春 新歓
ヤバい。汗が止まらねえ。
なんで斜め前のテーブルに森川が居るんだよ。
俺とあいつの間にはざっくり7人ぐらい挟まってるがまるで目の前で睨まれてるような恐怖心。
あの笑う時の目つきはなにかしでかす前の森川の顔だ。
みんな森川をか弱い小動物みたいな女と思っているが、あいつはそんなタマじゃねえ。心の内に野望と殺気を秘めながら動く女だ。なんでここに来た。
俺に何の用だ?何でだ!追いかけてきたのかここまで!今日は他校のやつは呼んでない。つまり来たのか我が校へ!
お別れセックスは丁寧に誠意を持ってしたはずだ。別れにお前も納得して頷いた。もうお前は俺に頼る必要なんてないんだ。
森川は割と良いとこのお嬢さんだ。俺と別れて元の安定したレールの上を行けば悪い男からの汚点もただの昔話になる。
俺とお前は住む世界が違う。
いや俺も女にはモテる。それは自覚してる。
だけど俺のことはやめておけ。また悪い評判が立つぞ。
どっかの国の哲学者が言ってたな。女の価値は男で決まる。お前、絶対に俺を選ぶなよ!後悔するぞ!せっかく底を打って上がり出したお前の評判がまた急降下するぞ!
「おい、あれって・・」
タカアキが森川をチラ見しながらおれに囁く。
森川は目立つからな。なんたってあの美貌だからすぐ気がついただろう。高校の頃のように標準的な見た目になるような服は着ずに、THE森川亜沙って感じの最高のファッションだ。今日の女の中では2位以下を大きく引き離したぶっちぎりの美人。自己紹介で周囲の女達が勝手に自分を卑下してるじゃねーか。戦う前から敗北宣言だよ!
当然タカアキも森川のことは知っている。あの時の事情は全部は教えてないが元セフレと認識してるだろう。因みにタカアキが森川に付けたあだ名は「5号ちゃん」。タカアキ、絶対に5号ちゃんって呼ぶなよ。あいつの恨みを買うと後が怖いぞ。元婚約者の留年も絶対あいつがなんかしたからだぞ!
ああ、森川!その酒を飲むな!
素直にそんなヤバい色のハイボール受け取ってんじゃねーよ!




