ログ#2「遭遇」
謎の無機生命体の処置は完全には成功せず、対抗策を羅列しては演算領域内で失敗ばかりが積み重ねられていくのみで時間が過ぎていった。
それと同時進行で周囲の探索も開始される。
ドローンを飛ばし、人工衛星が打ち上げられる。
『情報収集がてら、こっちは状況確認の答え合わせだな』
『『では順序立てて最初から始めましょう。』』
『そうだな、記憶の齟齬がないかも含めて……だ……。』
言いながら飲み物を取りに行き、入れる直前で今はアンドロイドの体を操作している事に至り自分の緊張感の無さに小さく笑って席に戻る。
『『どうしました?』』
『なんでもない……………パトロール中にクリーチャー群の潜伏を確認。
敵対行動を感知後、戦闘に突入。
それから敵の攻撃で………どうなったんだっけ?』
『『ブラックホールやワームホールの類いに吸い込まれて現在です。』』
『そうだった、あれがホワイトホールの安全設計で良かったよ』
『『実在していたとは驚きですね。
解明すれば快挙ですよ』』
『1度だけ、それも一瞬だぞ。
解析の使用がない。
負の質量の存在証明か』
電子音が鳴り話が中断される。
『『1万通り目の失敗です。』』
『引き続きフィードバック、そこから失敗も派生させて再開。
んで現在地は?』
『『本当に他人事のように云うのですね。
ご自分の命だというのに』』
『その方が気が楽だろ?
それに、それこそ今更だ。
で……現在地は?』
『『転移前の宙域、エリア・タイガーポイント P2-P-49047901089835から未登録座標のマップ及び惑星です。』』
『ニューレコードか………仮設基地艦と本部への連絡は?』
『『どちらも途絶、応答もありません。
吸い込まれる直前に緊急信号を送りましたが成果は無いと思われます。』』
切り替えた画面にはDISCONNECTの文字が表示されている。
そこにCautionと警告音と共に出てくるのを数度、スワイプして別の画面に替えるとリアルタイムの映像を見る。
ノイズや音声も荒いため音量を下げる。
『重力や酸素も許容範囲、むしろ平均的か。
月や太陽も1つずつだ……放射線・放射能、放射性も規定値の範囲内か。
本当に地球なんじゃないか?』
『『いいえ、有りえません。
旧名太陽系第3惑星 地球とは宙域そのものが異なります』』
『分かってる。
やはり見大きさと言い、見たことの無い天体だな。
自転と位置取り、陽と陰や方位、経度と緯度から算出。
この天体の四季は春、時間は朝の07:15‥‥くらい、だな。
惑星χをワールドクロックと分けて記録に追記、続行。
外に繰り出してみるか?』
『『スーツは修理中。
予備の物も外界環境に対応していません。
そのアンドロイドで外出する御積もりですか?
正気の沙汰とは思えませんが?』』
『悪かったよ〜
はぁ……悪かった。
んで、えーーおっと、んーーと逆算すると、この惑星に墜落したのは1時間ちょっと前になるのか。
気絶してた、お陰で毒ガスの影響も浅かった訳だ』
『『現在の銀河技術の人類には有害で有って、この惑星の住人には有り触れた物質ですから、それに適応した進化を────5キロ先に集落を捉えました。』』
『おいっ!これをフラグと言んだぞ。
にしても、お早いフラグ回収だな』
『『アウストラロピテクスやパラントロプス、ホモ・サピエンスに近い進化を辿った人類、人間の姿を確認。
モニターに出します。』
『おっ、こりゃ珍しい。
人型タイプで見た目も遜色なくソックリだ。
文明レベルは2〜3って所か。
接触する気は無いが映像から言語でも収集するか?
ってなんで調査部の仕事してんだか。
…………ホントに大発見だな。』
最後は呆れたように静かにトーンを下げて告げる。
『『帰還した際にはまた顕賞されてしまいますね』』
会話はゆっくりになり船内もそれに合わせるように冷たい空気が流れる。
『そうだな、無事に帰れたらな………。』
我に返った静かな心と頭に、クチにしながら言い聞かせるように自分の体を見て踵を変えていた。
それから半日が経過するが体を治す糸口はまだ発見も出来ず終いの、その時だった宇宙艇が揺れたのは────
◆◆◆◆
茂みから木の枝や幹に飛び乗って森を走る影が1つ。
その正体は1人の生命体だった。
マントにフードを顔には鴉の仮面、くちばしマスクやペストマスクに近いソレを被り頭を隠している。
素早い動きで目的の場所に一直線に向かっているのが分かった。
草木や自然に気を使い傷つけないように細心の注意を払いながら進み、ある一点で止まる。
何故なら何かが通った跡がそこで終わっていたからだ。
「これは酷い…………。
雨も降ってきそうだな、帰るか。」
声はマスクで、こもっている。
触っていた土を落とし立ち去ろうとして動きを止める。
「……災害ではないな。
ん?
これは……誰か居るのか!?
誰だっ!!
………返事は無しか。」
言いながら背から短剣を取り出し見えない何かに向ける。
「ふぅ〜。
警告だ!!
5秒以内に姿を見せ無ければ攻撃する!!」
構えた短剣が光り切っ先に周囲から空気の渦が巻きエネルギーが集まっていく。
「5・4・3・2・1……知らないぞ
…発射ッ!!!」
勢いよく風の塊が何も無いはずの空間に追突して爆発音を山に響かせた。
◇◇◇◇
『にしても被害がヘルメットの一層だけに留まったのもタルタロス社製だな』
『『いえ、今回からオズ研究開発所に試験的に変わっています。』』
『ウソだろ。
奇跡が起きたのか………生まれて始めて神を信じたよ』
ドカーン!!
大きな揺れが1度、それから小さな揺れが直ぐに連続で発生する。
『なんだ!?
モニター!
ったく、動物でも激突してきたか?
レーダーや各種センサはどうした!?』
『『本船が攻撃されています
レーダー外の頭上から現れた模様です。』』
『なにぃ!
映像早く映せ!!』
『『カモフラージュ、突破されました』』
モニターに宇宙艇の前のリアルタイム映像が再生される。
『おいおいっ!!
しかも原星住種人だとっ!?
あれは攻撃モーションか!?
さっきの奴か、何する気だ!!!
Z粒子圧縮、装填!
バリアー展開っ早く、急げぇ!!
おいおいマジか、数分前の映像出してくれ!』
リアルタイムの映像の横に過去映像が映し出され、その映像をタップして大きくズームする。
『『何かを言っていますが言語学習のサンプル回収が済んでいません。
手振り素振りから警告ではと予想されます』』』
『だろうな。
これは、さっき見つけた集落の人間だな。
服装が似てる、って第二波来るぞ!!
高出力でバリアー張れ!!』
『『ダメです。
3層までのバリアーが割られました。
先程より威力が上がっています。
備えてください。』』
再度、船体が揺れて壁際まで吹き飛ばされる。
宇宙艇の家具等は船内に張り付けられているため彼に落ちてくる事は無かったが細かな物や雑貨等は彼と同じように壁に激突していた。




