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第37話 『妻は宇宙人』その後

作者: 山中幸盛

 幸盛は小説『妻は宇宙人』の巻末で、次のような文章を添えてメールアドレスを公表した。


 *ご意見、酷評をお寄せ下さい。ただし、著者からの返信は蚊の涙ほども期待しないで下さい。挑発者のストレス解消につきあうほど慈悲深くはないし、いくばくかの余命は魚釣りや次作の執筆などに使いたいものですから。


 すると今年の四月になって、次のメールが飛び込んできた。


 前略

 本書で実際の生活視点から自閉症を追っているところがとても理解し易かったです。夫婦間で以心伝心できない状況にも屈しない、「苦」と感じないところに山中こそが「異星人」にも思えてきました。恵理が現れて「神」と崇められ、緊張していた糸がプツンと切れてから恵理の「愛」に翻弄されていく山中に、人間味あふれる点で同情しました。

 それと、釣りの話も今までの彼女の話も「これは官能小説か?!」と苦笑するしかないセックスの話も、私にとってはリアルで解り易く書かれているところが心地よかったです。これから三人の関係はどうなるんだろうな、と余韻を残しながらも「面白かったー!」と絶叫しました。

 「あれ?」と首を傾げる人は私の身近にもいますので、何らかの発達障害かもしれない、と気付かせてもらいました。そう汲み取ることで、その人との「コミュニケーションのとり方」について更に学ぶことができた一冊となりました。新世界開拓です。嬉しい気分でいっぱいです。 


 と、他人行儀に感想を述べましたが、実は私は山中さんを知っている者です。知るまでに至った経緯を書きますね。

 私は現在も福岡県に住んでいます。五歳になる孫がいますが、彼は三歳の時にアスペルガー症候群と診断されました。その関係で、「親の会」のある方からこの『妻は宇宙人』を貸していただきました。

 第一章を読み始めてすぐ、主人公が「水郷・蟹江町で生まれ育った」とあるのでびっくり。私が十九歳の時に交際したことのある青年が、愛知県蟹江町の方だったからです。

 私は一気に読み終えて感想を書いているうちに、ひょっとしたら、との思いが強くなったので発信する前にアマゾンの『妻は宇宙人』を検索してみました。すると著者本人がレビューを書いているので大失笑。しかしこのことは著者が何者かを探る上で貴重な手がかりになります。私は「レビューをすべて見る」をクリックし、一つ一つ読んでいきました。そして『人間革命』のレビューの中に「十九歳の時、一人の女の子の心を深く傷つけてしまった。そのことが心因になって、家にあった創価学会の出版物を初めて開く気になった」との述懐を発見したのです。

 この「女の子」って私のことじゃないの? と、いよいよ期待が高まりました。ところで創価学会に対する私の印象は世間のそれほど悪いものではありません。熱心な会員である従姉と友人から色々話を聞かされていて、主人の猛反対がなければ入会しているかもしれないくらいですから、山中幸盛追求の旅も抵抗なく続けることができました。

 そのレビューには「コメント」がありましたのでクリックして読んでみると、どうやら『妻は宇宙人』というブログがあるらしいことが分かりました。試しに文中の指示に従って「妻は宇宙人 プロパガンダ」で検索してみたら、最初から三件までがブログ『妻は宇宙人』のものでした。

 しかし、ここからが大変でした。私は専業主婦ではありますが、商売を営み多数の従業員を雇っているおかげで家でごろごろしていることが多い主人を無礙にはできませんし、次男と長女が近所で所帯を構えていますので孫二人の保育園への送り迎えなども日課の一つです。ですからブログすべてに目を通すまでに三カ月間ほども要しました。

 でも、その甲斐あって、『世界一の名誉学術称号が意味するもの』の最後で本名の水田功を名乗っておられるばかりか近況の顔写真まで掲載されていることがわかりましたし、私と別れてからの水田さんの人生を、ほぼうかがい知ることができました。まさか小説をお書きになられているなんて夢にも考えたことはありませんでしたが、奥様がクモ膜下出血でお倒れになったこと、四人の幼いお子さんを抱えてご苦労なさったこと、これらのことは実話のように思えます。

 いま私は感慨を深くしております。十九歳の私と水田さんは正真正銘の処女と童貞でした。初めてのその時、水田さんの○○はなぜか不調で、焦れば焦るほど使い物にならなくなりましたよね。そして次に会った時、いきなり「好きな女ができてしまったので別れてくれ」と言われた時は青天の霹靂でとても悲しかったのですが、四十年後の今となってはほろ苦くも懐かしい思い出です。

 『第五章』のようなセックスができる(?)伴侶に恵まれた現在の私は幸せ者ですからご安心を。何より、「私のおかげ」で信仰に目覚めることができてよかったですね。ますますの御健筆を見守っています。うふっ。

                                              草々




 

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