1-1 動転
※何かおかしいかもしれないです
子供の時に、死んだらどこに行くのか。という問いをしたことがある。
今になって考えたら生きている人間に聞いても分かるわけがないのだが、答えがないということが無性に怖かった。
大抵の子は天国に行くんだよ。とか、悪いことをしたら地獄に落とされちゃうんだよ。とか言えば納得するんだろう。
そこから天国や地獄を話題の中心に持っていく。少なくとも、僕の親はそうだった。
さて、なぜこんなことを考えている理由だが、それはを説明するには現状を話さなければならない。
僕は今、
「秋野さん、4番の部屋までお越しください」
・・・・・。
とりあえず僕は今、病院にいる。しかもケガの痕跡がひとつもないし、ちゃんと自分の両足で立っている。異常もない。
周りの人は高齢の方が多い。まぁ病院だから普通なのかもしれない。4番の部屋に向かうとしようか。
途中、1番から3番の部屋を見たが、普通の部屋みたいだ。曇りガラスのため詳しくは見えなかったが。
順序的に次が4番だろう。と思ったら次は5番だった。どういうことだろうか? 病院だから不吉な4番は使っていないのかもしれない。
4番は俺の聞き間違えだったのだろう。来た道を戻ろうと回れ右をする。
「秋野さん4番はこっちですよ!」
声をかけられたのでそちらを見ると、同じ通路の最奥に看護婦さんらしき影が見える。
どうやら奥まったところにあるらしい。僕はそこで何をされるのだろうか。
ほかの部屋の扉がなくなってから10メートル程歩くと曲がり角についた。どうやらこの先のようだ。
扉を見た瞬間、とてつもなく帰りたくなった。こんなに帰りたくなったのは初めてかもしれない。
一言でいうと、悪趣味。何のかは分からないが、骨で型どられた扉だ。しかも、赤や黒といったほんとうに病院なのかと突っ込みを入れたくなる色が使われている。
いや、もしかしたらここは病院ではないのかもしれない。俺はたしかに、ぐちゃっとトマトのようにつぶれたはずだ。じゃあここは・・・
ここで、僕はミスを犯した。
なぜこんな扉の前で足を止めてしまったのか。普通に逃げればよかったのに。
目の前の扉がひとりでに開いて、何者かの手に胸倉をつかまれ中に引きづり込まれてしまった。
現状が理解できない僕はソファらしきものに投げ捨てられ、「うきゅっ」と情けない声を出してソファにワンバウンドし、そのまま石っぽい床に体を打ち付けた。痛い。
抗議のつもりで投げた奴がいる方向を睨みつける。が、そこにはすでにおらず、高そうな椅子に座って僕をを見下ろしていた。
正確に言うと僕等だろうか。別のソファに座っていたり、壁に寄りかかっていたり、腕立て伏せをしている人もいた。
「ようやく4人そろったね! 今から君たちがここに来てもらった理由を説明するよ。質問がある人は話を最後まで聞いた後に挙手してね」
そう言い切った後に微笑む彼女は僕と同じような身長の女性だった。
僕は頷くが、他の面々は反応が薄い。寄りかかり男はつまさきをトントントンとせわしなく上下している。ソファ男は女性の方を見ているだけ。
筋トレマンはヒンズースクワットをしている。話聞けよ。
「まず君たちの共通点から話そうか。分かっているかもしれないけど、君たちは死んだんだ」
その言葉を聞き、過剰な反応を示した者がいた。筋トレマンも過剰に動いているが、別の行動をとったのは寄りかかり男だ。
「俺は死んでねぇ!! 騙されたんだ!! 俺を元の」
パァン!!
風船が割れたような音とともに寄りかかり男の言葉は途中で途切れた。数秒遅れで体に何かがあたる感触があった。そのまま視線を下げると、赤黒いモノが服を汚していた。
まだ、この制服着てたんだ、とさして重要でもないことを考え、たった今起きた現象をなかったことのようにふるまう。ダメだ、手が震える。
寄りかかり男の頭がないことは触れてはいけない。
「質問は話が終わってからね」
最後に八分音符がつきそうな明るい声でそう言った。流石に筋トレマンやソファ男も顔を青くしている。
「死んだ君たちがここにいる理由は、んー・・・、いろいろあるけど私の実験台ってところだよ」
先ほどの頭部爆発事件を見た後だと、実験台=解剖の方程式ができてしまうのはしかたがない。はず。
でも彼女は僕たちが死んでいると言っていたし、死体を解剖するのは普通なのか・・・?
「君たち3人には、とある世界に転生してもらう。その世界で・・・・・・した時点で、実験台としての役割は終わりだよ」
やっぱり死んでるからこそ実験できる薬品があるのかもしれないし、まさか骨を取り出して扉に追加したりするんじゃ・・・ん?
今重要なことを聞きのがした気がする。とても怖いが、最後に質問するしかないようだ。
「注意事項としてひとつ。記憶は残すけど、文明が変わるレベルの発明等は禁止だよ。例えるなら蒸気機関とか、銃器とかかな。暮らしが豊かになる程度なら干渉しないから好きにしなよ」
案外自由なんだな~と思う。てっきりがちがちに行動制限されるのかと思っていたのが。
彼女は机の引き出しから4錠の薬を出した。
「これには、人生が入っている。生かすも殺すも君たち次第だよ」
選びなよ。
見た目は変わらない錠剤を筋トレマン、ソファ男と順番に選ぶ。残ったのは真ん中の二つだ。
どれを選んでも結果は分からないのだからと左の薬に手を伸ばす。
薬に触れようとしたとき、彼女の口角が大きく上がった。悪寒を感じ、慌てて右の薬をつかんで口に入れる。
すると、意識が急に遠のいた。まるで体から引きはがされたように、僕は意識を手放した。