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00.使い魔の召喚

更新頻度はわかりませんがちみちみと書いていこうと思います

小さい頃から魔法陣を発動させるたびにお母さんに言われ続けたことがある。その時だけはあたしのことをカナリアなんて呼ぶ。いつもはカナって言うのに。


『カナリア、あなたは私の自慢の娘だからね。ずっと、これからも』


あの頃は、この言葉が何を意味するのかまったくわからなかったけれど、高等科に進学した今。あたし、カナリア・シントールの背中を押す力になっていることがその意味をはっきりとしたものにさせていた。


まさか、落ちこぼれと言われている最下位クラスに配属されるなんて思ってもいなかったんだ。


――――――――6年前、あたしが9歳のとき


魔力があるものは絶対入学が規則のディーライン国立魔法学校。魔力を持っているあたしは来年、初等科へ入学する予定。庶民も貴族も関係なくその学校は受け入れ、生徒に対する対応も同じらしい。階級で言うと庶民と呼ばれる位置にいるあたしはそんな前情報があっても本当かと疑うくらい、学校の様子は外に漏れていない。


「カナ―! 今日は何する?」

「おはよう、ティナはいつも元気だね」


幼馴染のティファナ・オルトレイがいつものようにあたしの家に遊びに来る。この子も一緒に来年学校へ入学する。治癒魔法が得意であたしがけがをした時に泣きながらけがを治してくれる優しい親友。


「今日はお母さんから手伝いを頼まれているんだけど、ティナも見てく?」

「見る!」

「準備に時間かかるからって言って昨日からあの部屋に引きこもって、何かしてるみたいなんだ」


あたしのお母さんは王国の魔導師で主に魔法陣の研究を行っているらしい。でも魔力量が少ないから、発動する数に制限があって、魔力量の多いあたしが代わりに発動させる役をしている。

生まれたときから魔力量が多かったためか、さっそくお母さんに魔法陣の発動を仕込まれて、今ではしょっちゅう研究に付き合わされる。あたしたちが向かったのは、小さな家の中の一部屋だけ魔法陣用の何も置かれていない部屋で、そこがお母さんの趣味部屋。王宮の研究棟でも十分してるはずなのに、休みの日も家で同じようなことをしてる。こき使われるけど勉強になるから嫌がるよりも進んで手伝うのがあたしの日常である。


「お母さーん、今日は何の魔法陣?」

「あっ、ティナちゃんいらっしゃい。カナ、今日はなんと! 召喚の魔法陣よ。もう来年には学院に入るでしょ? だから、カナのために使い魔を召喚してもらおうと思うの。この前使い魔の話はしたでしょう」

「したけど、使い魔!?」

「すごいねカナ、中等科でやる内容じゃなかった?」


ティナはすごいって感動してるけど、違反とかじゃないのって言ったら。問題ないって返ってきた。二人が離れたのを確認して、魔法陣の淵に手を当てる。いつもと同じように魔力を流し込んで術式を理解し、魔法陣を発動させる。陣を描く白色の線があたしの魔力で光を帯びて一瞬のまばゆい光が部屋を埋め尽くした。光が弱まったとき、陣の中央に一匹の獣が居座っていた。


<呼んだのは、主か?>

「成功! さっすが私の娘」

「は、はい。あたしが呼び・・・ました」


この歳で落ち着いてると近所で評判らしいあたしだけど、さすがにこれを見て冷静を保てないわ。

喜んでいるお母さんが視界の隅に見える。それよりもティナが無言で召喚された獣をみていて、その顔から驚いているのがわかる。豹のような姿で大きな牙があり、真っ黒な毛をもち、9歳のあたしから見ればちょっと見上げるくらいの大きい召喚獣。正直に言った言葉への返事が来なくて、見つめあうこと数十秒・・・。


<いい目をしている、それにその魔力。我は主を契約者と認めよう。陣をやる、どこか差し出せ>

「・・・じゃあ、ここで」

<――――契約完了>


右手を差し出したら、手の甲に前足を置かれて離れた時には黒い契約陣が刻まれていた。床で淡く光っていた魔法陣の光が薄れてただの白い線に戻る。その中央には満足げな顔をした黒豹がお座りして尻尾を揺らしているし、終わったとたんにお母さんとティナがやってきて、右手の甲をガン見してるし。


「カナならできると思ったのよー、この使い魔は炎属ね。いい子を召喚したわ」

「お母さん、どうしたらいいの。こんな大きな使い魔」

「使い魔は見えないけど主の近くにいつもいて、実体化させるのに魔力で召喚するって話はしたでしょう。今のこの子はすでに召喚されている状態、この子が実体化を解かない限りそのままね」

「へー、そうなんだ」

「かっこいいねぇ、真っ黒で」

「ティナ、そんなに近づくと咬まれるよ」


あたしの言葉にこっちを振り返ったティナはちょっとだけって顔をしてた。仕方ないから使い魔に寄って触れる。


「ごめん、姿を消す前に触らせて。ティナも」

<いいだろう>

「やった、じゃあ、失礼します」


柔らかい毛をなでたり、顔を埋めたり、二人でもふもふを長い間堪能した。使い魔もまんざらではないような顔をしていたので文句はないと思う。呼びやすい名前でも付けようかと考えて、そろそろかという時に呼んでみる。


「コラン。名前を考えてみたんだけど、どうかな」

<コランか・・・うむ>

「あら、いいプレゼントね」


その後、ティナやコランと一緒に使い魔の常識とかをあっさりお母さんから聞いた。コランが姿を消す前にお母さんに何か言って消えた。お母さんに聞いても、答えてくれなかった。


――――――


それからも変わらず、お母さん手伝いをしたり、ティナと遊んだり、たまにコランを呼び出してお昼寝したり自由に過ごした。


年が明けてひと月ほど過ぎ、10歳の誕生日が来た。そこで、両親らしいプレゼントをもらった。


「あなたのために作ったの。今度試してみてね」

「カナは来年から全寮制の学校だからな、僕からのプレゼントはこれだよ」


お母さんからは魔法陣が刻まれた腕輪。お父さんからは通信用の魔法道具。声が聞きたくなったら電話しろとのこと。嬉しくて二人に抱き着いたら思いっきり締め返された。


「ありがとう! 大事にするね」

「あと、コランを呼んでくれる? ついにできたのよ」

「今度は何をつくったんだ」


お父さんが尋ねても見てのお楽しみといって答えない。仕方なく、コランを召喚する。


<できたんだな>

「えぇ、満足のいくできだわ」


二人にしかわからない会話がなされ、お母さんがコランの首に何かをつけた。すると、コランの体が見る見るうちに小さくなり、ただの黒猫になっていた。


「え? お母さん何したの!?」

「コランに頼まれてね、ずっとカナのそばにいられる姿になりたいって。つくってみたのよ、制御装置」


首に巻いてある首輪を指差して、実験成功したときの上機嫌でいる。つまり、


「ずっと、実体化していたかったの?」

<まぁ、あの姿では大きいから仕方なく消えてやったが、この姿ならばもう消える必要もあるまい>

「ふふふ、コランはカナのこと大好きだものね」

<・・・・・・ふんっ>


結局、それ以来猫姿のコランがあたしのそばをうろつくことになる。ティナに初めて見せた時はおもちゃにされていた。豹型に戻すには召喚すればいいだけで、猫にする時に首輪の魔法陣を発動させる必要があって、あたしにしかできない構造らしい。お母さんの研究に不可能はないんじゃないかと娘のあたしでも思ってしまう。


そんなこんなで魔法学院に入学するまでにいろんな知識をお母さんとお父さんに叩き込まれたあたしは、ティナと一緒にあの学院の門を潜った。


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