表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ありえないモノ

作者: 悠久

 東京から遠く離れたところにある地方都市。

 そこについて、奇妙な噂が流れている。

 なんでも、街のある一帯に行くと、ありえないモノを見ることができるらしい。

 現実的な話ではない。

 俺は、自分の目で確かめてやろうと、わざわざ噂の地方都市へと電車に揺られながらやって来た。

 目に入る情報では、閑散とした印象を受ける。道行く人も若者がかなり少ない。

 恐らく、過疎化しているのだろう。

 シャッターで閉められた店が立ち並んでいるアーケードは、人工が減少している何よりの証拠だ。

 俺はシャッター街と化したアーケードを蒸し暑さに耐えながら歩く。

 駅側の入り口から入って、七つの店を通り過ぎたところに、裏道があるらしい。俺は丁度七つ目の店に差し掛かったところで、足を止めた。

 見れば、分かりづらいが確かに裏道がある。

「ここか……」

 裏道に入り、奥へと向かう。

 奥に進むにつれて、人工の光が届かなくなり、暗く、暗くなっていく。

 三十分ほど歩いたころ、周囲は闇で覆われ、自分がどこにいるのかもわからなくなってしまった。

 噂では、このあたりで何かを見たらしいが……。

 立ち止まり、壁に背を預けようとして――

 転んだ。

「え――?」

 狭い裏道なのだから、すぐ近くに壁があったはずだ。

 だが、現実として壁が無かった。

 一体どうなっている……!?

 混乱と焦燥に身を焼かれそうな感覚を覚えながら、とにかく来た道を戻ろうと考えて走り出した。だが、いくら走ってもアーケードどころか光すら見えてこない。

「何なんだよこれは!?」

 思わず叫んでしまう。

 闇が俺をすっぽり包み込んで離さない。

 諦めて足を止めた瞬間、闇が一転して俺は光に包まれた。

 だがそれは数秒のことで、すぐに闇に戻ってしまう。

 ここにきてようやく、俺は携帯電話の存在を思い出した。ポケットから携帯を取り出し、液晶画面の光で周囲を照らす。

 直後、俺は狭い裏道に投げ出された。

「……は、はは……何だったんだ……」

 安堵した俺は何気なく携帯の画面へと視線をうつす。

 いつの間にかカメラ機能が起動していた。おかしいと思いながら、待ち受け画面に戻そうとして、撮った覚えのない写真が保存待ちの状態だったことに気付いた。

「……なんだよ、これ」

 写っていたのは、無数の腕だ。

 気味が悪い。保存など絶対にするものか。

「あ、あれ? 消えない……」

 キャンセルを押しても反応せず、写真の中に写るモノが変わった。

 目だ。

 画面を埋め尽くすほどの目が、闇の中を走る俺をジッと見つめている。

 ――ありえない。

 この時点で、携帯はポケットの中にあった。暗闇の中にいたことを考えると、第三者がこっそり俺の携帯を使うことは困難だ。

 それに、写真は俺の正面から撮られている。誰かがいたのなら、俺と接触していた可能性が高い。

 だが、あの場には俺しかいなかったはずだ。

 ……もう、わけがわからない。

 ありえないモノを見るとは、こういうことだったのか。

 俺は携帯の画面から目を離して、裏道を出ることにした。

 アーケードはもうすぐそこだ。こんなことはもう忘れてしまいたい。

 そして、俺は非日常からの帰還を果たし――

「コ………い……ぉ」

「……え?」

 なんだ? この、背後から聞こえる声は、一体なんだ?

 恐る恐る振り返り、

「うわあああああああああああああああああ!?」

 そこには、腹部からぐちゃぐちゃの内臓を垂れ流す男が、手招きしながら立っていた。

 それからは記憶が飛んでいる。

 覚えているのは、ひたすら走り続けたことと。

『コッチ来いよぉ……』

 と幾人もの人間の声を同時に聞いたような声で、俺を呼んでいたことだけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ