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0.迷える羊は夢を見ない

 事件の後始末が終わった頃、タイムはカレンにお化け時計塔に呼び出された。

 二人きりで時計塔の神様の胸像を見上げる。


「兄さん……あのね」


「元の場所に戻したのか……お前が見つけたんだよな? それ、皆には黙っておきな」


「何で?」


「それがあるとまた悪いことが起きるかもしれないから……」


「でも、僕これが有ったから、皆を守れたよ?」


 タイムはカレンが何を言いたのか分かっていた。

 あんなに大雨が降ったのに、中の川は溢れなかった。

 その理由。分かっていながらそれを言ってはいけないとタイムは釘を刺す。


「……そうだな、お前は皆を守ったよ。でも、それあると今度はお前が危ないかもしれないし、お前を守ろうとして俺が死んじゃうかもよ?」


「やだ! それだけは絶対に!」


「うん、だから、これは俺達だけの秘密……」


「秘密、どこに隠したらいいかな?」


 ここでは何れ他の兄弟やヤロウに見つかってしまうかもしれない。

 だから別の場所に隠そうとカレンは言う。二人を見下ろす神様の胸像の目が光る。


「……あの花壇に、隠そう」


「あの花壇? キンセンカの?」


 施設の花壇。いつも部屋から見えていた、タイムとカレンが世話をしたあの花壇。


「そう……もう誰も掘り起こさないと思うから」


「うん……」


 それは施設がすぐに今以上に使われることも無いだろうという宣言。

 頑張っても守れる物は限られる。

 今は手の届く範囲だけしか守れないからと、タイムはごめんなと呟く。

 施設は大事だった。

 けれどタイム一人がどんなに頑張っても無理だと知った。当たり前だ。セイボリーが亡くなってからの二年、誰もが何もやってこなかったわけではない。


 今もタイムの兄弟達は施設を守るために動いている。

 そしてそれは少しずつ成果が出始めている。タイムが今更手を出せることは無い。

 ディルが施設に回せる資金はまだ確保できてはいない。

 ディルの怪我の事もあり時間がかかるかもしれないと言っていた。

 だからタイム自分が守りたいモノを、手の届く範囲のモノだけにと決めた。

 一晩どころか、一月もかけてそう導き出した。

 自分ならば何かができるなどと言う夢はもう見ない。

 ただ大切な人を守るため、タイムは神様の胸像に手をかける。

 キラキラと輝く瞳が、タイム達の決断を静かに見ていた。

これにておしまい。

年始からお付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございます。


最後に登場人物紹介を掲載しますので、そちらを隅から隅までご覧になっていただけたら、大人の事情が分かるかもしれません。

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