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悪の組織ってのは、世間一般ではどんなイメージなんだろうか。


1人の魔王みたいな絶対的悪を頭とした、ゲスの集まり?それとも頭のイカれた科学者の集まり?


まぁどんなイメージだろうと、悪の組織からすればどうでもいいことなんだろう。そんなこと気にするような奴が、悪の組織なんてもんに入るわけないしな。基本的に、自由に、好き勝手に、自分のやりたいことをやる、それが世間的にはよろしくない行為でも気にせずやっちゃう奴ら。ちなみに諦めはすこぶる悪い。それが1番無難な表現なんじゃないだろうか。


ついでに頭のネジも2、3本外れてるのが通常装備ってところか。


最近じゃあ悪の組織ってものにかっこよさと憧れを感じる奴もいるらしいが、こうやって考えてみればかっこよさの欠片もない。そもそも悪事に手を出してる時点でかっこよさも何もないけども。


てかそもそも、悪の組織って名称もなんかゆるゆるだよな。威厳とかあんまないよな。まぁ悪の組織なんてそんなもんだ。


何処かには真面目に世界征服狙ったり、世界滅亡狙ったり、歴史修正しようとげふんげふん。最後のはなしとして、それなりに真面目に、厳しく失敗には死をーとかやるとこあるかもしれんが、全部が全部そうというわけじゃない。


自由人の集まりなのだ。悪の組織って名称みたいに、ゆるゆるーなふわっふわな悪の組織だってある。


そう。


「お前さんはいつまで寝てるんだい!さっさと起きな!」


「……へーい。はよーざいまーす」


例えば朝の8時に寮母さんに叩き起こされる風景が見れるような、そんな悪の組織だってあるのだ。





テキトーに飯を済ませ、怖い寮母さんから任務を伝えられテキトーに返事を返し、寮を出た。外は快晴。雲1つ無く、少し離れた所に我が組織のエネルギー源たる火山が悠々と鎮座している。


近場に目をやればこれまた見慣れた光景。新人君達が登場の際のポーズと台詞を考え練習しているし、目に隈を作った技術者達がこれから作る装置の設計に熱い議論を交わしている。新人君達よ、君たちまだモブ扱いだからポーズとか披露する機会はないぞ。それと技術者達は、早く寝ろ。時間切り取り装置にオリハルコン使うとかどう足掻いても無理だから。落ち着け、寝ろ。


思うだけで何も言わない。当事者が楽しければそれで良いのだ。言っても無駄だしな。だから無言で彼らの横を通り抜ける。何人かは俺に気付いて挨拶してきたので、俺もテキトーに挨拶を返した。


テキトーに街をぶらつく。街は活気があっていつでも騒がしい。次回の作戦の為にヒーロー達向けの長い説明を練習する奴や、新しい道具の試し撃ち試し切り試し爆破等々道具の性能を確かめる奴、巻き込まれて悲鳴を上げてぶっ飛ぶ奴云々、静かになることはない。さすが悪の組織の街だ。


そんな街の様子を時に笑い、時にドン引きしながら徘徊してれば見知った顔を見つけた。いつも利用している喫茶店の外の席で、きっと珈琲だろう飲み物を飲みながら何かをテーブルに広げている。


特に用はなかったが邪魔することにした。いつものように勝って知ったると、知り合いの前の席に座る。知り合いは集中してたのか、俺が座ってそこで驚いたように顔を上げた。


「よーす」


「なんだトモか。びっくりした。声かけてから座ってよ」


「わりわり」


文句を言われるまでがいつもの流れ。テキトーに謝ればため息は吐かれるもそれ以上は続かない。だから俺は、さっそくと疑問を投げた。


「で、きぃ君何見てんの?」


「ん?次回の任務で使う機械の…うーんと、どうやったら目的の効果だせる機械を作れるかを考えてた」


途中の間は、馬鹿な俺への説明を考えてたんだろうな。んで諦めたんだろうな。毎度毎度ゴメンネ。


知り合い、きぃ君は悪の組織の科学者だ。物凄く頭が良くて、いつもとんでもない装置を作り出す。どんな突拍子もない装置でも生み出しちゃうスゲー奴。そういやこないだ空から餅を降らす装置作ってたな。


「へー。どんな装置?」


「次の任務まで内緒」


人差し指を口に当てて言われた。内緒かー、じゃあ我慢するしかないなー。でもきぃ君が酷く楽し気だから、またすっげー突拍子もないもの何だろうな。


店の人を呼びながら、楽しみにしとくわ、ときぃ君に返した。


「そういえば、トモ。今日任務は?」


店の人に、なんかとんでもなく長い名前の苺味の甘い飲み物を頼んだとき、ふと気付いたという様子できぃ君が聞いてきた。うへぇ、と俺の顔が歪む。それで何か察したんだろう。きぃ君は苦笑を浮かべて、サボってるの?と言った。


「サボってるの?って言われてもさー。隊長探せとか時間の無駄だし」


「あーまぁ隊長だしね…。そう簡単には見つからないよね」


「うん、まぁ、そー…だな」


はは、と乾いた笑みを溢す。きぃ君が同情したように俺を見ていた。


そんなときに俺が注文した飲み物がやって来る。疲れた心には甘いもんだ、と苺味のそれを口一杯ストローから吸い込んだ。舌先から苺の甘酸っぱさと生クリーム?とかの甘さが伝わって荒んだ心に染み渡る。あーうまうま。


そのままその飲み物を味わっていれば、そろそろ研究室行くから、ときぃ君が席を立つ。もう行くのかよ、という意味を込めてきぃ君を見上げれば、きぃ君は困ったように笑いながら締め切りが短くてと言った。なら仕方ないか。きぃ君の伝票をスルッと奪いながら、頑張れとだけ応援の言葉を投げる。きぃ君が戸惑うように俺と伝票を交互に見てたけど、俺がひらひらと手を振れば、今度一緒に夕飯食べよ奢るから、と言いながら去っていった。


ちぅー、と飲み物を吸う。空はまだまだ快晴。任務をこなすには時間がたっぷりある。


「でも探す気はさらさらないけどな」


飲み物を全部飲み終えて立ち上がる。きぃ君と俺の分と会計を済ませて店を出た。


周りを見れば、まだまだ騒がしい。至るところで騒動が起きている。


俺はにんまりと笑うと、また街をぶらつくことにした。


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