最後の死
23時55分。
私は、そっと物陰からみどりさんの部屋を監視し続けた。
いつ、犯人がみどりさんを殺しにやってくるかを、待つために。
ここで、殺人事件が起きなければみどりさんが犯人である事は間違いない。
よもや、殺人者が自殺などするはずもない…と思う。
いや、ここで見張っている限り、密室殺人でも起きない限り
死ぬことはないはずだ。
だが、一つだけ懸念事項が私にはあった。
これは事件を揺るがす由々しき問題であることは間違いなかった。
まもなく、24時。
私が眠る時間。
明日の日朝キッズタイムに遅れるわけにはいかない。
だが…人命がかかっていた。
ここは、涙を飲んで、動画サイトで録画を探すほかない。
そういえば、なぜか、ももいろ動画とかひまわり動画には
日朝キッズタイムがアップされないのに
プリキュアだけは、うpされるのはなぜだろう。
しかも今期になってから異常にうp速度が速い。
特撮とアニメは畑が違うと言うこ…
ガスッ。
後頭部に、強い衝撃を受けた。
それと同時に強烈な痛みが、頭に走る。
それは、幾重にも重なって、痛みの螺旋を描いているかのようだった。
頭痛が痛い、とはまさにこの事を表現にしているのかもしれない、と思った。
いや、そんな呑気な考察をしている暇などない。
今こうして私は、命の危機に瀕しているのだ。
私は、痛む頭を抑えながら後ろを振り返った。
そこには、鈍器を持った。
ヴァネッサの姿があった。
「くっ…。まさか、ヴァネッサ。君が犯人だったと言うのか」
「いや、違うね」
そうヴァネッサが言うと、後ろからワンダー雅光とみどりも顔を出した。
「まさか、共犯だった、だと…」
「いや、だから違うって。犯人はだれかはわからないよ?
けどさ、あることに気づいたのさ。
これまで、死んだ人たち。
共通点は、最初のを除いて、全部あんたが犯人だと断定した人間ばっかりじゃないか」
「そうだとも…」
私は、声を振り絞り叫んだ。
「だからこそ、こうして、みどりくんの部屋を見張っていたんじゃないか。
犯人の挑発に乗ってやったと言うのに、どうして邪魔を…」
「いや、私たちからしたらそんなのどうでも良くてさ。
とりあえず明日、早くこんな危ないところから帰れたらいいんだよね。
でも、殺人犯と一緒に一夜を共に過ごすのは嫌じゃん?
だからさ、三人で話し合って決めたんだ」
ヴァネッサは鋭い眼光で私を見る。
「とりあえず、あんたが犯人って事で手を打とうって。
本当の犯人は、この中にいるのかもしれないし、
もしかしたら、別のところに紛れてて
私たちを狙っているのかもしれない。
けど、狙っているって事は、ずっと私たちを見ているんだろ?
しかも、今この場は宿泊客勢揃いだ。ここだけ監視していないはずがない。
だからさ、聞いてるんなら、言ってやるよ。おーい、犯人。
このホームルを犯人に仕立て上げて、それで終わりにしようぜ。
犯人のあんただって、捕まりたいわけじゃないだろうし。
私らだって殺されたくない。
けど、警察は色々真実を暴こうと躍起になるだろう。
三人もの連続殺人だ。
事件を解決できれば、勲章物だからね。
だから、警察さんには、わかりやすい真実をプレゼント。
殺人犯さんには、自由をプレゼント。
そして、私たちには生をプレゼント。
しかも、行く先々で殺人事件を発生させてしまう疫病神を退治できるんだ。
これでいくつもの殺人事件が未然に防げることだろうね。
って事でどうかなって提案。全てがwin-winさ。
いや、犯人さん。声は出さなくていいよ。
とりあえず、私たちを殺さなければいいだけだから」
「ふん」
思わず、その推理の論理の稚拙さに、私は鼻で笑うほかなかった。
「何を言っている。この阿婆擦れめ。
私を犯人に仕立て上げるだと?この探偵である私を?
真実の探求者である私を?
今まで、多くの難事件を解決してきた私と、ただの宿泊客。
どちらを警察は信じるかね?
そして、よもや私が自ら殺人犯などという汚名を被ると思うのかね?
そんな嘘をつくとでも思うのかね?」
「思わないさ」
ヴァネッサが。鈍器を振り上げた
「だから…」
ヴァネッサが、私の頭上に再び鈍器を振り下ろす。
幾度も、幾度も、幾度も。
痛みと共に意識が薄れていく。
頭部から生暖かいものが滴り落ちるのを感じた。
「よく言うじゃん?死人に口なしって。
犯人が殺しにかかってきたので、正当防衛しました。って事で」
遠くからそんな声がした。
「私らにとっては、『正』より『生』の方が大事なんでね」
その時、ポーン、ポーンと
時計の音がなった。
時計の針は24時。
探偵さんはおねむの時間。
探偵さん、お休みなさい。
永遠にいい夢を。