【陽の国】で授業~この世界の神話~ 【後】
場所:【陽の国】、王城の地下庭園。
ユウ視点。
あれから一ヶ月が経った。
この頃は友と一緒に遊び、一緒に凛花さんの授業を受け、時々その友だちの内の一人が持ってくる厄介事に手を焼いては解決する、というような生活を送っている。
平和だ。とても平和だ。偶にここが自分のもと居た世界ではない事を忘れそうになる。
で、今日もまた例によって凛花さんの授業を受けに来ている。なんだかんだいっても知らない事を知ることは楽しいものである。
そうこうしている内に凛花さんが来て、手を叩いてみんなの注目を集め、授業が始まった。
(パンっ!パンっ!)
「さて、みなさん。今日はこの世界の神話、創世記について教えましょう。知っている人もいるでしょうが、知らない人のために復習だと思って黙って聞いててください。わかりましたね?」
「「「はーーーい!」」」
「では、語りましょうか。この世界が、国々が、種族が、神々が、どうやって創られ、産れ出でたのかを。」
凛花さんはそこで一息置く。そして語り始めた。
「この世界の始まりはこの世界の創造主、一般には“ノア”と呼ばれている少女が人に絶望し、その際に自身の心が壊れきるのを防ぐために、己の悲鳴とすでに壊れてしまった心の欠片から一人の中性体の子供を創ったのが始まりです。…………
ノアは自分の分身、子供ともいうべき存在を自分の中に創りました。そしてその子に時々話しかけ、一緒に遊び、話を聞いてもらったりして、一緒に過ごしていました。
ですが時が経つにつれ、その子が次第に愛しくなり、この子にこの子の住む世界を創ってやりたくなりました。そしてノアにはその力がありました。
でも、その力を使ったことはありません。
なので、ノアは早速情報を集め、力の使い方を学びました。
そしてノアは自分の知るノアの世界に有った物語たちを元に世界を創り始めました。
なぜ彼女が世界を創る為に物語を元にしたのか。
その理由は彼女が大の本好きで、特に物語を愛していたからです。
先ず彼女は混沌の中に、闇と夜を創りました。そして世界に時間を与えました。
これで世界は動き始めます。でも、まだ足りません。
次にノアは月を創りました。夜でも明るいように。
でも、月は太陽の光を反射して光るので明るくはなりません。
だからノアは月の次に、仕方がなく太陽と朝と昼を創りました。
ノアは夜に空を見上げます。すると月が輝いていました。
でも、何か物足りません。
ノアは星々を創り、空に浮かべてみました。すると満足のいく空に・・・なりませんでした。まだ何かが足りません。
ノアは混沌から海を創り、雲を空に浮かべてみました。
するとようやく満足のいく空になりました。
ノアは次に陸地を創っていきました。【太陽】、【月】、【星】になぞらえて。
最初に【月】になぞらえた大きな島を創りました。
壊れた欠片をもとに、ノアの知る限りのありとあらゆる不思議を詰め込んで。
そして、息をするために空気と風を創り、世界を創る理由となった一端である子供の身体を創り、その子に与え、“月乃島”と名付けたその島に住まわせました。
ノアは次にそこに住む子供以外の住民を創りました。
子どもが寂しくないように。子供に似た性質の者たちを。
そうして創られたのが今の【月夜国】の【月猫族】だと言われています。
次にノアは【太陽】になぞらえた島と、そこに住む住民たちを創りました。
彼女が知る限りの人の温かさと平和、日常の幸せ、優しさなどを込めて。
これが私たちが今住んでいる【太陽国】とこの国の直系王族を含む【陽の民】と呼ばれる人々のもとだと言われています。
さて、ここまでくれば人の醜さや汚さなどの負の部分も世界のバランスを取る為に創らざるおえません。そうしなければ、せっかく創った世界が壊れてしまうからです。
ノアはしかたがなく、【星】になぞらえた大陸とそこに住む住民を創りました。
人の醜さ、愚かさ、汚さなどの負のモノに類するものを込めて。
これが今の【星砂国】と、あの国の直系王族や貴族たちの祖先を含む【闘星の民】の元だと、…いわれております。
そしてノアは陸地の一応の最後として、この世界のある場所に死者やこの世のものではない者達などが住む場所を、連れて行かれるという場所を創り、そこを管理する者達を創りました。これが今は【月夜国】に分類されている【闇夜の国】、または【黄泉の国】と呼ばれている所です。
これにて一応の世界の仕組みが出来上がりました。」
この神話(?)、聞いてると、なんだか随分自分勝手というか、なんというか…
いや、まぁ俺が気にするようなことじゃないよな。
神話なんてみんな自分勝手なモノだし、人の良い様に作り変えられてたりするもんだしな。
「へぇ~、ホントはそういう話だったのかぁ~」
「ホントはってなに、どういうこと?」
「あれ?でもまだ足りないよね?」
「なにが?」
「大陸が。」
「いや、大陸じゃなくて島でしょ、あれは。」
「ええ、島です。そして皆さん、まだ話は終わっていませんよ?」
凛花はたおやかに微笑みながら云う。
『え、まだあるの?』
もういいんじゃね?
「不満ですか?まだ神々のことも話していませんのですけれど、…やはり、少々省いて要約したのを語った方がよろしかったですか?…でも、それだと授業になりませんし…」
凛花は少し困った顔をして、呟くように思案する。
『ごめんなさいっ、どうぞ気にしないでどうぞ続けてください』
「そうですか?それならいいんですけど…。では続けましょうか、といってもあと少しだけなんですけれどね?内容を詰めに詰めて話すと僅か5分から10分程度で終わるお話ですし…。」
それなら何故詰めなかった!?
あきらかにそちらの方が分かり易そうだr…ああ、授業にならないって言ってましたね。はい。わかりましたよ。付き合ってやりますよ。付き合えばいいんでしょっ!?
「…で、何処まで話しましたか?…あぁ、世界の仕組みまででしたね。では………
ノアが世界の仕組みを創り、一応の終わりを見てから数百年が経ちました。その間に世界に住む人々の人口は増え続け、それぞれに指導者が生まれ、国を創りました。世界はノア一人では管理しきれなくなりました。彼女は人々や世界を管理する為にこの世界の神々を創りました。ノアの世界にあった神話の神々を基にしてね。
ノアは一番最初に三人の姉弟神を創りました。そしてこの三姉弟神たちそれぞれ太陽・月・星の国々の守護神としたのです。
【月の国】の守護神はご存じの通り、女神で三姉弟の一番上で正式な名をアルテミス=ルナリア=ミルヴァンディア=カルディアと言います。一般にはアルテミス様と呼ばれていますね。この女神が司るものは「月」・「智」・「狩猟」・「発明」・「お産」など多岐に渡ります。その理由は彼女の性質が関係しています。
彼女は大の書物好きであり、また実験好きでもあります。彼女に関わるお話には、彼女の実験台にされた者の話や、彼女の怒りを買ったらどうなるか、などのお話があります。簡潔に言いますと、彼女の怒りを買うな。アルテミス様は愉快犯。実験魔。活字中毒。弓の名手。セクハラ嫌い。アルテミス様のせいで被害者続出。多才なぶっとんだ変人、といったお方でしょうか。」
えっ、ちょっと凛花さん?その言い方はちょっとぶっちゃけ過ぎでは?
「次に【陽の国】の守護神様は男神で三姉弟の真ん中で、アルテミス様の双子の弟におなりになられます。正式名をアポロン=ソル=リオヌスヴァルド=カルディアとおっしゃいます。通称はアポロン様とかソル様と呼ばれております。アポロン様が司るのは、「太陽」・「医療」・「芸術」・「音楽」・「農業」・「商業」など、生活に根ざしたものが多いのが特徴です。アポロン様のお話は双子の姉や愚かな弟の被害に遭い、とても苦労し、必死に頑張るお話が多いです。
アポロン様はある意味最も人としての人らしい神と云えるかもしれませんね。そしてアポロン様をまた簡潔に言い表しますと、「医療神」、「芸能神」、苦労人ならぬ苦労神。功労者。努力の天才。始末屋。被害者、といったお方ですね。
この神の神話の中で代表的なのが、双子の姉に実験体にされた話、それから逃げようとして失敗した話、弟の勘違いの矛先が不運にもアポロン様に向かって理不尽な因縁(?)をつけられた話、他の二人の姉弟のおかげで死にかけ、その後必死に医療を勉強する話があります。この神の場合、お話に必ずと言っていい程、「死にかける」か「苦労」がついてくるのが特徴です。
あ、自国の守護神様で絵本などの書物が市井に出回っておりますので、一度それを読んで今度、簡単な感想文をかいて提出してもらいましょうか。」
「「「「「えぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~!!!?」」」」
「はい、決定です。大丈夫。2~300字程度で構いませんので。」
「では、次にいきます。三番目の【星の国】の守護神は男神で三姉弟の一番下に当たります。正式名称は、アルス=セイ=バルヴァドス=カルディアといいます。この男神が司るものは「星」・「戦」・「力」・「権力」など、野蛮なものが多いのが特徴です。この神を簡潔に表しますと、馬鹿。脳筋。戦馬鹿。「戦神」。欲望に忠実、といったものでしょうか。
ぶっちゃけますと、この【太陽国】に【星の国】が戦を仕掛けてくるのは、あの国の上層部のせいもありますが、このアルス神が大きく関係しているとのことです。」
なんだか、星の国が大々的に悪者みたいだなぁ、実際はどうなんだろう?
「さて、つづけますよ?ノアは三神を創り終えると、また神を創りつづけました。………~(中略)~………以来、この世界はノアと神界にいる神々、そして一部の“創造術”という不思議な“力”を使うことを許された、“神のお気に入り”という不老不死に近いとても長寿な者たちによって管理され、そして時々起る“ノアの気まぐれ”という現象により、島や種族、異界などが創られる、矛盾だらけな未完の世界となったのです。」
へぇ~。なんか、納得。
それから、授業は質問大会に突入し、今、丁度最後の子が質問し終わった。
「おや、丁度時間ですね。これで今日は解散とさせて頂きます。今日の授業でまだ質問のある方は後で私に直接聞きに来てくださいね?それでは解s「(バンッ!!!)大変だ!!!!?」……そんなに慌ててどうしたのですか?」
授業がおわって、解散しようとしたとき、この地下庭園の入口のドアが大きく音を立てて開き、ひとりの男が血相を変えて入って来た。




