俺、何かしたか?(By.ユウ)
『うっ・・・、ここは・・・・』
気が付くと床に寝かせられていた。というよりも転がされていたという方が正しいか。
どうやら俺は気を失っていたらしい。
「やっと起きましたか。」
少し呆れたような声が聞こえた。
声がした方に目を向けると、小奇麗なきっちりとした感じの、細見の男性が書類や本が積まれた机に向かって座り、顔だけこちらを見ていた。
『あ、痛ててっ。ここは・・・牢屋か?』
体を起こすと腹のあたりが痛くなった。
そこは薄暗く、ユウの目の前には鉄の格子がみえる。広さは関西間6畳くらい。床や壁は石。端の方には布きれなどがある。・・・これ、どう見ても牢屋だろ。
「ええ。そうです。・・・一応、あなたはこの国に不法侵入をしましたので。」
男は机の上の物を片付け、体ごとこちらに向けて座りなおして本格的にきく姿勢に入る。
『・・・捕まる理由はそれで十分って訳か。こっちは好きで不法入国したわけではないのにな。・・・というか、やっぱりここは【月の国】月夜国じゃねぇのか?あんた誰?看守?』
「私ですか?今は一応この牢屋の看守ですが、本職は違いますがね。
そしてここは【月の国】ではなく、【陽の国】太陽国です。」
『へ?太陽国?ここが?・・・・マジで?』
「ええ。マジです。・・・好きで不法入国したのではないというのならば、どうしてあなたはここに居るのです?そもそもあなたは何者ですか?何故この国にきたのです?」
『・・・俺が何者かって?さぁな。それは俺にもわかんねぇ。けれど、【月の国】のソラとかが云うには、俺はあんた達からすると異世界人なんだそうだ。』
「は?・・・異世界人、ですか?(・・・こういう場合、普通ならばこの者の頭の心配をするか、戯言だと聞き流すのですが、この者はどうやってか、あの【月の国】から来たようですし、本気で何者ですか?)」
『らしいぜ。で、どうして?何故ここにいるのか?それはこっちが訊きてぇくれぇだ。いきなり【月の国】で誰かに奇妙で不思議な泉に突き落とされ、気が付いたら水の中。水中から這い上がってみると、どっかの中庭?で大勢の子供たちに囲まれて、落ちる前とは別の所に居たってわけ。ホント、戯けてるよな~。』
「・・・自分の事なのに他人事みたいに言いますね。つまり貴方もよくわかってない、ということですか。それにしてもあなた、牢屋に入れられているというのに意外と冷静なんですね。大抵捕まった人は喚き散らして、自分は何もしてない、何かの間違いだ、などと必死に訴えたり、暴れたりするものなのに・・・。」
男はしみじみと呟くように言った。
『あぁ・・・だって捕まったんだから騒いだって仕方がねぇだろ。捕まった時点でどうしようもねぇし。第一、騒いだところで何にもなんねぇじゃん。余計に体力を使って無駄に自分の立場を悪くするだけだ。大人しくしてりゃぁ出られるかもしれねぇってのに、暴れる馬鹿がどこにいる?それに・・・冷静に見えんのは見た目だけ。心のなかはこれでも荒れ狂ってるよ?』
「・・・・・馬鹿ではないようですね。賢明な判断です。そのまま大人しくしていてくれた方がこちらとしても助かります。」
『ははっ。そうかよ。・・・で、話は変わるけどよ、俺はどれくらい気ぃ失ってたんだ?』
「ああ・・、三日です。お陰でとっても静かで書類仕事がはかどりました。」
『え!?三日!?俺三日も寝てたの!?』
「だから先程からそう言っています。(・・・全く、な~にがすぐ起きるですか。結局三日も掛かってしまったじゃないですか。あの男、手加減を間違えてんじゃありませんよ!?お陰で私が尻拭いしなきゃいけなくなったではないですか。だからあの男は脳筋や熊男などと周りからいわれるんですよ!!)」
キィィィ。←ドアの開く音。
「おや、凛花様。今日の授業はもう終えられたのですか?」
「ええ、終わりました。・・・景静、その少年を牢から出してあげてください。」
女性は少し疲れた声で、呆れたように苛立たしげに告げる。
「おや、よろしいので?最近またきな臭い【星の国】の密偵かもしれませんのでしょう?」
男は静かに目を丸くして女に問う。
「・・・その可能性は消えました。先程【月の国】にいる兄から手紙が来て、その少年の身元がわれたの。」
女性、凛花は疲れたように云う。
「その子は異世界人で、この世界に元の世界に帰るために必要なものがあり、それはこの世界中に散らばっていて、それを探してるらしいわ。・・・全く、馬鹿げた話よ。でもあの兄が言うのだから間違いないわ。それを王に伝えたらあのおっさん、何と言ったと思う?」
心なしか最後の部分に殺気と苛立ちが篭っているような気がする。
「(おっさんって・・・。一国の王にそれは無いでしょう。)さぁ、私にはなんとも・・・。」
景静というらしい男は苦笑した。
「でしょうね。私もあんな反応が返ってくるとは思いませんでした。あのおっさん、話を聞いて面白い!と一言云って大笑いした後、この少年を客人として持て成すように云い、あまつさえ、この城に滞在することをその少年に許可しやがったわ。いくら王自身が強いとはいえ、寝首をかかれるとは考えないのかしら。」
「凛花様、お口が悪いですよ。それにこの少年は多分そのようなことを致しませんよ。ですよね?」
『ああ。俺はそんなことしねぇよ。しても俺にはデメリットしかねぇからな。』
「そう。ならいいわ。・・・景静、さっさと少年を牢から出しなさい。」
「承知致しました。」
景静は凛花に一礼して、鍵束の中からユウの牢の鍵を探し当て、牢の扉を開いた。
「ほら、さっさと出てください。」
「ああ。わかってるよ。」
「・・・さて、この国に滞在中は王より客人として持て成せ!ということだったので自己紹介でもしておきます。私の名前は望月 凛花。この【陽の国】太陽国の王族に連なるものです。職業は教師をしています。因みに、【月の国】の望月月は私の実の兄よ。」
『ええぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~!!!』
「何?悪い?なにか不都合あって?」
『い、いえ!!』
「私は武官の景静と申します。」
「よくもぬけぬけと・・・。」
「何かおっしゃいましたか?」
「いいえ?何も言ってないわ。で、少年。貴方の名前は?」
『俺の名前は夢旅優だ。ユウって呼ばれてる。』
「そうですか。よろしくとでも言っておくわ。」
『それはこちらのセリフだ。』
「じゃあ、貴方を王城の客室に案内するわ。・・・景静、あなたは本来の仕事に戻って頂戴。(ボソッ)・・・あの馬鹿をどうするかは貴方に任せるわ。・・・言うまでもないでしょうけれど。」
「はっ。それでは失礼いたします。」
景静は綺麗に一礼して颯爽と去って行った。
「さぁ、行きましょう?ついてきてくださいね。」
『・・・ああ。』
牢から出ると薄暗い階段を登った。今気づいたがあそこ、地下だったんだな。
階段を上がった先は蒼い空と白い建物が広がっていた。
凛花はスタスタとその建物に向かって歩いてく。
俺も黙ってついていった。
―*―*―*―*―*―
で、現在地はさっきの白い建物(王宮)の二階、とある一室。
「さぁ、ここがこの国に滞在中、あなたの部屋になるわ。壊さない程度に自由に使っていいわよ。」
案内されたのは落ち着いた雰囲気の部屋だった。
『へぇ~、意外と広いんだな。案内してくれてありがとな。』
「あなた、きちんとお礼が言えたのね。」
『失礼だな。・・・俺、貴方になにか悪いことしたか?』
「さて、どうでしょうね。」
そういって凛花さんは微笑した。
「・・・ああ、そうそう。この国に滞在中暇ならば、街を見てまわったり、私の授業を子供たちと共に受けてみたらどうかしら?授業は貴方が現れた【陽の池】のあるあの庭のような部屋で行っていますから。道は景静やそこらへんを歩いてる者とかを捕まえて尋ねてください。それと、出歩くときは一応、誰かに言ってからにしてくださいね。何か質問はありますか?」
「いや、今は思いつかねェな」
「それでは私はこれで失礼いたします。(一応、女官でもつけておきますか。)」
~その後~
「(コンコンッ)」
「は~い、開いてますよ~?」
「失礼いたします。わたくし、この度、ユウ様付きの女官となりました、華蓮と申します。あなた様が滞在中のお世話を言いつかりましたので、なんなりと(常識の範囲で)お申し付けください。」
「へ?俺の世話?」
「はい。道案内や雑用など、なんなりと・・・」
「ああ・・・。確かに道案内は必要ですね。これからよろしくお願いします。」
「はい!」
華蓮という女官は花がほころぶように笑った。




