エピローグ
今日は夏のコンパ。
あえて私とサトシは別のテーブルに着く。
私達の関係を知る者は少ない。今日も別々に店に入り、別々に行動する。日常昼間もサトシにあまり纏わりつかないようにしている。他人には私達は仲が良い知り合いといったスタンスを貫いている。他人を装い関係を隠すのは遠く離れた家族対策でもある。
私はサトシとの関係を復活させた。
でもこの関係は何と呼ぶのだろう。恋人?セフレ?
婚約者でないのは確か。
サトシとは同棲していない。夜を共にしても一度は部屋に帰るようにしている。噂対策ではない。サトシと居る間は最高の自分であるように心がけているから。気を抜くのはアパートに戻ってから。そして毎回出会いから始める。これが私流の付き合い方。
サトシとの結婚は諦めている。でも全く希望がないわけでもない。歳をとれば親、親戚を無視して結婚もできるし、悪評も薄れてるかもしれないし、サトシの優秀さが家族からの評価をひっくり返してくれるかもしれない。
だけれども、夢を見すぎてはいけない。
それは常に自分に言い聞かせている。
酒宴は2時間を超えた。
今日の私のガード役はタカアキ。毎回サトシだとあまりよろしくない。
「あー、天野さん」
「ヤバいねあれは。5号ちゃんもそう思う?」
「5号って言うな」
向こうの席で完全に酔い堕ちた天野さん。彼氏なしの1年の天野さんが男二人に挟まれている。あれは狙われているね、身体だけ。天野さんは化粧直しと体調を整えに行こうと立とうとする。だがぐらぐらだ。
それを支える男二人。天野さんが置きっぱなしにした手荷物も持ってあげている。持ってあげたのはこの場に戻らない為か。
私はスマホを出す。
「何してるの5ちゃん」
「号抜くな」
「だから何してるの?」
「サトシに報告」
サトシのスマホに天野さんのピンチ予告を送る。おバカモードの3人と盛り上がってたサトシはやっぱり天野さんの窮状に気づいていなかった。
「いいの?」
「いいのよ」
「完全にフラグ立てたよね自分で」
「知ってて教えない方がサトシ怒るわ。嫌われたくないし」
サトシがスマホを見る。居たはずの場所に3人はもう居ない。
立ち上がるサトシ。
出て行くサトシ。
きっとサトシは天野さんを助けに行ったに違いない。大丈夫、きっと上手くやるはず。だってサトシだもの。
「ちょっと見てくる」
そう言ってタカアキも出て行く。
数分で戻ってきた。
「送ってくるってさ」
「男は?」
「もう居なかった。で、今度は5号ちゃんのほうが危険だから俺が送ることになった」
「5号いうな。あと襲わないでよ」
「襲ったら殺されるし、あんたに。まああの二人組がムラついて5号ちゃんに向かうとも限らないし、心配だから俺が送れってさ」
サトシは完全に善意の行動だろう。でも私からしたら・・・
「サトシまた惚れられるわね」
「だから教えなきゃ良かったのに」
「言ったでしょ。言わない方が怒られるって」
サトシの恋人が増えるくらい我慢する。言わないで天野さんが酷いことになって私がサトシに嫌われるよりマシ。
「ねえ、天野さんがサトシに惚れたら何号なの?」
「確か8号」
「いつの間に」
「あんまり短いのは数えてないけどね」
「サトシ酷いわ」
「酷いな」
「そこ笑うところ?」
「5号ちゃんだって笑ってるじゃない」
ああ、可笑しい。笑いすぎて涙が出る。
まったく。
女の子に優しいのは変わってないわね。
サトシ、貴方には貴方のポリシーがあるのだろうけど。
せいぜい刺されないよう気をつけなさい。
お読みいただきありがとうございました。




