翌日モーニング
朝。
それは、爽やかにして清々しい一日の始まり。
の、はず。
けれど私の目の前に広がる光景はこうだ。
まず、何故か食卓テーブルの上で山ぶどうの魔王が体操をしている。
よくもまあ、あの細い(細すぎるだろう)手足で屈伸とかするもんだ。
「おいっちにーぃ。おいっちにーい」
そんな掛け声の横では、……ウサギの形に可愛く切られたリンゴが喋っていた。
「ちょぉっとぉ、早く食べてくんないと変色しちゃうんだけどぉ?」
とても野太い声だ。
例えるなら、男子砲丸投げの選手が会心の投擲を成功させたときに出す雄叫びにの様な声だ。
繰り返す。男子砲丸投げの選手の雄叫びだ。女子では断じて無い。
つまり、聞く限りはオネエさんだ。
「んもぉ、勇者の小娘! フォーク刺したんだから、ちゃんと食べなさいよ!」
これだから若い娘は、とぶつくさ言うリンゴの魔王(推定)を、誰が食べれると言うのか。
すっげー、食べたくないって。
しかも今年実ったばかりのリンゴに“小娘”とか言われたく無いし。
「ちょっと、ちょっと……」
私はリンゴの魔王(ウサギ型)に突き刺したフォークから手を離し、山ぶどうの魔王を突っついた。
「はうっ」
そう小さく叫んで転がった山ぶどうの魔王は、じたばたともがきながら文句を言って来た。
「酷いじゃないですか、勇者様っ。一回転がると起きるの大変なんですよ!」
問題はそこか?
「や、あれさ。もしかして、リンゴの魔王なの?」
皿の上のウサギ型のリンゴを指差しながらこそこそ聞くと、山ぶどうの魔王もそちらを見た。
私とぶどうの視線の先で、ウサギ型のリンゴは「ふんっ」とか叫んで横倒しになると、にょきっと伸ばした手足で立ち上がった。
怖い怖い怖い怖い! フォーク刺さったまんまだから!
若干冷や汗(果汁)をかきながら、山ぶどうの魔王は頷いた。
「ご推察の通りです。あれがリンゴの魔王です。しかし、やつは、その……」
語尾が徐々に濁っていく。
気持ちはわかるが、言うなら言ってしまえ。
「その、恐ろしい事に、その……」
「ああん。私、カラダは男だけどココロはオ・ン・ナ。リン姐さんって呼んでもいいわよぉ」
山ぶどうの魔王の台詞を奪って、リンゴの魔王はしなを作りながら言った。(リンゴって意外としなるんですね)
私はと言うと。そのシュールな光景から目を逸らしつつ、傍らのぶどうに問い掛けた。
「あのさ、果実って……」
皆まで言うなと、山ぶどうの魔王は手を上げた。
「私どもに雌雄の別があるのは花の段階までです」
例外はイチョウくらいでしたよね。
イチョウは木からして雌雄の別があります。
まあ、それは良いとして。
ウサギ型のリンゴの魔王が登場です。
そして、何故か居着いた山ぶどうの魔王。
その辺の事情はヤムオチです。
い、いつか書くかも……?