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~夢旅 優の異世界旅行記~  作者: 神寺 柚子陽
第1章 始まりとプロローグ
6/31

寄り道しながら【紅月乃館】へ


 ここは【月の国】月夜国の本土である【月乃島】の北東にある森の中。


 ユウが落ちて(トリップして)来たのは、この森の奥の少し開けた場所にある【蒼空乃館】(天津空の家)と【命の泉】という少し大きな泉の傍である。

 そしてそこからユウたちはこの北東の森(仮)に入り、町の中央辺りにある城(【紅月乃館】)を目指して、歩き続けているのであった。



『なぁ、ソラ、クロネさん。一体、何時まで歩けばいいんだ?

 行けども行けども森の中の自然に出来た緑のトンネルの道の中。

 もう随分歩いたと思うんだけどまだ森を抜けられないの?』


若干歩き疲れた様子のユウが、前を行くソラとクロネの二人に言う。


そう。ユウの言う通り、今三人はソラの家を出てから、かれこれ二~三十分程自分たちの身長の何倍も背のたか~~~~~い木々と竹林で出来た緑のトンネルのなかを、正確にはその中にある少し大きな道をひたすら歩いていたのだ。



「くすくすくすっ。心配しなくても多分もうすぐ森を抜けるよ。」


「多分、だけどな。この森は気分によって長さが変わるからさ。」


ソラは上品に口に手を当てて笑って言い、

クロネは頭の後ろで腕を組んで辺りを見渡しながら言った。


『何それ!?誰の!?何の気分!?』


「森。」


「またはそこに生えてる木々。」


「またはこの森に住む精霊とか、偶々そこを通っている通行人などとか?」


「要するに誰かの気分だよ。」


『・・・ここ、精霊いんの?』


「いるよぉ。世界の不思議を寄せ集めたような国。それがここ、【月の国】月夜国だからね。」


「そうそう。それぐらいで驚いてたら、身がもたないぜ!」


『へぇ~~~(・・・俺、身が持つ自信がない・・・。)』


「つかさ、ソラは呼び捨てなのに、ユウは何でぼくのこと、『クロネさん』って“さん”付けな訳?」


「そういえばそうだな。なんで?」


『え?な、何故と言われてもなぁ・・・。う~~~ん。・・・なんとなく?雰囲気?的なモノで?』


「ハァっ!?意味わかんね。」


「ぷっ、くくくくっ。ふはははははっ。た、多分、何かクロネがこ、くっ、ぷふふふっ、怖かったから、じゃね?くっふふっふふっ、・・・雰囲気的に。くっふふふ・・・や、やべ、なんかつぼった、あはははははははは・・・・・ッぐほっ」


「うるせぇ。いつまでも笑ってんじゃねェよ。」


変なツボにハマって体をくの字に追って歩きながら笑い続けるソラに、

クロネが見事な蹴りを腹に入れて少し黙らせた。


『だ、大丈夫か!?ソラ?』


「平気。平気。こいつこれでも一応将軍。体は丈夫に出来てる(・・・(はず))。それにすぐ起きる。」


ユウが心配してソラに近寄るが、クロネは(てのひら)をヒラヒラと振ってそれを否定し、無責任なことを言う。


「~~っ、だからって蹴り入れてくんな!!当たり所が悪かったら死ぬような威力のけりを!!つか、俺じゃなかったら骨数本逝った上に内臓破裂すっぞ!!コラッ!!」


「な。言った通だろ?」


怒ったソラを無視してニヒルに笑いながらクロネは言い、その言葉にユウは苦笑しながら同意する。


無視(むし)かっっ、コラーーー!!」


「うるさい。」


「あ()でっ!」


クロネはソラに頭にチョップを食らわし、またもや黙らせる。


「話を戻そう。ソラの言う通り、・・・ぼくって怖い?」


『え?さ、さぁ』


「ふ~ん。そう。わかった。・・・おい、ソラ。お前はなんでぼくが怖いっていった?」


「え?だってクロネ=クロナ、仕事中はいつも眠たげな目がきっちり開いて、タレ目が釣り目になるし、性格変わるし~、他にも理由があるっちゃあるけど、だからなんとなく?そうかなぁ~と。」


 ソラは頭を押さて痛がりながら、心に思い浮かんだことを何も考えずにそのまま言った。


「ほ~。お前はいつもそんなことを考えていたのか。ふ~ん。成る程ねぇ。・・・まあ良い。これだけ長々と話したが、ぼくが言いたかったのは僕もソラみたいに呼び捨てでいいという事だ。あと敬語も要らねぇ。そんなもの邪魔なだけだ。わかったな?」


『あっ、じゃあ、そうさせてもらいま「(ギロッ)」そっ、そうさせてもらうよ。』


ユウが無意識に敬語で答えようとした途端、クロネが睨んできてユウは慌てて言い直す。


「ああ、それでいい。」


『(おっかねぇ~)』


 クロネは満足げに鷹揚に頷き、ユウは彼?に恐怖した。



そうこうするうちに、森の出口が見えてきた。


「お、ホントだ~」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・()の文に返事を返すなよ。


「・・・誰に同意してんだァ?」


『そうだよ。何がホントなの?ソラ?』


「ん~?森の出口が見えてきたなぁ~、と。」


『お!やっとか。』


「今回は時間的には三十分~四十分ってとこかァ?」


「ほらほら!さっさと行こうよ!」


「早く出よう」


『ちょ、待てって!置いていくなよ!!』


ソラとクロネの二人は走りだし、ユウはそれを追い駆ける。




―――*―――*―――*―――




そうして三人は北東の森をやっと抜けた。

そして森を抜けた先には、(奇妙な)大きな町と澄み渡った青い空が眼前に広がっていた。



『わぁ~!……すげ~…』


ユウが感動したようにそういうと、月猫二人はそろって笑みを漏らし、ユウを歓迎した。


「「ようこそ。月の国、月夜国の首島町、通称【(つき)(ねこ)の街】へ」」





三人の目の前に広がっていたのはとっても活気のある大きな街だった。

人も建物も沢山。森の出口から見える建物はどれもこれも屋根が低く、どうやら一階建てが多いようだ。遠くに市場があるのだろうか。商人達の客を呼ぶ声が微かにここまで聞こえてくる。

そして街をよく見てみると、建物の形が丸だったり、四角だったり、木造だったり、白壁だったり、一見ゴチャゴチャして見えるようなのに、どこか統一感がある。

成る程。猫の街と言われて妙に納得するような不思議で奇妙な街並みだった。

少し遠くの高台?に紅くて大きい建物も見える。


前を見てみると、今三人が居る森の出入り口から真っ直ぐに、石畳の大通りが走っていた。


ユウは少しの間、物珍しそうに街を眺めている。


「くすくすっ。そんなにこの街が面白い?それとも珍しい?」


「いつまで眺めてんだァ?ほら、行くぞ。」


ソラは可愛らしく口に手を当てて笑った後に小首を傾げてユウを覗き込む様に見、

クロネは眉をしかめてユウを促す。


「ほら、行こうよユウ。」


『おう。』



そうして三人はまた歩き続けた。



「・・・そういえば、クロネが、ルナ女官に押し付けられた仕事って何なの?」


町の北の端に差し掛かった時、唐突に空がクロネに尋ねた。


『ルナ女官って?』


「今向かっている王城【紅月乃館】に住む王に仕えている者だよ。」


「綺麗な顔しておっかねぇんだ~。」


クロネは体を抱えるようにして一度ブルッっとふるえる。


「あと、変装が得意。」


「そうそう。変身じゃなくて、変装なのがミソなんだよなぁ~。」


ソラが思い出したようにポツッと言い、それにクロネが彼女?の方に身を乗り出してニコッと笑いながら同意する。


『へ~。(変身?)』


「で、押し付けられた仕事って?」


「ちっ。忘れてなかったんかい。」


「いいから教えて?(にこっ)」


『俺も少し興味あるなぁ~。(ちらり)』


「はぁ~。まぁ、どうせ知られるんだし、いっか。俺が押し付けられたのは、一つはお前ら二人宛ての手紙を届ける事。二つ目が或る問題児・・・じゃなくて、ある者たちに身の回りの物を届ける事と、その者たちの(普通の)食事の世話、かな?時々頼まれるんだ。」


「ふ~ん?よくわからないけれど、クロネは大変なんだなぁ。」


ユウがそんなことを言ってると、今度はソラが若干血相を変えてクロネに云う。


「・・・・・お、おい、二つ目の仕事の、或る者たちって、あの家の者たちのことか?あの丸くて白い二つの家が繋がった様な造りの、その屋根の片方に煙突がある家に住んでいる・・・というか祭りと年末と正月以外は引きこもっているという・・・・・」


「お前、よく知ってんな~。そうだよ。その者たちの所だ。」


「う~わっ、ご愁傷様。よくお前あんなところに入れるな~。オレには無理!つ~か鼻、大丈夫か?」


「ん。入るときは嗅覚を一時的に麻痺させてる。」


『(そんなに酷いにおいなのか?)どうやって?』


「・・・・・・・・・・・・・・着いてからのお楽しみってことで。」


「あとちょっとでその家に着く筈だしな。」


『ふ~ん?』





 そのまま三人は談笑したり、ユウを案内しながら進んでいく。

 

 

 そして、問題の家近く。



「あれだ。あの家だ。」


『え?あの?煙突から白い煙がもくもくと立っているあの家が?』


「ああ。あの、龍玉の孫●空の家みたいなこの辺りでは何の変哲もないあの家が、だ。」


「ついでに言うと、その家の五軒先の家が町長の町長兼長老的なきなこばっちゃんの家で、その斜め向かいの果物屋がその妹さんのあずきばっちゃんの店兼住宅。」


「あとで寄ろうな。そんであずきばっちゃんに売り物にならない果物貰おうな?」


「あ、そうだ!問題の家、興味あるんなら一緒に行く?ユウ。」


『え、だって嗅覚麻痺させなきゃいけない程、においがキツイんだろう?』


「ああ、ぼく等には、ね。」


「そうそう。キツイのは、オレらの鼻が常人より利き過ぎるからだよ。」


『え?どゆこと?』


「ん~、ぼく等の種族特性と、職業柄と、役割と、あとそういう訓練受けたから、かな?」


「俺らは日本で言う忍びや犬猫などの動物並に、もしくはそれ以上に鼻が利くんだよ。」


「むしろ利きすぎるくらいだ。・・・この臭いに害はないんだけどね。僕らに堪えられないんだよ。今回は特に臭いが酷そうな予感がするから。なので僕は薬を使う事にした。」


「けれど、常人の域を出ていないユウだったら、嗅覚麻痺させなくても大丈夫。」


「だから興味あるんなら一緒に行くか?(来い、来い。)」


『う~~~ん・・・、どうしようかなぁ・・・・・』


「・・・・・行ってきなよ。興味あるんだろ?今回逃すと機会は多分もう二度とねぇぞ?(行け行け)」


『う~~~ん・・・、じゃあクロネ、一緒に行っていいか?』


「お~!来な、来な!(かかった!)」


「いってら~♪(よっしゃ♪面白いモンが見られる~♪)」


「んじゃぁ、ちょっと待ってろよぉ~。・・・・・えぇ~~~っと・・・、確かここ等辺に・・・・・・・」


そういいながらクロネは、肩から掛けて持っていた大きなカバンにズボッと腕の付け根辺りまで深く手を突っ込み、目的のものを探して出していく。


「・・・・・うん~~~っと・・・・・、あれ~~~?・・・・・・あ~~~!あった!あった!あとは・・・・、これと、これと・・・あっれ~~~?ちょっと奥入れ過ぎた?・・・・・・取れねぇ。ふぬぬぬぅ、っ、(ズボッ)あ~、やっと取れた。」



『・・・・・・・・・クロネ、それ、何?』


彼?が出したのは、食糧と衣服、その他生活日常品。あと、何故か大きな針と・・・・・奇妙な色をした液体が入った小瓶だった。


「この小瓶?薬師(やくし)(やく)()っていう凄腕薬師(すごうでくすし)特製の麻痺(まひ)(ぐすり)。即効性で使用する量によって効果持続時間が違うんだ。僕はこの針に塗って使ってる。結構効くよ~?」


『へ、へぇ~。』


クロネは小瓶のふたを外して針をその中に一寸つけ、すぐに引き抜き、ふたを閉める。そして針を自分の身体に刺す。


「それじゃあ、いこうか。」


「いってらっしゃ~い。」


ユウとクロネは荷物を持って問題の家に入る。



 数分後、何故かクロネだけが出てきた。



「よぉ、早かったじゃん。」


「世話と言っても今回は荷物を置いてくるだけだしな。ユウがいたし。」


「おっ!ということは・・・」


「ああ、家の奥に行かせた。あの夫婦に食事とか持ってきたことを知らせに。」


「フフ、反応が楽しみだな。そういえばお前、いつもは玄関辺りから叫ぶか、気づかれないようにメモを置いて来るらしいじゃん。」


「お前、ホントに良く知ってんなぁ。あの問題児たちの世話代とかはルナ女官が先に払ってくれてるからな。受け取り表もいらねぇんだわ。それよりも・・・」



『わぁぁぁあぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!!』



「「(にやり)」」



ドタバタバタバタッ、バタンッッ!?



『っっっ!?☆△×!!☆×□☆○!!?!』



「「ニャハハハハハ!!ユウ、顔真っ()っかで、何言ってるかわかんない♪」」


『おまっっ、クロっっ、だっ、騙しっっ!?(訳:お前らっ、クロネっっ、騙したのか!?)』


「「まぁ、まぁ、落ち着いて」」


『っっ!あんなもん見せられて落ち着けるか!!!つーか、クロネ、よくも俺をあんなとこに置いて行ってくれやがったな!!』


「あはははは!!真っ赤な顔と涙目で言われても痛くもかゆくもねぇよ。面白れぇだけで!!」


「にゃははは!!ユウ、君って初心だったんだねぇ。にゃはははははははは!!」


『うるせぇ!!俺じゃなくても大抵の奴はこうなるわ!!』


「にゃはははは!・・・あ~腹痛てぇ~~~。あはははっ。あ、それよりもユウ。ちゃんと言ってきてくれた?」


『え?・・・あっ。』


「ま、そうなると思って、メモを置いてきておいたからいいよ。」


『あ~、よかった。もう二度と自分からあの家に入る気は起きねぇよ。』


そう言って、なんだか少し疲れたように見えるユウは安堵したように胸をなでおろす。


『あれ?そういえばソラは?』


「あそこ。」


クロネが指さした先には、人の良さそうな頭の大きい老婆とソラが何やら楽しそうに歓談していた。老婆は終始ニコニコ顔であり、頭のてっぺん辺りで髪を一纏めにしてお団子にしている。



『いつの間に・・・』


「ソラはあの方に人一倍似てるからな~。」


『?あの方って・・・?』


「秘密。それよりも行こうぜ。」


『あっ、おい。』



「あずきばっちゃん、お届け物で~す。受取証にサインを。」

 

クロネは鞄から小包と紙の束を出して云う。

老婆はクロネを見ると一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにもとのニコニコ顔に戻った。


「おや、クロネさん。一か月ぶりだねぇ。はいはいっ、っと。これでいいかい?」


「毎度ありがとうございま~す!」


あずき婆さんが描いた受取証を受け取ってクロネは笑ってお礼を云う。


「おや、後ろの方はクロネさんと空様のお友達の方かい?」


あずき婆さんがクロネとソラの後ろにいたユウに気付いて、二人に尋ねる。


『(頭でかっ!湯婆かってくらいデカッ!)』


「あはは。今日、外から来たお客さん。名前は・・・」


ソラがあずき婆さんの頭の大きさに驚いていたユウを小突き、ユウに自分で言うように促す。


『夢旅 優と申します。ユウって呼んでください。』


「おやおや、これはご丁寧にどうも。わたしゃ“あずき”といいます。気軽に“あずきばっちゃん”って呼んでくださいね。あ、そうそう、お三方。桃、食べるかい?実はちょっと潰れちゃって売り物にならなくてねぇ。」


「「!」」


『え?いいんで「「頂きます!!」」ちょっと!!』


ソラとクロネはユウの肩を両側からガシッと片腕で抱き込み、こそこそと話し出す。


「貰えるもんなら貰う!それがタダで返さなくていいなら尚更!」


「そうだよ!くれるっていうんだから貰わなきゃ!タダなんだし!売り物にならないってあずきばっちゃんがそう言ってるんだし。貰わなきゃ損!損!」


「それに桃だぜ!食べなきゃすぐ傷んで捨てられるだけだ。」


「そうそう!」


『だから、俺が言いたいのはもう少し遠慮ってものをだな・・・』


 ソラとクロネはユウに回していた腕を解き、今度は普通の音量で話し始める。


「ふむ。じゃあユウは要らないんだな。桃。」


「そうだな、空。俺たち二人で食べようか。」


『だ、誰も食べないとは言ってないだろ!俺も食べる!』


「そうかい。そうかい。じゃあ、剥いてきましょうね。」


「「ありがとうございま~す!!」」



あずきばっちゃんが桃を剥きに奥に入っていった後、


「「ちっ!」」


『えっ、舌打ちっ!?』


そりゃそうだ。もう少しで美味しい桃を二人締め出来たのだから。(・・・まぁ、どっちにしろ、そんなことはなかったと思うが。)


「そうそう。あとちょっとだったのに。ねえ。」


ねえ。上手くいけば、あとちょっとだったかも、ねぇ。


「だよねえ。」


『?』


「・・・・・ソラ、誰と話してんの?」


「(ニコッ)」


「は~い。桃が剥けましたよ。た~んとお食べ。」


「「わ~~~い!」」


『・・・見た目通りの子供みてぇ(ぼそっ)』


「「なふかひった?(もぐもぐ)」」


『ふふっ、いや、なんも。(パクっ)おっ、これ美味しい。』


「そうかい。そうかい。ゆっくりお食べ。」


『ありがとうございます』




・・・約十分後・・・


桃、完食。


「また、来てちょうだいね。」


「「『はい、ごちそうさまでした!』」」




『あ~、美味かった。』


「そうだねぇ~。」


「さて、腹が膨れた所で、【紅月乃館】に再び向かうよ。」


「あ。」


「・・・・・忘れてたの?」


「いや、あははははは・・・」


「忘れてたんだね。」


「・・・・・はい。」


「まぁ、いいや。それじゃあ、いこうか。」




―――*――*――*―――




・・・数十分後・・・




『お~~~!広いな~~。出店が出てるけど、なんか祭りでもあんの?』



三人は月の島中央広場にやってきた。

広場は円形で、広場の中心から東西南北に大通りが走っており、中央には巨大な噴水と掲示板、掲示板の間、間には長椅子が置かれている。そして広場はユウが言うとおり、沢山の様々な出店で賑わっていた。



「祭りねぇ。そうだといいんだけどね。生憎そうじゃないんだぁ。」


「ここのこれは常設。だから出店の造りも、よく見ると少ししっかりしてんだろ?」


『あ、ほんとだ。』


「で、あそこのあの紅い大きな建物が【紅月乃館】。」


『へぇ~~~!かなりデカいんだなぁ~~~。あっ』



「え、おい!?」

「ちょっ、ユウ!?」




ユウが見つけたのは、風船が風に飛ばされて泣いている女の子だった。

ユウは風船を、急いで飛び上がってキャッチして女の子に渡す。


『はい、どうぞ。』


「ありがとう。おにいちゃん。」


ユウは女の子に風船を渡すと、女の子はお礼を言って駆けていった。


「お~い、ユウ。」


『ああ、わりぃ。じゃ、行こうか。』




―――*―――*―――*―――



ついにやってきました。月の国月夜国王城【紅月乃館】。



『あ~~~っ、しんどっ。いったい何段あるんだよ!?この石段は!?クロネもソラも一緒に登り切っててなんでそんなに元気なんだ!?何でそんなに身軽に登れるんだ!?』


「ふっ。鍛え方が違うのだよ。」


『ムカつく~~~!!』


「っていうのは冗談・・・・・でもないんだけど・・・」


『違うんかい!』


「うん。まぁ、慣れだね。あと石段の数は日によって少しずつ変わるから知らん。」

 

「多分、千~千五百くらいかな。今日は。」


『うへぇ~~~。しっかし、門から何から、真っ赤だな。この建物は。』


そう。三人の目の前にある建物は屋根や手すりなど一部を除いて、赤、紅、朱。真っかっかである。

建物は和風と中華風を混ぜ合わせたような建築物で、横に長く、小高い丘の上にあり、周りは木や草花に囲まれている。また、館の後ろは海である。


館に通じる石段の端には、灯篭が等間隔で置かれている。そして、今、三人が居るのは、この、何千段あるかもわからない石段の一番上、二つある門のうちの一つ目の前である。




「で、貴方(あなた)方は何時までそこにいるつもりです?しかも着くのが遅いです。」


「「げっ、ルナ」」



そこにいたのは、中華風の女性用官人服を纏い、長い黒髪を簪などを使って綺麗に纏め上げた、少々キツイ感じの綺麗な女性だった。



「げっ、とは何です?げっ、とは。蒼空の君様までそんな反応。わたくし、泣いてもいいですか?」


「「すみません。」」


「よろしい。それで、猫の君様はお仕事は終わりになられたのですか?」


「あっ、はい。ルナさんに頼まれたものはこれで終わりです。」


「これまたよろしい。報酬の二千五百ルアをお渡ししますので、あとで私の城内の部屋へ来てください。それであなたは?」


『はじめまして。俺、夢旅優と申します。ユウと呼んでください。』


「ほ~。この子が例の子ですか、蒼空の君様?」


「うん。そうだよ。」


「そうですか。それでは、王のもとへご案内します。猫の君様は先に私の部屋にでも行っていてください。お二方をご案内し終わりましたらすぐにそちらへ向かいますので。」


「わかりました。じゃあ多分また後でね。二人とも。」


『おう、またな。』


「また後で。」


「では、ご案内します。」


切実に表現力が欲しいと思う今日この頃。・・・文才も欲しいけど、それよりも表現力が欲しい。


話の中で、三人が果物屋で食べたのが、なぜ桃になったかというと、今日、僕こと遊月が昼飯のデザートに桃を剥いて食べたから。初物。・・・ん、どうでもいい理由だよね。


問題児夫婦が家の中で何をしていたかはご想像にお任せします。アハハ・・・。

もうちょい、うまくユウを騙し入れたかったなぁ。


どうでもいい設定。

長老的なきなこばっちゃんと果物屋のあずきばっちゃんは双子の姉妹。

きなこばっちゃん:おおらかばあさん。

あずきばっちゃん:ほがらかばあさん。


―*-


なんか、ルナが結構出張ってきてびっくり。


次は現王にご対面~♪


・・・・・・・・・・・・・書けるかな。

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