現状と帰り方と
「それで、そなたの元の世界への帰り方じゃが・・・」
『そうだ!俺はどうやったら元の世界に戻れますか?それに俺・・・・・今、ちゃんと・・・生きて、ここにいるのでしょうか?・・・幽霊とかになってたりとか・・・しません、よね?』
今更だけど、俺ってちゃんと生きてるんだよね?死んでなんかないよね?
「ふふ、可笑しなことを言う。おぬしが今、幽霊になっているというのなら、わらわらは何なのじゃろうな?おぬしの今の在り方はわらわらにとてもよく似ている。ならば此処にいるわらわらは幽霊か?夢か?幻か?」
まい姫さんは懐から扇を出し、それで口元を隠して笑いながら言う。
どういうこと?
「おぬしは今、手に持つ湯呑に入っている茶の味が判らぬのか?」
まい姫さんは俺の手に持つ湯呑を扇で指して言う。
『いいえ。美味しいと思います。』
突然の変な質問に俺は訝しがりながらも応えた。
「おぬしは風を感じぬのか?」
まい姫さんがその言葉を言い終わると同時にそよ風が吹く。
風は俺の髪と顔をふわりと撫ぜていく。
タイミング良すぎじゃね?
『いいえ。感じますが・・・(何故こんな質問を?)』
ユウは眉をひそめて答える。
「おぬしは痛みを感じぬのか?ほれ、自分の頬を抓ってみよ。」
俺はとりあえず言われた通りに抓ってみる。
『っ痛い!』
普通に痛い!
「ほれ、夢幻でも、幽霊でもなかろう?夢なら痛くない筈だし、幻ならここに座ることも、出された湯呑を持ち、中身の茶を飲むこともできん。幽霊なら味が判らぬ筈だし、風も感じぬ。実態もないから手で物をつかむこともできない。」
『成る程、それでさっきの質問をしたわけですね?』
「そうじゃ。先程の質問は、それを証明するための例題の一部なのじゃがな。」
「だから安心していいよ?君は幽霊でもないし、死んでもいない。ちゃんと此処にいて、生きている。(少なくとも俺にはそう見えるし。)」
「でも、今直ぐに元の世界に帰ったら、今度はまず間違いなく確実に死ぬ。」
『えっ、それって、どういう・・・こと、ですか?』
「それにこたえる前に、先程あなたがこの館に着くのと同時に、【主】から伝言が届いたのだけれど、それによるとユウ君、あなた、事故に遭って死にそうになった時、無意識のうちに自力で時空間移動しようとしたそうよ。失敗して中途半端に終わったようだけれど・・・。」
『ええ!?俺、そんなこと出来たの!?』
全然知らなかった。 俺ってば無意識でも何でもそんなファンタジーとかに出てくるような認知度高い癖に意外と高度な術、使えたんだ。
初めて知ったよ。アハハハ。
ファンタジー=不思議といえば、俺の一族全員、逃げ足と危機察知能力が他の人たちに比べて異様に高いんだけど、それも俺の先祖とかいうヒトとなんか関係あんのかなぁ。
あと、じいちゃんから聞いた話なんだけれど、俺の祖先、ある時からみーんな長寿なんだって。亡くなった曾祖母とか、その前も、その前もずーーーーっと遡って江戸時代の始まりあたりから、不思議とみんな寿命でしか死んでないんだって。
普通なら死ぬ様な事故に遭ったりとかしても不思議と軽症で済んだり、死ぬような怪我とかしても、完治ってわけにはいかない場合もあるけれど、治って死なないで、天寿を全うするんだって。
病 気も、するとしたら軽い風邪程度。みんな丈夫そのもの。一族全員で秘かに不思議だなぁ、でも、ありがたいなぁと言い合ってたんだけれども・・・・・。
これも関係あるのかなぁ。
「(・・・・・関係、あるわね。そりゃあもうバリバリに。)話しを進めて良いかしら?」
『あっ、はい。どうぞ。』
「ユウ君は時空間移動に失敗し、術は中途半端にかかって、あなたは【境界】に落ちた。その代償というか跳んだ衝撃?で、“魂”や“記憶”など、あなたを構成する為に必要な様々なものが欠片となってこの世界に飛び散ってしまったからだそうな。ああ、その中にはあなたの“人としての寿命”の一部も入ってたって【主】が言ってたっけ?」
『ええぇえぇぇ!?それって滅茶苦茶大変じゃないっすか!!』
寿命も“欠片として”飛び散ったってことは、生きられる年数も減ってるってこと!?
つまり、俺の寿命は本来より減っている状態。集めれば戻るらしい。
・・・・・・・・・・・ちゃんと戻るよね?そのまま早死にってことはないよね?
俺はまだしにたくねぇえよぉぉぉぉぉ!!!?
「そう。大変、なんでしょうね。(ずずっ。)」
「まい、ユウ君にとっては確実に一大事なんだよ?一応、呑気に茶を啜ってる場合じゃない筈なんだけれど・・・、わかってるかい?」
「ええ。わかってる。わかってるわ。ユエ。《でも所詮私たちにとっては他人事じゃない?》」
まいは湯呑を置きながら、ユエに言う。
「・・・それで、ユウ君が生きて帰るためには、この世界に散らばる、君の欠片を集め、ユウ君が持って生まれたその時空間移動の術を、完壁に習得する必要があるらしい。」
ユエは『やれやれ、困ったことだ。でも仕方がない』とでも言う様に苦笑して言う。
「わたしも欠片は今どこにあるのか、どんな形をしているのか、一つを除いて全く知らないわ。けれど、この国では珍しいものはイベントゲームの商品になることもある。他国やこの国の一部には、ダンジョンとか、洞窟などもあるわ。もしかしたら・・・・・そういう所に欠片が有るかもしれない。探すのならば、十分に気を着けなさい。」
『わ、わかりました』
『あの、一つだけ知ってるって言いましたよね?それは何処にあるんですか。』
「それはね・・・」
『それは・・・』
「え~とね・・・」
『はい。・・・』
「【主】から一つだけ君の欠片を預かったんだよ。だからここにあるよ。まいが持っている。」
「ユエ!!先に言わないでよ!!もうちょっと焦らしてみようと思ってたのにぃぃ!!」
「ごめん、ごめん。でもさっさと渡してあげよう?それは彼の物なんだから。」
「わかってるわよ。ちょっとやってみたかっただけ。
で、これがユウ君の欠片の一つよ。」
差し出されたのは、まさしく何かの欠片と云える、黄色いダイヤ型の小さな結晶だった。
『これが?』
ユウはその黄色い何かの欠片を指さし、疑わしげに尋ねる。
「そう。いいからつべこべ言わず早く受け取りなさい。じゃないと海に投げ捨てるわよ。」
何の脈絡もなく、まいは海に投げ捨てようと欠片を持った手を大きく振りかぶる。
『!!っそれはダメ!!!』
俺は急いでまいから“欠片”を奪う様に受け取った。すると欠片は俺の中に吸い込まれ、〈事故の日の記憶〉が蘇った。
・・・・・そうだ。
俺はあの日、あまりの暑さに耐えかねて、図書館に涼みに行こうとしてたんだ。
ついでに、数日前から行方不明になってる飼い猫も見つかればいいなぁ、って思いながら。
そして、信号を渡ろうとしたその時、
俺は、トラックに轢かれて吹っ飛んだ。
覚えているのは、
身体中が痛くて痛くて、
焼け付くように熱くて、
痛い所を触ってみると
手が自分の血に塗れていたこと。
誰かが叫ぶ声と、救急車を呼ぶ有り難い声が聞こえたのを最後に、
俺の意識はとんだんだ。
そして気が付くと、
大きな泉と青々と茂った森に囲まれたソラの館の傍にいた。
『…うぅっ!!寄りにもよって一番最初がこの記憶かよ!』
最悪だ!!
頭痛がする。
気分が悪ぃ。
出来れば、これは忘れたままでいたかった。
「どうやら、上手くいったようだね。」
のんびりとお茶を啜りながらユエが呟く。
「そうね。よかったわね、ユウ君」
まいはニッコリと笑って言う。
『ははっ、良かったのやら、悪かったのやら。自分が死にかけた時の記憶だし。』
喜ぶに喜べねぇ。
「良かったんじゃないかな?」
「あ、そうそう。術の制御に関しては後回しになさい。」
『何故ですか?』
「時空移動なんて大技、専門の者かそれが得意なものが傍に居ないと、練習しても今よりもっと死ぬ可能性が上がるだけだし、運が悪ければ魂から存在ごと消滅するわ。無意識のうちに発動することなんてそうそうないし、放って置いても大丈夫。欠片を集め終わった後、修行なさい。その道のプロを紹介してあげるわ。そして自力で帰りなさい。」
『・・・そんなヒト、居るんですか?』
「ええ、居るわよ?なんせ、この国は世界のありとあらゆる不思議をより集めたような国ですからね。」
「そんな者達が居ても不思議ではない、ということだよ。」
「ただね、その子はこの国のとある種族の族長なのよ。だから今は無理なの。」
『はぁ、そうですか・・・。残念です。』
「……というわけで、先に欠片を全て集めてみなさい。そして集め終わったらまたここに来なさい。その時に私が直々にその子を紹介してあげるわ。それと、欠片集めはどれだけ時間がかかっても大丈夫よ!この世界と貴方の世界の時間軸は違うし、この世界から貴方の世界に帰るときにでも時間を弄れば問題ないわ。だから長いお休みを貰ったと思って思いっきりこの世界を楽しみなさい!そして欠片集めに勤しみなさい!」
『はい!俺、頑張ります!』
いささかご都合主義な気もしないでもないけど、まぁ、いいか。
頑張るぞーーー!!オーーー!!
「欠点を言い忘れてるよ?まい。」
「『欠点?』」
「あのな、ユウ君。欠片集めにどれだけ時間がかかってもいいのは本当だけれど、時間制限がないわけじゃないんだ。それがどれくらいで、いつ来るかはオレたちにはわからない。この制限時間を知っている者は【主】と、この世界の神々だけだろうから…。君が死にさえしなければ元の世界に戻れなくなることはないだろうけれど…。それでも出来るだけ早めに集めた方がいいよ?…君自身の為に。」
『(ゴクンッ)・・・・・わかりました。』
「というわけで、今回の私達からの話は以上!
欠片集め、頑張りなさいな♪」
「気を付けてな」
『ありがとうございます!』
「丁度、話しが終わったところか?」
『ソラ!!』
後ろから声がして振り返ると、どこか一仕事終えた感じのソラが入口にいた。
俺はソラに駆け寄る。
あれ? なにか・・・鉄のような臭いがソラから漂ってくるような・・・・・・。
いやいやいや、ないない。そんなことないよね。
ソラが来た時よりも肌が艶々(つやつや)として見えるのも、
顔が晴れ晴れとしているように見えるのも、
腰に差している筆禍叉(?)に血が薄っすらとついているように見えるのも、
・・・きっと気のせいだろう。・・・うん。きっとそうだ。
「一応、迎えに来たよ。ユウはこの国のことも世界のこともまだまだ不案内だからさ」
『ありがとう!ソラ』
ソラ、お前、良い奴だったんだなぁ。
「そういえばユウ、お前これからいく所・・・・・無い、よね。やっぱ。」
『?』
いくとこ?
それってどういう意味だ?
「あ、この子のこの国での住処だけど、空ん家に居候させてやれない?」
まいはユエと共に桃をまぐまぐと食べながら軽く言い放つ。
「『・・・ハァっっ!!!!!?』」
吃驚しすぎてソラと声がはハモった。つか、居候って……。
「ちょっ、待て!!街には宿屋があるだろう!?そこに泊まって貰えばいいじゃねぇか!?偶に来る外からの観光客や、外部の人間はソコか兎の島の宿屋にいつも泊まるじゃん!?どうして今回はオレん家に来ることになんだよ!?」
『そうです!!俺なら宿屋で十分です!それに、これ以上ソラに迷惑かけるのはちょっと・・・・・。』
「いや、・・・迷惑ってわけでは無いんだけどね!?でも・・・」
ソラはボソボソと何かを言い始めるが、誰も聞いちゃいない。
「じゃあ聞くけどユウ君、君、この国のお金持ってるの?お金がないと宿屋には泊まれないよ?」
『あっ!……ゴメン!!ソラ!!お願いだから居候させて!!』
「変わり身早っ!!てか無茶言うなや!!こっちにも都合というもんがあるんや!!」
『何で急に関西弁使い出してんだよ!?キャラづくりか?』
「うるせぇ!!そんなこたぁどうでもいいだろうがっ!!とりあえず俺ぁ嫌だかんな!!」
『そこを何とかお願いしますぅぅぅ!!!』
ユウはソラに土下座でお願いした。
「イ・ヤ!!」
効果はいまひとつのようだ。ソラは断固として拒否した。
『お願いだから居候させてくれ!!この国にいる間だけでいいから!!お願いお願いお願いぃぃ。三百円あげるからぁぁぁ!!』
必死だな、ユウよ。ここまでくるとさすがに笑えてくるぞ?
「使えへんし要らんわ!!オレを動かしたいなら、せめて美味い酒か、酒の肴でも作ってもってこいぃぃ!!」
「それって(まぐまぐ)高いのか安いのか、判らないね(もぐもぐ)」
同感だ。そして【黒猫姫】よ、口にものを入れたまましゃべるな。
あ、ユウがソラにすがりついた。とっても必死な表情だ。
『そんな殺生な!!今この身一つくらいしかない俺にそんなこと言うぅ?
そのまま放置されるとそのまま息絶える自信あるよ、俺。
なのに、なのに、・・・まいさーん、ユエさーん、ソラが俺を見捨てるっていうーー!
右も左もわからない状態なのに、こんな俺を見捨てるって言うんだ。
ソラは俺の命よりも酒の方が大事なんだぁぁ・・・酷いと思いませんか?・・・うぅっ、うぅっ、うぅっ・・・』←泣きマネ
「あはははは(漫才みたいだね。あ、この桃、おいしい。)」
ユエは苦笑しながら桃に舌鼓を打ち、傍観の姿勢。
まいは開いた扇で口元を隠しながらジーっと二人を見る。
「っ、そ、そんな目でオレを見るな!!」 (←どんな目?)
パチンッ。←扇を閉じる音。
「フム。ならば、酒はこちらで用意し、今度クロネ=クロナに送らせよう。だから夢旅 優はソラ、お主の家に居候させいぃ。反論は認めぬ!」
「そんなぁ!!!」
『ありがとうございます!!よろしくな、ソラ!』
まい姫の決定にソラは打ちひしがれて半泣きし、
ユウは嬉々として姫に礼を述べ、ソラに笑顔を向けた。
ちょいと訳の分からない文になってしまった。
とりあえず、欠片一つ目GET。
・・・これからどうしようか。迷うなぁ。




