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Weiss/アン・フォールンオーダー(堕天使の抵抗)  作者: 四葉 一羽
Ⅰ: エピソード・ワン〈運命の出会い/銀河との遭遇編〉
9/15

ログ#5「呼称」


「あの悪夢は現実か?」


 開口1番に出た言葉だった。

ネイティブの少女と出会い彼は一命を取り留め健康状態を取り戻した。

しかし魔法という奇跡には契約(じょうけん)が存在していた。

生身の体の感覚を確かめながらベッドから立ち上がる。

無機質な宇宙艇(うちゅうせん)の部屋の中ではあるが呼吸が問題無く出来ている事に遅れて気づく。


『『スミリ様との出来事なら全て現実に起こった事ですね』』


「最悪だな、あれらが事実とは。

マインドコントロールで記憶も消せないな。

俺が死ぬ。

検査後に、ってあの女はドコにいるんだ?」


 スミリの言った半径20メートル以上離れてはいけないと言う言葉が事実ならこのまま1人帰す案は却下せざるおえなくなった。

そして試す事も今は憚れる。


 オカルト的な魔法により延命された今、それがどう作用しているのか全貌が不明瞭な事からも彼女と敵対するのは芳しくない。

そのため彼女を此処に居留させるか彼女の帰路を伴にする位しか選択肢が無かった。


『そのスミリ様ならキッチンで食事の準備中です。』


「それは料理をテーブルに並べていると言う意味か?

それとも料理を作っていると言う意味か?」


『『少佐の予想通り後者が正解です』』


「悪夢は続くな」


 魔法に依る処置後のチェックで彼の肉体は変化を遂げていた。

身体その物に魔力が溢れ、血管には魔力を流す存在しない器官が発生していた。

その証、印のように強い魔力反応が胸部の左側に概念とした人と人が向き合い星を模しような痣が出現していて右手の手の平にも発射口のように小さな電撃が渦巻いた痣があった。


 体を蝕んでいた無知の有機生命体に適応し、この惑星で宇宙艇から出られるようになった事を意味している。


「魔力ねぇ。

なんだこれは………はぁ。

まずは何より、あの女だな。

体がキツイ。車椅子か何かを出してくれ」


『はい、スミリ様にもそう伝えます』


「伝えんでいい」


◇◇◇


 キッチンルームからリビングフロアに運びこまれた料理は大テーブルに山盛りにあった。

そこには得意げな顔で待ち構えているスミリの姿があった。

そんな彼女を華麗にスルーして “よぉ!”と片手で挨拶だけしてテーブルに着く。


「ふん、素直じゃない奴め。

エヌエースーさんという幽霊みたいな人に聞いたんだが私も食べられるらしくてな。

味見ながらに完璧にできたんだ、どうだ?」


「幽霊さん?

あ、あぁ」


「ん?

見たことの無い食べ物や道具に戸惑ったが、どうだ?

上手いし旨いだろう?」


「不味くは無い」


「そうか……不味くは無いか。

無いが…………なんだ?」


「………食べれるな」


「そうかそうか!

食べる手も止まっていないしな!

そんなに美味しいか!」


「そんな事より、だ」


「そんな事とはなんだ!!」


「いいから聞いてくれ」


「よくは無いッ!!」


「はぁ〜ここに長居はさせられないんだ。

それは分かるな………君の家族や集落の人たちに怪しまれる。

君の向かった先の森である此処を捜索し始められて最悪、カモフラージュを突破される可能性もある。

君に気づかれたみたいにだ。」


「それは〜〜そうだな!

でもどうする気なんだ?」


「君と行くしかないだろ。

じゃないと別れた瞬間に死ぬんだろ?」


「あーーーー!

忘れてた」


「忘れないでくれ。

あと大声を出すな」


「文句が多いな。お前…君は、………その…名前教えてくれ」


「今はノヴェ=ヴァイスだったか?」


『はい。

現在の登録発行コードはW5816 - ノヴェ=ヴァイスです。』


「だ、そうだ。

ヴァイスのが発音的にも咄嗟にも出やすいだろうから、そう呼んでくれて構わない」


「変な言い回しだな………まぁいいか、分かったヴァイスくん」


「君って……別に、こだわってもないが年下だろ」


「そうなのか?

でも関係ないさ、親しみに上も下もないだろ?

それに私達は、あ!

私も名乗って無かったな。

私はスミリ・グロウだ!

よろしくな」


「詠唱時に名乗ってたろ………実は…別によろしくもしたく無いんだが宜しく頼むよ」


「君は直ぐに意地悪するな〜〜もう可愛いじゃないか、ほら握手♪

したくないか握手、なんなら頬にキッスでもいいぞ

今なら我が一族の友好の証をするか?」


「それが何か知らないがまた今度な。

だから握手で許してくれ」


 握手だけに留めてヴァイスは話題を戻した。


「暗くなる前に君の家に帰るぞ。

いいな?」


「あぁ、両親にぜひ会ってくれ。」


「……………。

あぁ。

今、君の持ち物を持ってこさせるから食ったら行くぞ。」


「そうだな食べきってから帰ろう。」


「これを全部食べろと?」


「そうだ食べきれ!」


「………分かったよ」


『では食べ終わるまでに私の疑問に答えてくれませんかスミリ様』


「なんだ、何でも答えようじゃないか!

これ美味しいな。

このパスタって奴だったか、ほら食べてみろ」


「よせ、自分で食べる。

持ってこなくていい。

ちゃんと食べてるだろうが」


『何故、此処に訪れたのですか?』


「そんな事か。

簡単な事だ。

早朝に妖しい流れ星が落ちただろ。

隕石かもと見に来た。

火災の心配もあったからな。

ん、って事はヴァイスは空から落ちて来たのだな」


「そうだな。

だが妖しい……か。

そんなに目立ってたか?」


『スーツが発する緊急信号の光を流れ星と誤認したのでしょう』


「なるほどな」


「そうなのか?

でスーツとは何だ?」


「言っても分からないだろ、そのうち教えて……は…やれんから忘れろ」


「私を除け者にするな!

まったく、ならもっと食べろ!!

ほらほらほれほれ!!

これも旨いぞ」


「おいやめろ、クチに入れるな!!」


『仲がよろしい事で……。』


 その後も暫くはヴァイスとスミリの口喧嘩の、やり合いは終わらなかった。

そして彼が温かい料理を食べるが久し振りだったというのを彼女が知るのはもう少し先の話である。


◇◇◇


 外は曇りで暗く雨が降っていた。

宇宙船の外壁に落ちて音を立てるが中までは聞こえてこない。

体調の良くなったヴァイスが再び大地に下りる。


「呼吸出来てるな……。」


 瞳を見開いて驚き今日1のリアクションをする。


「な、疑っていたのか!?

失礼な男だなヴァイスはぁ!」


「呼び捨てか……。」


「今さらか!?

食事中から直々(ちょくちょく)、ヴァイス呼びしていたんだがな?」


「そうか?」


『承知で無視されていたのでは?』


 ヴァイスとスミリの周囲に浮遊する立方体(ダイヤモンド)型の結晶のような遠隔操作されているNSの分体機から音声が流れる。


「だと良かったんだがな。

言っても仕方ない。

モニタリングする限りは村の住人がアンタの帰宅の遅さに騒ぎ出してる、急ぐぞ」


「あっあぁ。

それで泥濘んでるぞ?

雨具を持ってきてないからな、濡れるぞ?」


 宇宙艇の雨を凌ぐ音を屋根にして聞きながら覗き土をチョンチョンする。


「コンバットスーツで抱えて行くのはダメだな」


『それに修理中ですしね。

スミリ様用に調整するというのも有りますが時間が掛かりますから名案とは言えませんね』


「ならバイクでいくか。

見せても今更だな。

タイヤ痕は残すのも何だ、ホバーだ」


『かしこまりました』


「おいおい!?

なんだぁこれはぁーーーー!!!」


 何もない空間から突如、現れた白く光沢している大きな物体にスミリは驚いて腰を抜かして下部を泥に汚してしまった。



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