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1-4 獣人の森

「獣人の森?」


 ってなんだろう。聞いたことあるようなないような・・・。

 どうやら昔の記憶と今の記憶が混同しているようだ。

 僕の反応がよくなかったのか、ルネは知らんの? とでも言いたそうな表情をしている。


「先生、人間の方には不帰の森とか、死の森とか言われてますよ」


「ああ、そうだったな」


 二人はそれで納得したようだが、こちらとしては後の二つも聞き覚えがない。

 そのうち思い出すのだろうか。

 不帰の森や死の森なんてたいそうな名前を付けられるような場所だから、僕は何かされるんだろうか。

 そう考えると怖くなってきた。


「僕、どうなるの?」


 今後の処遇次第では、隙を見て逃げ出さなければいけない。まだ生き残りたい気持ちがドクドクと湧き上がってくる。


「私たちが何か危害を加えることはありません。なにせ、病院ですから!」


「ああ、そいつの言った通り、ここに(・・)いるかぎりは大丈夫だろう。ただ、私たち以外の獣人は気をつけた方がいいぞ。取って食われるかもしれんしな。クククッ」


 笑いながらなんてことを言うんだこの熊は。

 とりあえずここは安全ということらしい。

 一応自分のことを助けてくれたらしいので、信頼してもいいだろう。


「しばらく、厄介になります」


「はい!」


「もちろんただ飯食わせるわけにはいかねえから、よくなったらこき使ってやるよ」


 こうして、僕はこの病院でお世話になることになった。

 最初の方こそ立ち上がることもままならなかったが、ルネが「体力つけたきゃ食え」と多過ぎるぐらいの食事と何かわからない薬でみるみる体調は良くなっていった。

 20日ほどで、ランディが作ってくれた歩行器があれば歩けるようになった。その20日で分かったことだが、ここには患者が僕しかいないらしい。そのことをルネやランディに聞いてみると、医者がいらないならそれに越したことはない。と言ってた。ここの人はだいぶ頑丈なのだろうか。左目は眼帯がされていた。許可がでるまで取ったらダメと言われたのでとらないことにする。

 

 30日経った。歩行器を外しても歩けるようになったが、ランディはまだまだ無理は禁物だというので杖を1本もらった。相も変わらず、ここの患者は僕だけだ。

 左目は少し痛むが、だいぶよくなった。いったい何をされたのだろうか。失明はしていないと思う。

 ルネに、ナイフのことについて聞いた。僕と一緒に回収したらしく、金庫にしまったらしい。金庫にしまうとけっこうな値打ちものだったのか。体力が平均的になったら返すという。

 ランディは最近外に行くことが多くなった。僕に使う薬草や食糧の買出しに行っているそうだ。患者もいないのにお金が入るのか疑問だったが、ここでは物々交換が主流だとルネが説明してくれた。ルネが作った薬を対価にほしいものをもらってくるそうだ。患者がいないのはそのせいに違いない。ルネは実はすごい人なのかもしれない。この前、裸でキセルをふかしてお酒を飲んでいたがきっとすごい人なのだ。その後ランディがキレて大変だった。


 40日経過した。足腰がしっかりしてきて、ランディのお許しも出たので杖を持たずに歩いている。ルネが次は上半身を鍛えると宣言した。命じられた腕立て伏せは半分までしか持ち上がらず、ショックを受けた。

 左目の痛みは完全になくなった。ルネにそのことを言うと、取らない方がいいと言われた。なぜだ。

 ルネが時々使っている紙について質問した。その紙には、あの牢屋で見たのと似たような模様が書いてあり、僕は少し後ずさりした。それ以降、ルネが僕の前でそれを出すことはなくなった。

 ランディが外出するというので、同行したいと申し出た。彼女はすごい剣幕で拒否をしたのでかなりショックを受けた。ルネはそれを見て笑っているばかりだった。

 夕方に帰って来たランディが申し訳なさそうに謝ってきた。そのときランディのうさ耳が僕の右目に直撃した。泣きそうだった。ルネは爆笑していた。


 50日目、やっと腕立て伏せが10回できるようになった。ルネが次は何をさせようか悩んでいる様子だったが、文字の勉強をしたいと申し出た。これ以上筋トレまがいのことをさせられるとマッチョになる。

 それを聞いたルネは、考えさせてくれ。と自室に戻っていった。今日は何もやることがないので自分の泊まらせてもらっている部屋にある窓の外に向かってぼーっとしていた。最近気づいたのだが、ここからちらほらと建物が見える。いつか外出許可がでたら行ってみたいものだ。視界の片隅に、ランディが映った。建物のほうに歩いていくので買い物だろう。しかし、今日はいつもと違った。


「おいみんな、こんなところに兎耳(ラビィ)族がいやがるぞ!」

「ほんとだ! こんなところで何してやがる劣化族め!」

「こいつ、薬なんてもってるぞ! 俺たちがもらってやろうぜ!」

「ギャハハハ! それいいな!」


 現れたのは、ルネと同じような熊の耳を頭部にもった少年たちだった。どうやらここらへんの集落の子供らしい。まぁいつものランディならすごい剣幕でまくしたてるんじゃないだろうかと少し期待して見ていた。

 しかし、ランディは行動を起こさない。遠くてわからないが、震えているようにも見える。いつもと違う行動に疑問をもつが、このままでは薬が取られてランディに危害が加わるかもしれない。でも、じぶんがいってもどうにかなることなのか。ルネに知らせた方がいいのでは?

 そんな思考をしている間に、ランディは突き飛ばされてしまった。僕はいてもたってもいられず、必要なくなってからは部屋のオブジェとなっていた杖を武器としてもち、窓から外に飛び出した。1階でも若干足のしびれはあったが、5階よりはましだ。自分が出せる最高速度で倒れたランディのもとに向かう。ほかの人からみたら早歩きぐらいの速度だっただろう。


 まだうずくまっているランディに声をかけた。


「ランディ大丈夫?」


 その声に反応したのはランディだけではなかった。彼女はこちらの存在を確認すると大きく目を開き、なぜここにいるの? と口を動かした。もっとも、その声は他のやつらの怒号によって遮られたが。


「誰だてめぇ!」

「兄ちゃんあいつ耳ないよ!」

「マジだ! あいつ人族じゃねえか!?」

「なんでここに!?」

「とにかく父ちゃんに報告だ!」


 そういうと、彼らは建物の方に走って行った。薬置いてけよ。

 追いかけて取り返そうと思ったが、腕をつかまれてしまった。つかんだ本人はまだ顔が青く、震えていた。


「ルネに、言わなくちゃ」


 それもそうだ。盗難にあったんだからまずは報告しないと。しかし、忘れていたがランディも自分と同じような年齢の女の子なのだ。こうなる前に来ればよかったと少し後悔した。

 ランディは立とうとするが、力が入らないみたいだ。僕もさすがに人を背負えるほど鍛えているわけではないが、杖もあるからいけるだろうか。


「おいでランディ」

「ソエル?」


 彼女は困惑した。少し前まで骨と皮しかないような子供相手に支えられるのだろうかと。しかしこのままでは腰が抜けてしまった自分が移動できないのも分かるので、その好意にあまえることにした。

 ランディは、今の自分では軽くはなかったが、杖を駆使してなんとか入口まで来た。そして看板を見て足を止めた。


「どうしたのソエル?」


 彼女は背中で不思議そうにしているが、僕の思考はその看板にあるマークによって停止した。

 看板に文字はなく、そのマークがでかでかと書かれていた。


 とても大きな・・・陣が。


陣は、魔法陣のことと考えていただければわかりやすいかとおもいます。

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