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蒼穹の狭間で  作者: 藍原ソラ
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4.真実を知るもの(4)

 眩い光に、反射的に閉じていた瞳を開いて。黒李は一変した状況に瞳を瞬かせた。

「……光鈴?」

 目の前に倒れていたはずの光鈴の生まれ変わりの姿が、光と共に消えていた。

「……どこに?」

 黒李は瞳を閉じて精神を集中させた。光鈴に語ったとおり、強い光の力を捉えることは、闇の眷属にとっては造作もないこと、のはすだった。

 だが。

「分からんな……」

 閉じていた目を開いて眉をしかめ、首を横に振る。

 力が相当弱っているのか、それとも別の要因があるのかは分からないが、先程まで強く感じていた光鈴の気配を全く感じない。

 金色の目を細めて、黒李は足元に倒れ気を失っている煌輝の生まれ変わりと、木の幹に身体を預けたままの巫女を見やった。注意を払って見ることで、光鈴が消えた以外の変化にも気付いた黒李だったが、特に何も口にすることもなく、考え込む。

 ここで、この二人を殺すことは簡単だ。――けれど。

 黒李は小さく一つ頷くと、その場で踵を返した。倒れた二人は、そのままに。


* * *


「……う」

 小さく呻いて、慧は目をうっすらと開いた。ぼんやりと霞がかった視界に広がるのは、草の生い茂った地面のみ。自分が地面に倒れているのだと気付いた瞬間、脳裏に倒れた少女の姿が過ぎった。

「雅!?」

 叫んで上半身を起こして、そうして気付く。黒李の攻撃を受けて重傷を負っていたはずの自分の身体に、傷ひとつないことに。あれだけの攻撃を受けたことがまるで嘘のように、傷が完治していた。ぼろぼろになった服や地面に染みた血溜りの痕がなければ、黒李が襲ってきたことすら夢のようだ。

「……え?」

 自分の手のひらを呆然と見下ろして数度瞬いたあとに周りを見回すが、雅の姿も黒李の姿もなかった。この場にいるのは自分と、木の幹に寄りかかって気を失ったままの春蘭だけだ。

「……どういうことだ?」

 ぽそりと疑問を口にしてみても、もちろん答えなどあるはずがない。慧は首を傾げつつ、立ち上がる。春蘭の元に歩み寄りながら、先程会った出来事を思い出そうとした。

 だが、反射的に防御魔法を唱えてそれが破られてから、記憶が朧気だ。何とか攻撃に耐えて倒れてからのことは、特に。

 ただ、その中でもはっきりと覚えているのは、やはり全身に傷を負い倒れた雅の姿だ。それを見た瞬間、何とか彼女だけはと思って――。

「……どうしたんだっけな、俺……」

 そこから先はさっぱりだ。見事に記憶が欠落していることを考えると、その辺りで意識を失ったらしい。

 気を失った春蘭の横に、膝をつく。彼女の傷もまた、完治しているようだった。

「おい……春蘭、しっかりしろ。春蘭!」

 肩に手を置いて軽く揺らせば、春蘭の瞼がふるりと震えた。

「……う、ん……。けい、くん……?」

 どこか呆然とした様子で慧の名を呼んだ春蘭は、次の瞬間に覚醒したようだった。かっと目を見開き、周囲を見回す。

「……っみ、雅ちゃん! 雅ちゃんは無事ですか!?」

 掴みかかるような勢いで尋ねてくる春蘭に、慧は首を横に振る。

「俺もさっき気付いたばかりだ。雅の姿も……黒李の姿もない」

「そ、んな……雅ちゃんは……」

 最悪を想像したのか、春蘭の顔が一気に青ざめる。だが、慧は再び首を横に振った。

 確かな根拠など、ない。だが妙な確信があった。

「大丈夫だ、雅は。……生きてるよ」

 強いその言葉に、春蘭はきょとんと慧を見返す。

「だから……俺達は目的地を目指そう」

「……晄潤、さまのところ?」

 まだ不安げな春蘭に、慧はこくりと頷いた。

「行く場所は決めてあったんだ。そこで会えるかもしれない、だろう?」

 その言葉を噛み締めるように、春蘭は目を閉じて頷いた。

「……そう、ですね。……でも、黒李のことは……?」

 その問いには、慧も表情を曇らせるしかない。

「それは、分からないけど……現状、俺達じゃ歯が立たないしな。打つ手なしだ……」

「私……悔しいです。強く、なりたい……」

 静かに、噛み締めるように呟く春蘭に頷き返して、慧は右手を強く握り締める。その思いは、慧も同じだ。慧は顔を上げた。その視線の先には、命の山がある。

「……行くか。雅を迎えに行かなきゃな」

 その言葉に、春蘭は神妙な顔で頷いたのだった。

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