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~夢旅 優の異世界旅行記~  作者: 神寺 柚子陽
第1章 始まりとプロローグ
19/31

【月の国】から【陽の国】へ



さて、時は少し戻って空たちとユウが分かれ、彼が泉に落ちる前。






「・・・本当にこの泉は綺麗だなぁ。・・・不気味さと奇妙さと・・・畏怖的なものを感じるくらいに。」


泉の水は底が近く見える程、とても澄んでいて天の色を反射し、蒼く輝いている。

だが、異様なことに魚の一匹も泳いでいないのだ。

それどころか、泉からは何とも言えない矛盾を感じるのだ。


近寄りたくなるのに近寄りたくない。

不気味なのに気味が言い。

不思議なのに不思議じゃない。

絶対なにかがおかしい筈なのに、それが普通。



・・・そんな矛盾を。



・・・泉を見続けていると・・・何かに引き込まれそうで怖くなってくる・・・。


・・・やめよう。


「・・・さっさと顔洗って戻ろう。」



パシャッ、パシャッ・・・・・・・ん?



「・・・何か水底で光ってる?」


ユウは顔を拭いて、じっと目を凝らし、泉の中を覗きこむ。





「ありゃ、・・・鏡か?その周りには・・・石?」




泉の底の真ん中あたりには、美麗で繊細な細工の施された鏡が沈められていた。

その鏡の周りには鏡の台座を頂点に、一握り程の大きさで透明な石の山があった。






「なんでこんな水底に鏡が?・・・何か訳があるのか?」









《《《くすくすくすくすくすっ》》》









「誰だ!?って・・・!!うわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」






振り返りざま誰かにユウは背中を押され・・・・・、









   ボッシャ~~~~~~~~~ン!!!!!









落ちた。・・・水の中に。










「(・・・またかよ・・・)」







     「「ユウ!!」」



 遠くで空とクロネ=クロナの声がした気がしたのを最後に俺の意識は暗転した・・・。













―*―*―*―*―*―









・・・ここは・・・・。












・・・水の中?







うっ!?・・・く、苦しい!!








ザパァァッ!!







ユウはもがいて、もがいて、四角い何かの角をつかんだ。


彼はそれを頼りに這う這うの体で水中から上がって・・・・・咳き込んだ。









『うっ、ゲッホッ、ゴッホッ、コホッ、コホッ、ゲッホッ、うえぇ・・・死ぬかと思った。』










    「何者!?」


    「誰だ!!」










 あれ?・・・ここ、何処?



・・・空の館前・・・じゃない!!




 そこは学校等の体育館よりは少し広いくらいの大きさのちょっとした庭園の様な大部屋だった。


 地面には草原が広がり、所々に花が咲き誇り、部屋の隅の方には木々が立ち並んでいる。


 この部屋には何故か大きな黒板があり、ユウの後ろには池―――繋ぎ目のない四角い石で周りを囲まれていて、石には精緻で不思議な模様と文字を刻まれ、その文字と模様のそれぞれの中央と端にこぶし大の大きさの丸い珠が埋め込まれている―――が在る。






そして彼の目の前には、大勢の子供たちが突然現れた侵入者に驚いていた。



子供達は仲間内でざわざわと話し始める。









「おい、こいつ急に【陽の池】から出てきやがったぞ!!」





「あの不可思議な【陽の池】から?誰だ?【月の国】の者か?」




「でも【月の国】の者でこの池を利用するのは、上位の特殊能力を持つ者で、偶に来る『蒼と白の子供』と『赤い女性の王様』の様に、相当怠惰な者や物好きだって先生の授業で習ったぞ!」





「それに先生は『大抵の【月の国】の者はこの池を利用せず、普通に船を使ってこの国にやって来る』って聞いたぞ!」





「・・・そんなに怠惰にも気まぐれにも見えない。すごい力を持っているようにも・・・見えない」





「じゃあ、違うな。」





「だとしたら、・・・【星の国】の雇われ密偵か?」








「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」









 ・・・これは・・・ちょっと・・・やばい?








「・・・だとしたら拙いな。」





「また戦か。・・・弱いくせに。」



「違うよ!【太陽国】が強いんだよ!」



「ハハッ。違いねぇや!」




「でも、こいつどうする?」




「だれか先生を呼んできて!!」



「あたし達じゃ、判断着かないよ!?」



「そうだ!!先生ならこういう場合どうするか教えてくれるはずだ!!」



「じゃあ、わたし、先生呼んでくる!!」



「その必要はありません。みなさん、私はここに居ます。」





「「「「「「「「「!!先生!!!」」」」」」」」」」





子供たちに先生と呼ばれたのは黒髪黒目で長身の女性だった。


その女性は、長く黒い髪を日本の大正時代の女性のように少し髪を残して後ろで留め、頭に銀環を着け、裾の長い中華風の服、それも地位の高い女性が公の場で着るような服を着た、優美でたおやかという形容詞が似合いそうな美人である。




「見知らぬ方。申し訳ありませんが、素性の知れぬ者をこの国に野放しにしておく訳にはいきません。・・・子供たちが言ったように【星の国】の密偵かも知れぬ者を、ね。・・・それにしては些か(いささか)どうどうと侵入し過ぎな気もしますが。まぁ、どちらにしろ突然現れて、素性も何もわからぬ者の対処法は変わりありませんですけれどね。」





「ちょ、ごっほっ、ごっほ、ちょっと待ってくださいよ!?俺は別に【星の国】とかいう国の密偵なんかじゃ・・・」



「問答無用です。どちらにしろ、素性の知れぬものの対処法は何も変わらないと云いましたでしょう?衛兵!!!」





「はっ!」





「【陽の国】太陽国の王族として命じます!この者を捕えなさい!!」




「承知!」




「うわっ!!離せ!!離せってば~!!・・・うっ!!」




ユウは【陽の国】の衛兵に気絶させられ、肩に担がれた。




「・・・(リン)(フォナ)様、牢にでも入れておけばよろしいので?」



「ええ。ですがその者はずぶ濡れですので、そこのところの対処もして、要らぬお金を使わななくても良いようにしてください。よろしく頼みます。」





「承知致しました。」






「さて、みんな!!授業を始めましょうか。」









―*―*―*―*―*―



なんで・・・、俺が、こんな目に・・・・・。



―*―*―*―*―*―





 12/26に文章がおかしいことに気付いたので、補足と修正をしました。 


 這う這うの体で(ほうほうのていで):意味的は、今にもはい出さんばかりのようす。ひどく恥をかいたり、さんざんな目にあったりして、あわててその場を逃げ出すようすにいう。「―で退散する」とかです。


要らぬお金=ひかなくてもいい風邪のための薬代。


ユウがつかんだもの=池の周りを囲む石。


なんでこんな目に・・・:不法侵入者だから。


星の国:戦好き。でも全体的にそんなに頭よくない。


太陽国:芸術と漁業、貿易、採掘で栄える。専ら星の国の戦対象国。


月の国:自給自足できる。貿易はしてる。色々と規格外多い。


蒼と白の子供=天津 ソラ


紅い女性の王様=月の国の現王、まい姫 (【黒猫姫】黒猫まい)


リンフォナ:職業教師。太陽国の王族に連なるもの。月の国にいる、望月ユエの妹。



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