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異世界勇者の親友役になりました  作者: 桶丸
異世界戦争編
73/157

やりすぎ駄目、絶対

 狂人達というのは、時に我々の考えて居る斜め上の行動を取る。

 その行動は、常人にとって理解し難い事が多いのだが、それを見た常人は、理解出来ずとも圧倒されてしまう。

 例えば、今の俺が置かれて居る状態がそれだ。


「電撃スイッチオン!」


 フランが謎のボタンを押すと、遺跡の周囲に電磁棒が飛び出して、襲って来た魔物達を痺れさせる。


「催涙スイッチオン!」


 続けてミリィがボタンを押すと、その電撃棒に穴が空き、そこから催涙ガスが発生する。

 電撃と催涙ガスの同時攻撃。

 その場所に居た魔物達は、それぞれに悲鳴を上げて、その場に倒れて行った。


(これは……本当に酷いな)


 遺跡の屋上でその地獄絵図を眺めながら、思わずため息を吐く。

 なぜこんな事が起きてしまったのか。

 その理由を説明する為に、この戦闘が始まった少し前に遡る事としよう。



『警告、魔物の群れが攻めてきました』


 フラン達が各々の研究施設に足を運んだ後、それは突然鳴り響いた。

 俺は直ぐに中央施設から出ると、全力疾走で屋上へと駆け上がる。

 そこから見えたのは、魔物側の大軍勢だった。


「ミツクニさーん」


 どこからか声が聞こえて、周囲を見回す。

 すると、地面の端にスピーカーらしきものがあり、そこから声が聞こえて来た。


「フランか?」

「そうでーす。研究施設に放送マイクがあったので、それで交信していまーす」


 少し弾んだ声で語るフラン。

 きっと、研究施設に色々な機械があって、興奮しているのだろう。


「魔物側の軍が攻めて来たんですよね?」

「ああ、東側から来てる」

「なるほどぉ。そうですかそうですかぁ」


 スピーカーの先で小さく笑うフラン。

 嫌な予感がしたので、早めに尋ねてみる。


「なあフラン、何か企んでないか?」

「いえいえ」


 質問に対して、フランがすぐに否定する。


「別に私は、研究施設に設置してあった迎撃システムを使ってみようだなんて、一ミリも思っていませんよ?」

「使う気満々じゃねえか」

「いやあ、そんなそんな」


 わざとらしくエヘヘと笑うフラン。

 見た事も無い謎の機械が目の前にあって、そこに狂化学者であるフランが居たら、使わない訳が無いだろう。


「頼むから、使うなら危なくない感じの奴を使ってくれ」

「え? 使っても良いんですか?」

「駄目って言っても使うだろ」

「いやあ、どうでしょうねえ?」


 こいつ……俺が許可する事を分かって居て、わざと茶化して居るな?

 しかし、フランは約束を守る女子だ。

 危険な物を使うなと言えば、本当に危険そうな装置は使わないだろう。


「ミツクニさーん」


 再びスピーカーから声が聞こえる。

 この声は……ミリィか?


「この錬金施設、凄いです!」


 話しているミリィの声が弾んで居る。

 きっと彼女も、今までに見た事の無い装置を見て、興奮して居るのだろう。


「錬金釜が迎撃システムと連動していて、錬金した物を外に射出する事が出来るみたいで……!」

「頼むから、危ない事はしないでくれ」

「大丈夫です! 今回作成したのは催涙ガスですから!」


 それなら殺傷力は無いか。

 しかし、危険な物に変わりはないぞ?


「そう言う事なので、使ってみますね!」

「おい、ちょっと待て……」

「それでは……!」


 フランとミリィの声が重なる。


『戦闘スタート!』



 ……で。

 その結果が、これだ。


「た、助けて……!」


 悲鳴と共に倒れて行く魔物達。

 自分達が狂人達の実験に付き合わされて居るだなんて、全く思って居ないだろうな。


「ミツクニさーん。次は落とし穴でーす」


 フランの声に少し遅れて、魔物達が居る場所の地面が割れる。


「ミツクニさん! 睡眠ガスです!」


 ミリィの声と同時にガスが発生して、魔物達が次々に倒れて行く。


「ミツクニさーん」

「ミツクニさん!」


 一応ではあるが、俺に報告してから装置を使っている事は、褒めておこう。

 だがしかし、流石にやり過ぎだ!


「メリエル! ミント!」


 俺の掛け声に応じて二人が現れる。


「みつくにー。どうしたのー?」

「うちの狂人達が暴走して、魔物達がピンチだ!」

「それで、どうすれば良いのですか?」

「スケルトンを使って、怪我人を遺跡内に収容してくれ!」


 それを聞いた二人が目を丸める。


「攻めて来た魔物達を助けるのですか?」

「ああ。だって、見ろよ」


 魔物達が攻撃を受けている場所を指差す。

 電気、ガス、落とし穴……

 無限に繰り返されるその攻撃風景は、見るに耐えない状況だった。


「流石に可哀想だろ……」

「確かに……」


 メリエルがごくりと息を飲む。

 死の天使さえも唸らせる地獄の光景。

 本当に危険なのは、敵じゃなくて勇者ハーレムなんじゃないか?


「とにかく頼む。このままじゃ全滅だ」

「わかったー!」

「分かりました」


 そう言って、ミントが大量のスケルトンを召喚する。

 メリエルがスケルトンを操作して、次々と魔物達が遺跡内に運ばれて来る。

 運ばれて来た魔物達は全員がボロボロで、既に戦意を失っていた。


「よし! 後は怪我を治せば……!」


 そこまで言って、ハッとする。

 怪我を……治す?


「不味い!」


 忘れていた事を思い出して走り出す。

 今この遺跡に存在して居る、メリエル以外に治療魔法を使える人間。

 そんな人間は、あの人しか居ない!


「皆! 大丈夫か……!?」


 医療施設に辿り着き、大声を上げる。

 しかし、既に遅かった。


「あらぁ、ミツクニ君」


 魔物達にマウントを取って、治療魔法をかけまくって居る痴女。

 保健室のエッチなお姉さん、テレサ=マージン。

 治療された魔物達は、地面に倒れて小さく痙攣していた。


「何をしたんですか!?」

「勿論治療よぉ」

「治療してこんな状態になるか!」


 幸せそうな表現をしながら、うめき声をあげている魔物達。きっと、壮絶なセクハラ治療が行われたのだろう。


「うふふ……やっぱり魔物って元気ねぇ。ほら、こんな所がこんなに……」

「言ってはいけなぁぁぁぁい!」


 言葉の途中でテレサの言葉を遮る。

 これは健全な物語なので、エッチな発言は控えて頂きたい!


「とにかくぅ、怪我は治しているから大丈夫よぉ」

「治ってすぐに天国行きだけどね!?」

「あらぁ? こんなに大勢を瞬時に治療出来るのなんてぇ、私か死の天使くらいなのだからぁ、もっと感謝して欲しいわぁ」


 それは……確かにその通り。

 異世界を旅して周った時も、メリエルやテレサのように、魔法で他人を瞬時に回復出来る人には出会わなかった。

 恐らく、治療魔法と言うのは、とても難しい魔法なのだろう。


(……まあ、何と言うか)


 黙ってテレサを見つめる。

 治療方法は何とも言い難いが、運ばれて来る魔物達は直ぐに元気になって、地面に転がっている。

 結局の所、治療は出来ている様なので、それ以上は言わない事にした。


「ミツクニさーん」


 部屋の入り口から声が聞こえてくる。

 振り向いた先に居たのは、やり切った表情をして居るフランとミリィ。


「魔物達は無事に全滅しましたー!」

「無事にって、あのなあ……」

「大丈夫です。一人も殺して居ませんから」


 フランがそう言うのだから、魔物は一人も死んで居ないのだろう。

 しかし、これだけは言っておかなければならない。


「お前達……」

「はい?」

「何でしょうか?」


 二人が首を傾げる。


「……もう魔法学園に帰れ」


 その言葉を聞いて、二人の時間が凍る。


「……え?」


 最初に声を上げたのは、フラン。


「どうしてですか? こんなに効率良く敵を制圧したのに」

「その成果だけは評価しよう」

「ですよね! ですから、これからも私達の力で……!」

「黙れ小娘!」


 二人を睨みながら、地面に転がって居る魔物達を指差す。


「見ろ! この怯え切った魔物達の姿を!」

「どちらかと言えば、幸せそうな表情をしていますが……」

「それはそれ! これはこれ!」


 手を交互に動かして、都合の悪い事柄を放り投げる。


「お前等の事だから! さっき使った兵器よりエグイ兵器を作る気だろ!」

「いやいや、そんな事は考えてませんよぉ」


 ニヤニヤを隠せないフラン。ミリィは呆けて居るが、天然だから絶対に作ってしまうだろう。

 この二人をこの遺跡に置くのは、危険すぎる。


「やりすぎ駄目! 絶対!」

「大丈夫ですよ。次はもっと気持ち良く、瀕死状態になれるように……」

「良いから帰れぇぇぇぇ!」


 俺は頭を抱える。

 この二人の事が嫌いな訳では無い。むしろ、勇者ハーレムの中では好きな方だろう。

 だけど、それでも一緒には居られない。

 勇者の親友役である俺ごときでは、彼女達を制御する事は出来そうに無い。

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