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魔法学校の大天使  作者: 霧野夜星
改訂版 一年生編
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第〇〇二話 日本のトップテン

「俺の名はゼロ、い、いや、天城(あまぎ)、零夜(れいや)……だったか」

「だったか?」

「えっ、えーと……」


 その天城零夜と名乗った青年の正体は、天界東方面軍司令官 大天使ゼロムエルだった。彼は目立たないように十六歳の人間の標準的な姿に化けている。ただ身長は標準より少し高く百七十五センチだった。これは元々の大天使ゼロムエルの身長がそのくらいなので、体を動かすのに違和感がないようにするためだった。


(くっ、容姿まで完全に変えて人間に化けたのに、危うく名前を言うところだった……)


 焦っている様子の零夜を見て、彼女は微笑みながら話しかける。


「ふふふ、天城零夜君。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。もうすぐ入学式が始まるので、新入生はあちらにある体育館へ向かってください」


 理沙は体育館のある方向を手で示しながら続けて話す。


「入学式が終わったら、校舎の玄関の掲示板にクラス分け表が貼ってあるので、自分の名前を探して自分の教室に向かってください」

(この人間は上級生か? 上級生と先生には敬語を使うんだったな)

「わかりやすい説明、感謝します」


 零夜は理沙に礼を言うと体育館へ向かって歩き出す。一方、理沙は彼の後ろ姿の腰に携えている剣を見ている。


(彼の剣、たぶん魔法武器ね。それも相当な魔力を秘めているみたい)


 理沙は零夜の剣から、今まで感じたことのない強い魔力を感じ取っていた。


(あんな魔法剣は見たことがないし、どこかの会社が開発したプロトタイプか、それともどこかの遺跡で出土した物か……)


 次元の裂け目が現われてから十年がたつが、日本の銃刀法が改正され人々は武器を持つことが許されるようになった。もちろん対悪魔用に認められた物であって、決して人に向かって使うことが許されている訳ではない。

 それと一般人の銃の所持までは認められてはいない。引き金を引ける者は誰でも大量殺戮が可能な銃を所持可能にすべきかどうか、まだ国会で議論が続いている。


(ふふふ、今年の一年生は上級魔法の使い手もいるみたいだし、中々期待できそうね)


 零夜が体育館に向かったのを見届けると、理沙はまた新入生の案内に戻った。



 その後、体育館で入学式が始まり、校長先生の話や新入生の挨拶など零夜にとってつまらない時間が過ぎ入学式が終わる。その後、零夜は理沙に言われた通り、自分のクラスを確認して教室の前まで来た。


「一年一組 出席番号一番とは、縁起がいいのか」


 そうつぶやきながら零夜は自分の教室に入る。すると黒板に席順の張り紙が貼ってあった。


「窓側の一番前か」


 零夜は自分の席の場所まで来て、机と椅子をじっと見る。そられは普通の高校と同じ机と椅子だった。


(椅子にはクッションもないし机は狭いし、これが人間の学校なのか)


 零夜がため息をつきながら席に座ろうとすると、彼の後ろの席に座っていた男子生徒が話しかけてくる。


「おお、凄そうな剣、持ってるな」

(むっ、確か同じ学年の生徒とは、ため口で話すんだったな)

「俺の剣が気になるか?」

「まあな、そんな凄い剣を持ってるということは、戦士タイプか?」

(戦士タイプ? 物理戦闘が得意かという意味かな)

「俺は魔法も得意だが」

「おっ、珍しいな。魔法戦士タイプとは」


 そう話しかけてきた男子生徒の机には、日本刀が立てかけられていた。


「そう言えば自己紹介してなかったな。俺は伊賀崎英司(いがさきえいじ)、この刀『月夜桜』で戦う戦士タイプだ」

「俺は天城零夜。この剣の名前は秘密だ。こいつの能力がバレてしまうんでな」

「そっか。それは残念。じゃあ次の話題。うちのクラスの担任、日本のトップテンのひとりって知ってるか?」

「いや、初耳だ。トップテンか。それは会うのが楽しみだな」

(人間のトップクラスが、どのくらいの力を持っているのかを知るいい機会だ)


 零夜は、現在の人間達の戦闘能力を自分の目で確認してみたいと前から思っていた。


「あと有名人といえばアイツだ」


 英司はそう言うと、教室の真ん中あたりの席に座ってる男子生徒の方を見る。その男子生徒の周りに数人の生徒が集まって話している。


「北城君って上級魔法が使えるって聞いたんだけど本当?」

「まあね」

「マジかよ! 入学の時点で上級魔法が使えるなんて、今まで聞いたことないぞ」

「今年の一年の最強は、北城君で決まりだね」

「ふふふ、僕はこの程度では満足してないよ。すぐに全校生徒のトップになる予定だからね」


 生徒達のそんな会話が聞こえてくる。


「アイツは北城遼太郎(ほくじょうりょうたろう)、入学試験でトップの成績だったらしいぜ。さっきの入学式でも新入生の挨拶をしてただろ」

「うーん。奴にはあまり興味がないな」


 零夜と英司がそんな会話をしていると、黒色の生地に赤いラインの入った魔法学校教師用の制服を着た女性が教室に入ってきた。彼女は腰に強そうな剣を携えている。


「よーし、みんな席に着け」


 席に着いていなかった生徒は素直にそれに従う。


「私がこのクラスの担任の佐倉だ。これから一年間、よろしく!」


 そう軽い口調で話し始めた女性は、日本のトップテンのひとり、佐倉凛(さくらりん)。年齢は三十、髪が長く美しい顔立ちの女性で親しみやすい感じの先生だった。


(ふむ、彼女が人間のトップクラス……)


 零夜は佐倉先生が持つ魔力を瞬時に感じ取る。


(大体、今の俺の十分の一くらいの魔力か。だが彼女には本人でも気づいていない眠ってる力があるとみるが……)


 零夜の魔力調査に気付かずに、佐倉先生は生徒達に話し続ける。


「今日は授業はない。これで下校となるんだが、帰る前にお前達に模擬戦闘場の説明をしておこう。これから全員、校庭にある模擬戦闘場に行ってもらう」


 教室でのそのやり取りから約五分後、佐倉先生と一年一組の生徒達は、校庭にある模擬戦闘場の近くに集まった。


「よーし! みんなそろったな。そうだな……何から説明するか」


 佐倉先生は、持ってきた何かの本を開いて左手で持って読んでいる。生徒達はその本で何か説明をするのかと聞く体勢で待っている。すると佐倉先生は、生徒達に気付かれないように右手を背後にまわして、手のひらから紫色の魔力を放出してまとわせ、その右手を突然、空に向かって掲げて魔法を発動する。


雷撃弾ザンダルト!」



 次回 模擬戦闘場の戦い に続く

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