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虐げられし陰の皇女ですが、生贄嫁いだ隣国で「蛮王」に甘く愛され、飯テロ&内政チートで国を救うことになりました  作者: 夏野みず
私たちの未来へ

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帝国の和睦提案と第三の力

 火砲試射から三日後、ロムエルド帝国から、再び特使団がトロイセンを訪れた。しかし、彼らは以前のような傲慢な態度ではなく、完全に恭順の意を示していた。


 使節団を率いるのは、グラディウス公爵ではなく、帝国の若き外交官、レオナルド伯爵だった。彼は、知的な風貌と、冷静な判断力を持つ人物だと、グスタフの事前の調査で知っている。


 玉座の間で、ロキニアスと私に向かい合ったレオナルド伯爵は、深々と頭を下げた。


「トロイセン国王陛下、そしてスーザン王妃殿下。この度の雷鳴の剣の威容、心より拝見いたしました。帝国は、貴国の持つ科学技術の力を、最大限に尊重いたします」


「それで、帝国は何を望む」ロキニアスは、玉座に深く座り、威圧的な態度を崩さなかった。


 レオナルド伯爵の提案は、驚くべきものだった。


「帝国は、貴国との間に、永久的な不可侵条約を締結することを提案いたします。その上で、帝国が持つ高度な土木建築技術と、最新の羅針盤に関する知識を、貴国に提供いたします。対価として、貴国の浄水技術の更なる詳細と、火薬の安全な貯蔵・運用に関する知識を共有いただきたい」


 これは、帝国が、トロイセンの軍事的な優位性を認め、武力衝突を避け、技術交流を通じて共存の道を選んだことを意味する。彼らは、トロイセンを打倒するのではなく、その力を利用しようと考えたのだ。


 私は、ロキニアスに目配せをし、交渉の主導権を握った。


「レオナルド伯爵。不可侵条約の締結は、トロイセンの安全を確固たるものとするため、前向きに検討いたします。しかし、わたくしが提示した製鉄技術の対価は、既に受け取っております。今回の羅針盤と土木建築技術は、単なる技術交流では終わりません」


 レオナルド伯爵は、私の言葉の真意を探るように、静かに問いかけた。「王妃殿下。どのような対価をご希望でしょうか」


 私は、この機会に、トロイセンの国際的な地位を、帝国と対等な第三の力として確立させようと考えた。


「わたくしが求めるのは、技術ではなく、国際的な地位です」私は、はっきりと宣言した。


「帝国は、全大陸の主要国に対し、トロイセン王国を、帝国、教皇庁と並ぶ、大陸の主要三勢力の一つとして、公式に承認する書状を発行してください。そして、今後、大陸の全ての国際会議において、トロイセンが帝国と同等の発言権を持つことを認めます」


 この要求は、帝国にとっては屈辱的だった。彼らは、トロイセンを単なる蛮族の国ではなく、自分たちと並ぶ「文明」として認めなければならない。


 レオナルド伯爵は、一瞬戸惑ったが、すぐに決断した。火砲の威力が、彼の判断を加速させたのだ。


「承知いたしました、王妃殿下。帝国は、貴国を主要三勢力の一つとして、公式に承認いたします。そのための外交文書は、速やかに準備いたします」


 こうして、トロイセンは、火砲という圧倒的な武力を背景に、国際的な地位と、新たな技術を手に入れた。


 この交渉の後、ロキニアスは、満足げに私の手を握った。


「スーザン。貴様は、剣を使わずに、帝国を屈服させた。貴様の知恵は、本当に大陸最強だ」


「王よ。剣の力を理解し、それを最大限に活かすあなた様がいるからこそ、わたくしの知恵は機能するのです。わたくしたちの結合こそが、このトロイセンの最大の強みです」


 私の言葉に、ロキニアスは熱い口づけをくれた。


 トロイセンは、羅針盤の技術を得ることで、海洋進出という新たな野望を持つことになり、土木建築技術は、高炉や研究所の建設をさらに加速させるだろう。


 火砲の試射は、世界の均衡を破っただけでなく、トロイセンを外交の舞台の主役へと押し上げたのだ。次の課題は、この新しい力を、どのように運用し、大陸の真の平和と、トロイセンの永続的な繁栄に繋げるかだ。

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