現代に残る正しき負の遺産
さあさあ、そこの現実には夢も希望もねえんだよ。と言いたげな鬱屈な表情で歩くやつらよ、寄っといで寄っといで!
確かに現実には夢も希望もねえよな、夢ってやつはあくまでも虚像でなくてはいけない。叶っちまえばそれは夢ではなく現実になっちまうからな。
けど、今宵は違う。
今宵だけは宵闇に紛れて夢と現実が混合しちまう。夢現とはまさにこの事さ。
気になるかい? ならもっと近くに寄ってきな。
白昼堂々と出来る話じゃあないからな。
おっと、安心しな。別に怪しい話じゃあねえからよ。いや、妖しい話ではあるけど。
よしよし、たくさん集まってきたな。それじゃあ話を始めよう。
あんたらさ、化物って信じるかい?
おいおいおいおい! ちょっと待てよ逃げるな逃げるな! まださわりしか話してねえだろ! ……あーあ、帰っちゃったよ。これから話が面白くなるっていうのによ。
まあいいや。残った好奇心旺盛なあんたらにだけ、続きを話すことにしよう。
化物っていうのはあれだよ。ゲームとか昔話に出てくる鬼とか妖怪とか、そういう類のやつ。
信じない?
あーそうだよな。それが普通だ。別におかしくない。
けど今日の夜、あんたらはそれを信じることになる。
普通じゃない、おかしな話に巻き込まれることになる。
今日の夜、またここに来な。
そうすればあんたらは目を開けたたまま夢を見ることができるぜ?
魍魎跋扈のサーカス、フリークショー。
実に奇っ怪で非現実的な、存在自体が曖昧模糊な奴らが織りなす、刺激的で幻想的で怪奇的な祭りが、あんたらを待ってるよ。




