迷いの後に不幸あり?
俺が部屋の外で自分の身の振り方を悩んでいると、中から何かが切れる音と大声、そして何かを破壊するような、叩きつけるような大きな音が聞こえてきた!!
「(ブチッ)手加減してこっちが下手に出てれば舐め腐ったことしてくれてからに・・・。いい加減にせんとイテコマしてその首叩き折るぞ!!ゴラァーーー!!!!」
ズッドーーーーーーンッッ!!!!!!
ドシャドシャッドシャドシャ!!!
ガラッ
「おいっ、すごい音がしたけど大丈夫か!?」
「ああ!?・・なんや、ユウか・・・。おはよう。ああ、これは気にせんでええよ?ただ、こいつが寝惚けて舐め腐ったことしたさかいに、腹に一発入れて投げ飛ばして叩きつけただけやさかい、な~んも気にすることあらへんで?」
空は凄みながらこちらを見た。だが俺だと解ると口元に笑みを浮かべて両手を横に広げ、芝居がかった仕種をしながら、何故か関西弁で気にすることはないと云った。
俺としてはすごく気になるんだが、彼の目が、口は笑っているのに眼だけが、全く笑っていなかったのだ!!何と言えばいいのだろうか?・・・逝っちゃってる?とでもいうのだろうか。彼の目が有無を言わせずとてもとても恐いのだ。まるで静かに怒る鬼のように・・・。
「そ、そうか。・・・その少女は・・・その、ちゃんと生きているのか?」
「(ぴくっ)少女?そこで伸びているクロネ=クロナのことか?ああ、それなら大丈夫だ。問題ない。こいつはそんなんで死ぬような奴じゃない。そんな軟な訓練も鍛え方も体の構造もしていないからな。・・・だが今はそれが殺してやりたいほど憎らしけどな!!」
「空、落ち着いて。とりあえず何があったんだ?」
「あいてててっ、ごめんなさい。空。・・・おはよう。」
「おはよう。じゃ、ねぇよ!!誤るくらいならさっさと起きてくれってんだ!!これで起きなかったら“妖酒”を一瓶てめぇに盛っていた・・・。お前、俺に何してくれたか覚えてる?ねぇ?毒を盛られても一回殺されても文句言えねぇよな?なぁ、・・・一遍、死んでみる?」
「申し訳ございませんでしたーーー!!!!!!だから妖酒での毒殺だけはご勘弁を!!!」
「知らねェよ。お前、俺に“ピ―――”して“ピ――――”して“ピ――――”しようとしたんだから今度ばっかりは許さねぇぜ?一遍死んで【夜の国】で地獄めぐりでもして来い。そこで好きでも何でもない顔も知らない奴に身体をまさぐられたりした後、超危険な武器持った【闇姫】と【黄泉姫】に追い掛け回されて来いよ?【冥界の王】とお茶して精神ズタボロにされてこい。そして魔界で【金色の悪夢】たちに永遠と続く悪夢を見せられ、魔女たちの可笑しな薬の実験台になるがいい。ああ、安心しろ。お前も主のお気に入りの一人だし、それらが終わった後、主に知らせてちゃんと生き返らせてもらってあげるからさ。」
「ひぃぃぃ~~~~~~~~!!!ホンッットに申し訳ありませんでしたーーーーー!!!!」
「空っ!!落ち着いてっ!!なにもそこまでいうことないだろう?寝惚けてたらしいし。」
「・・・・・はぁ~~~~~~~~。まぁ、未遂だしな。」
「だが、黒猫クロネ=クロナ。俺らの中で絶対していけない禁忌はなんだ?」
「・・・合意の上でない色事。それに関すること、また、それに関するおふざけ。愛のない政略結婚のすゝめ。」
「そうだ。今回、俺は許すが、普通ならば、これを犯したモノは何人足り(たり)とも、その結果、殺されることになったとしても文句は言えない。たとえ寝惚けてやったことだとしてもな。」
「・・・わかってる。」
座り込んでいたクロナは、頭に乗っかった書物の束を除ける手を止めた。
「【月の国】の者は愛のない政略結婚を無理やりさせた場合、当日から一週間の間にどちらか片方がもう片方の首を絞めて殺したり、寝こみを襲ったり、暗殺したり、謀殺したり、酷いものならば一家皆殺しどころか国一つ、街ひとつ滅ぼすものな。いずれも死んだ方は物凄い悲惨な死を与えられ、その政略結婚に関わったものにまで被害が及び、修復不可能なひどいことになる。しかも手口は巧妙不可思議で誰がやったかも判らなくし、酷い時は殺された奴らの存在まで消される。これを回避する方法はただ一つ、本心から口説き落とし、愛し愛される関係になる事。じゃねぇとどちらかが確実にこの世から消えることになる。・・・ひどい奴は接吻されそうになっただけでも、頭が真っ白になって相手の首を絞めて殺そうとする。・・・ほんと、ぼくらは罪深い。・・・ユウも、もしこの国で好きな子が出来たら気を着けなよ?殺されないように、口説くときは時間をかけて、本心からの言葉でないと、いつか後ろから刺されるかもしれないから。」
急に見た目より何歳も年を取ったような、大人びた、少し哀しそうな、自重する様な顔をして云った。そしてその最後にユウに助言をした。
「あ、ああ。(・・・あの子もそんなことするのか?)」
「その様子だと、だれか気になる事でも出来たのか?」
「え?いや~、ちょっと、気になるっていうか、昨日夢で会ったんだ。ちょっと中身の幼いけれど、とっても可愛い子に。とっても歌が上手だった。」
「「!!」」
「・・・まさかと思うが、その子の名前は鬼夢 夢鬼?」
「そうだ。なんだ、二人とも知ってるのか?」
「・・・知ってるも何も・・・」
「その子は最近【銀雪島】の【妖姫】の側近の【命魂喰らい】神無の妹として、また【鏡の双子】の従姉妹として生まれた、【夢鬼】の鬼夢 夢鬼だよ。妖し者達のアイドルさ。」
「・・・確か歳は、今の見た目通りの12~15辺りか。」
「寄りによってソコにいくとは・・・苦労するぞ?お前。」
「主に妖し達の妨害にな。」
「ええっ!?」
「・・・でも、よくあの子の夢殿に行けたなぁ。ユウ。」
「え?眼が覚めたらオレンジ色のフワフワっとした所で、歌を頼りに行ったら普通になんか、大きな平安時代の寝殿造り風の雅な建物に着いたんだけど・・・。」
「ふ~ん。それじゃあ、ユウは其処にいく資格を持っていたってことだにゃ~。」
「(あ、口調が戻った。ん?)そういえば、夢鬼に会う前に空、お前に激似の白いローブを纏った少女に会ったんだ。本人が言うには空がその少女に似てるのであって、少女が空に似てるのではなんらしいんだが・・・。その少女がクロネ=クロナと同じことを言ってた。」
「「!!」」
「フッ。・・・そうか。会ったのか。あの子に。」
「相変わらず神出鬼没、何でもアリだにゃ~。」
「なぁ、アイツはなんなんだ?知ってるのか?」
「・・・あの子はなんて言っていた?自分のことについて。」
「・・・・・秘密だと。」
「くすっ。ならば僕らがあの子の事を語ることはできないにゃ~。」
「しいていうなら、その時のあの子の言った事は正しく、あの子は“そういう者だ”ということぐらいか。」
「わけわかんねぇ。」
「そういうものなの。あの子に関して考えんのは諦めな。考えても無駄な事の方が圧倒的に多いからさ。それよりもユウ、顔洗った?」
「いや、井戸の桶が重すぎて持ち上がらなくて洗ってない。」
「あっはっはっはっ。じゃあ、そこの泉で洗ってきなよ。泉の水は綺麗すぎるほど綺麗で、飲めるし、端っこの方は其処も浅い。手ですくえるだろう?」
「・・・そうだな。ちょっと云ってくる。」
「「いってら~。」」
―*-*-*-*-*-
「・・・ああは言ったが、落ちないか心配だな。」
「う~ん、あの泉にはウンディーネ(水の聖霊)とウイング(風の聖霊)がいるし、大丈夫じゃないかにゃ~?」
「いや、今あの二人は、ちょっと家族旅行に行っていていない。居るのは悪戯好きなシルフェ(風の精霊)たちと遊び好きのアクアリアス(水の精霊)たちだけだ。・・・だから大丈夫かな~、と・・・。」
「・・・それ、マジでにゃ?」
「うん。大マジ。」
「「・・・・・・・・・・・・。」」
「ヤバくないかにゃ?」
「・・・ヤバいね。」
「!!!うわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」
ボッシャ~~~~~~~~~ン!!!!!
「「・・・・・やっちゃった。」」
「「ユウ!!!」」
ガラッ、パタパタパタパタッ・・・
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ー*-泉の前ー*-
「居たかにゃっ?」
「・・・どこにもいねぇ。」
「ユウは僕等【月の国】の者が持つ特殊能力が強そうだったし、
泉に落ちてどっか別の場所に飛んだかにゃ~。」
「・・・どうやらそうらしい。泉に触れて解った。ユウはやっぱり精霊たちによって遊び半分に突き落とされたようだ。」
「飛んだ先は?わかる?」
「【陽の国】太陽国の中央地下にある【陽乃池】。・・・どうやらユウはご先祖様以上に強い力を持って生まれてきたようだ。それも移動系に特化した、な。そうじゃねェとこの泉は、・・・この世界の水は反応しない。この泉を使って時空間移動なんてできねぇよ。」
「にゃははははは。天津空が、【蒼空の君】が言うなら間違いないね。んじゃ、これからどうする?待つ?」
「いや、多分ユウはついてそうそう捕まるだろう。そして牢屋にでも入れられるかな。だから【黒猫姫】と【望月の君】に手紙を書く。」
「なんでにゃ?」
「【望月の君】には太陽国に凛花という妹が居てな、件の池の傍で子供たちの先生をしているんだ。」
「な~るほど。読めたにゃ。」
「・・・届けてくれるな?【猫の君】黒猫 クロネ=クロナ。」
「もっちろんだにゃ~。悪友兼酒飲み友達である親友の頼み、この僕が断るわけないだろう?」
次回から新章スタート(・・・の予定)。




