人が前に出る。


「今朝公表されたアーサー様達の声明は、事実なのか!?」


 ……お、おぅ?

 この状況で、何故そんな事を聞くのかな?

 確かに声明自体は事実だけど、あれは一方的な見解であって……


「事実だニャー!」

「やっぱりそうなのか!」


 俺を無視して魔物達の会話が進む。


「ミント様とウィズ様はなあ! 俺達のアイドルなんだよ!」


 指を鳴らして近付いて来る魔物達。


「その二人がお前に嫁ぐなんて聞いた日には……!」


 ふむ、成程ね。

 ミントとウィズは勢力に関係無く、全ての魔物に人気があるのか。

 そうだよなあ。二人とも可愛いもんなあ。

 だからこそ、こんな事が起こるのか。


「俺達も黙って見てられねえぜぇぇぇぇ!」


 目の色を変えて咆哮する魔物達。


「お前が二人に相応しいか! 拳で証明しろやぁぁぁぁ!」


 咆哮を終えて襲い掛かって来る魔物達。

 数は軽く見積もって五十体ほど。まともに戦って勝てるはずも無い。

 しかし、俺の堪忍袋は限界を迎えていた。


「掛かって来いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 魔物達に向かって思い切り叫ぶ。

 ミントとウィズが俺に嫁ぐという話は、とりあえず置いておこう。

 今はとにかく! 牙を剥く者を制圧する!


「おらおらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 双銃をホルスターにしまい、シールドを手足に丸く展開する。

 ベルゼが新開発した、プッシュシールド。

 近距離戦で分が悪い俺の為に開発された、吹き飛ばす力を強化するシールドだ。


「だっしゃぁぁぁぁ!」


 突進して来た犬獣人の懐に一撃入れる。

 ふわりと宙に浮く犬獣人。

 次の瞬間、犬獣人が入り口の外に高速で吹き飛んで行った。


「まだまだぁぁぁぁぁぁ!」


 怒号の勢いに任せて、狂気と化した魔物達の群れに飛び込む。

 正拳! 下段蹴り! 回し蹴り!

 次々と魔物を部屋の外へと叩き出す!


「こ、こいつ……! 止まらねグフゥ!」

「顔だけは! 顔だけはやめゲフゥ!」

「俺……帰ったら結婚するガハァァァァ!」


 適当な事を言いながら飛んで行く魔物達。

 そして、最後の二体。

 それは、以前強硬派の街に行った時に、門番をして居たあの竜人達だった。


「ふっふっふ……遂に俺達のバトルアックスが火を吹く日がゲボハァァァァ!」


 吹き飛ばす。

 バトルアックス? 知ったこっちゃねえ!

 こっちは色々と忙しいんだよ!


「どうしたぁぁ! もう終わりかぁぁぁぁ!!」


 魔物達に向かって叫ぶ。

 もう、何が起こっているのか分からない。

 とにかく、今は目の前に出て来た奴等を、全員ぶっ飛ばす……


「やれやれ、忙しい奴だねえ」


 そんな俺の頭に、ドサリと降ってくる猫。

 白と茶色のサイベリアン。

 我が人生の師匠、賢猫リンクス。


「ミツクニ、少し落ち着きなよ」

「し、師匠……!?」

「お前達もだ。それくらいにしときな」


 リンクスの一声で、全ての魔物が凍り付く。

 流石は賢猫リンクス。

 彼女の格は、そこらの魔物と比べるまでも無い。


「ミツクニ、随分とやられちまったねえ」


 頭から降りた後、リンクスがはっと笑う。

 久々にその笑い方を見た俺は、怒る気力を失ってしまった。


「こいつらも悪気は無いんだ。許してやりな」

「まあ、許すも何も、仕方の無い事です」


 テト達は勇者ハーレムだが、今は敵側の存在。遺跡を攻撃するのは当然の行為だ。

 暴走した魔物達も、大事に思って居た二人がこんな事になり、娘を奪われた父親の気持ちになってしまったのだろう。


「それにしても……」


 遺跡の心臓である光柱を見上げる。

 ノイズが混じりながらも、何とか形を保っている∞の光。

 声を掛けてみるが、流石に応答は無い。


「はあ……」


 思わず吐いたため息に、リンクスが笑う。


「相変らず残念な男だねえ」

「そうですね。残念な男です……」


 残念な男。

 運が悪いという言葉を使わなかったのは、運と言う言葉が嫌いな俺に対しての、リンクスなりの気遣いだろう。

 だけど、確かにこれは残念な状況だ。


「予言の真相は当分闇の中か……」

「まあ、あの科学者の娘達も居るんだ。そのうち直るだろうさ」


 それはつまり、あの狂科学者や錬金術師を、ここに常駐しなければいけないという事。

 そして、恐らくこの後も、義父と化した魔物達が、この遺跡に攻めて来るのだろう。


「頭が痛い……」

「おや、二日酔いかい?」


 リンクスの冗談に鼻で笑って見せる。

 遠退いた予言の真実。押し寄せて来る魔物達。

 世界を救うという目的から大きく外れた戦いが、今ここに始まってしまった。

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