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虐げられし陰の皇女ですが、生贄嫁いだ隣国で「蛮王」に甘く愛され、飯テロ&内政チートで国を救うことになりました  作者: 夏野みず
私たちの未来へ

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海洋への野望と新たな課題

 帝国との和睦により、トロイセンは大陸の主要三勢力の一つとして国際的に認められ、平和な時代を迎えた。この和平は、火砲という絶対的な武力と、私の外交戦略がもたらした成果だ。


 帝国から提供された高度な土木建築技術は、王都の整備と高炉建設を飛躍的に加速させた。特に、羅針盤に関する知識は、ロキニアス王に新たな野望を抱かせた。


「スーザン。この羅針盤があれば、私たちは海を渡れるのか」ロキニアスは、羅針盤を手に取り、その針が常に北を指すことに驚きを示した。


「はい王よ。羅針盤は、航海の精度を格段に上げます。トロイセンの資源は大陸に留まりません。海を渡り、新たな貿易路と資源を探すことができます」


 私は、彼の征服欲が、内陸の土地争いから、海洋へと向かうことを歓迎した。海洋貿易の独占は、トロイセンを経済的にも揺るぎない大国へと押し上げる。


 しかし、羅針盤があっても、トロイセンには船を造る技術が決定的に不足していた。


「フィリップ殿を呼び、羅針盤の技術を解析させろ。そして、海を渡る巨大な船、帆船を造るための技術を確立させよ」ロキニアスは、すぐに命じた。


 王立技術研究所は、休むことなく次の課題に取り組み始めた。火砲開発チームは、そのまま造船技術開発チームへと移行した。


 フィリップは、初めて手にした羅針盤の原理を解析し、その仕組みを完璧に理解した。


「王妃殿下。羅針盤の原理は理解しました。しかし、船の設計に関する知識が全くありません。帝国の資料にも、船の安定性や速度に関する技術的な情報は含まれていませんでした」


 彼の言う通り、帝国が提供したのは、羅針盤という道具に関する知識だけで、それを最大限に活かすための造船技術は、巧妙に隠されていた。


 私は、自身の知識の限界を感じた。現代の工学の知識は持っているが、この時代の技術レベルで、安定性と速力を兼ね備えた大型帆船を一から設計するのは困難だ。


 私は、古代アステリアの学術書の中に、何かヒントがないか、夜を徹して調査した。そして、教皇庁から引き渡された、古代の天文学と航海に関する写本の中に、興味深い記述を発見した。


 それは、古代アステリアが、遠い過去に海洋国家として栄え、大陸の外の島々との交易を行っていたという記録だった。そして、その航海術に関する知識は、教皇庁が「異教の書」として、最も深く封印していたものだった。


「これだ。フィリップ殿」私は、その写本の一部をフィリップに示した。


「この写本には、船の竜骨の設計や、帆の面積に関する、物理的な安定性の計算が含まれています。これは、帝国の技術ではなく、私たちの故国アステリアの知識です。あなた方の幾何学を、今度はこの船の設計に応用してください」


 フィリップは、目を輝かせた。彼は、火砲の成功によって、知識の融合がもたらす力を信じている。


「王妃殿下。直ちに解析を開始します。この知識と、北方の豊かな木材資源があれば、必ずや海を渡る船を完成させます」


 ロキニアスは、造船に必要な木材の確保と、海に面した港の選定に、自ら乗り出した。彼は、王妃の知恵が示す方向に、迷いなくその武力と資源を集中させる。


 彼の傍らで、私は、トロイセンの工業化を加速させるための次の計画を進めていた。それは、ガラス製造技術だ。


 羅針盤のレンズや、顕微鏡のレンズ、そして将来的に王都の照明を改善するためには、高品質なガラスが不可欠だ。このガラス製造技術もまた、私の知識から、王立技術研究所を通じて、トロイセンにもたらされる必要がある。


 私の頭の中は、常に、科学、軍事、外交、そして内政という、多岐にわたる分野の設計図で満たされていた。私は、もはや単なる王妃ではなく、この国の最高技術責任者であり、最高戦略責任者だった。

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