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魔法学校の大天使  作者: 霧野夜星
改訂版 一年生編
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第二十一話 廃墟都市の大規模作戦

「魔王を倒したあの爆発する氷系最上級魔法は見事だった。霧島もトップテン並みの戦力と言えるだろ」

(ちょっと調子に乗ってやり過ぎたのがまずかったか。あんまり目立ちたくないのに)


 ミキは隠してる力を佐倉先生に見せてしまったことを少しだけ後悔する。


「あー、もちろん作戦の参加を断っても構わないぞ。強制ではないからな」

「悪魔との戦いなら断る理由はありません」

「軍の上級悪魔討伐作戦というのには興味があるな」

「闇の者、滅ぶべし」


 零夜とアキラと美佳子はやる気になっているようだ。


「私も……協力します」


 ミキも戦う覚悟を決める。目立つのは嫌だが、悪魔を野放しにはできないとも考えた。


「もちろん私も参加する。それにお前達の身の安全については考えてあるから心配はいらない」


 今回の作戦は魔法防衛軍の主力部隊と、日本のトップテンが投入される予定だった。そこに零夜達が加わって過去最大規模の悪魔との戦いになると予想された。


「今日はゆっくり休んで、明日の戦いに備えておいてくれ」



 そして次の日の朝、南地区の廃墟都市の入り口の道路に、魔法防衛軍と日本のトップテン、そして零夜、アキラ、ミキ、美佳子が集まっていた。


「ここが廃墟都市……」


 たくさんの建物や車などが破壊され放置された廃墟都市を初めて見た美佳子がそうつぶやく。現在、この場所のような廃墟都市が、日本各地に存在していた。次元の裂け目が頻繁に現れて悪魔が出現しやすくなった場所には人が住めず、住人がいない都市は廃墟となり、そこが悪魔が潜伏する場所になっていた。


「ここは魔界よりひどいな。さすが悪魔のやることはえげつない」

「半分は人間の兵器でこうなったんだ。空爆やらミサイルのせいでな。上級悪魔は物理障壁が使える奴が多いから、人間の兵器では効果がないというのに」


 零夜とアキラが廃墟都市を見ながら言い合いをしていると、美佳子が近づいてきた。アキラは冷や汗を流しながら意識してないふりをする。


「お前達、強い力を持ってるな。強い奴は嫌いじゃない」

「それはよかった。なあ、明野アキラ」

「お……おお」


 アキラは美佳子と目を合わせないようにしながら話す。


(フッ、いつもルシファーに色々言われてるからな。仕返ししてやった)


 零夜はいたずら心でアキラの名前を呼んだが、冷静に考えると、もしアキラの正体が美佳子にばれたら大変なことになっていたと気付いた。


(あ、危なかった……慣れないことはするもんじゃないな)


 零夜は軽率な行動を反省する。その後、佐倉先生が軍の大型のテントから出てきて零夜達の所へやってくる。


「みんな、集まってくれ。今回の作戦を説明する」


 佐倉先生の近くに零夜達四人が集合する。


「この廃墟都市には上級悪魔が五体確認されている。だからこちらも部隊を五つにわける。そして第一部隊に主力を配置して上級悪魔のうちの一体を狙う。ほかの部隊は残りの四体の上級悪魔の監視と足止めをしてもらう」

「なるほど、今回の倒すターゲットは一体に絞るということですか」

「そうだ。残念ながら魔法防衛軍には、まだ五体の上級悪魔を同時に倒す戦力はない。だがトップテンと軍の精鋭が集まれば、一体なら倒すことが可能だろう」


 佐倉先生が零夜達に作戦の説明をしていると、巨大な盾を持つ一人の男が近づいてきた。


「君達が佐倉さんの生徒達か」


 そう話しかけてきた男は、大柄で筋肉質の体、髪は短髪にしていて真面目な感じの二十代後半の男だった。彼の名は近藤真(こんどうまこと)。魔法防衛軍の中将で日本のトップテンの一人であり、その中でも最高の魔力の持ち主だった。しかし得意な魔法は防御系の魔法なので、戦闘攻撃力という面では佐倉先生の方が上だった。


「佐倉さんは第一部隊だから、君達は俺と一緒に第五部隊として廃墟都市の北東部の悪魔の縄張りに向かってもらう」


 廃墟都市に現れた五体の上級悪魔にはそれぞれ縄張りがあった。軍の偵察部隊や衛星写真で縄張りのおおよその範囲が判明していて、そこを目指して五つの部隊が動くことになっていた。


「近藤さん。こいつらのこと、頼みます」

「ああ、必ず守って見せる」


 一緒に行けない佐倉先生は、近藤中将に生徒達のことを託す。


「俺達と一緒に行くのはあなただけですか? 軍のほかの兵士達は?」

「俺だけだ。少ない人数なら俺の防御魔法で全員守れる。兵士達を連れていくと全員は守れないからな。第五部隊は少数精鋭で行く」

(少人数で動くのなら、隙があれば全力で戦えるかもしれない)


 零夜は心の中で色々な場面を想定して、どう戦うか考え始める。


「なるほど、俺達は上級悪魔の監視と足止めが目的だから、防御重視でいくのか」


 アキラがこの作戦の目的を正確に見抜く。


「そのとおり。だから君達はいつも俺の後ろにいるようにしてくれ。それなら君達を俺の防御魔法で守ることができる」


 近藤中将は腕時計を見て今の時刻を確認する。


「もうすぐ作戦開始の時間だ。みんな、準備はいいか?」



 その数分後、廃墟都市の上級悪魔討伐作戦が開始された。第一部隊から第四部隊が目的の場所へ出発する。第一、第二部隊は徒歩で進み、第三、第四部隊は装甲車で目的の場所へ向かった。


「俺達、第五部隊は徒歩で向かう。目的の場所は歩いて行ける距離だし、徒歩の方が悪魔が出現してもすぐ対応できる。撤退する時も廃墟に隠れながら脱出できるしな」


 近藤中将が先頭になって、第五部隊は目的の場所に向かって歩き出す。


「少し前に魔法防衛軍だけでここに来て討伐作戦を試みたんだが、その時は三体の上級悪魔が同時に現れて失敗した。人間という獲物を狩るためなら縄張りとか関係なく動きだすんだろう」


「俺達が担当する上級悪魔を、第一部隊が狙う悪魔と合流させないようにするのが今回の作戦の目的だ。だから敵に動きがなければ戦う必要はない。第一部隊から勝利の連絡があったらすぐ撤退するからそのつもりでいてくれ」


「目的の上級悪魔を見つける前に下級悪魔との戦いがあるかもしれない。常に警戒を怠るなよ」


 歩きながら近藤中将が零夜達に話しかけている。


(よくしゃべるおっさんだな)


 アキラはそう思いながら零夜のそばへ行き小声で話しかける。


「ゼロムエル、今回のこの作戦、素直に従う気はないんだろう?」

「当然だ。一体ずつ倒すなんて、めんどくさいことやってられるか。隙を見てすべて倒す。それより何でお前がこの悪魔を倒す作戦に加わっている? 悪魔は貴様の仲間だろう」

「もちろんお前を邪魔するため……いや、このやりとりはあきたな。本当のことを教えてやろう。今、人間界で暴れてる悪魔は俺の配下ではない。好きなだけ倒してもらって構わん」


 これまでに人間界に出現した悪魔は、大魔王ルシファーの配下の悪魔ではなく、魔界軍の敵対勢力の悪魔だったり、どの勢力にも属していない野良悪魔だった。


「ほう、それは魔界軍が人間界に侵攻する気はないということか?」

「クックックッ、今はそうだ。今はな」

(こいつ、恐らく嘘はついていない。もし人間界に侵攻する気なら、戦力を小出しにせずに、一斉に戦いを仕掛けてくるはずだ)


 これまで人間界に現れた悪魔は単独行動か、数十体程度の小規模でしか人間界に現れていない。大魔王ルシファーが本気で人間界に攻め込む気なら、もっと上手いやり方で仕掛けてくるはずだと零夜は考えていた。


「あっ! あそこに何かいる!」


 一番後ろを歩いていたミキが、壊れたビルの陰にいた一体の悪魔の魔力を感知した。



 次回 魔王バエル に続く

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