蛮王の情熱と夜の誓い
帝都での技術伝授と、ロキニアス王による皇帝署名入りの誓約書の獲得により、私たちの外交遠征は実質的な成功を収めた。
グラディウス公爵は、トロイセンが欲していた古代アステリアの学術書と、製鉄技術の資料を全て提供した。私の指示に従い、グスタフ宰相が選抜した技術者たちが、これらの資料を慎重に調査し、その写しを制作している。
その夜、ロキニアスは全ての護衛を部屋の外に出し、私と二人きりで過ごした。
「スーザン。これで満足か」
彼は、私を安楽椅子から抱き上げ、豪華な天蓋付きの寝台へと運んだ。彼の視線は、征服者としての満足感と、私への深い愛情で満たされている。
「はい、王よ。わたくしの知恵は、帝国の最も欲するものを手に入れました。そして、あなた様は、わたくしを帝国の武力で縛り付け、その安全を永遠に保証してくださった」
私は、彼の首に腕を回した。私の安寧と、トロイセンの未来は、彼の愛と力によって守られている。これ以上の幸福はない。
「縛り付けたのは、私ではない。貴様だ、スーザン」
彼は、私の髪に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。
「貴様の持つ知恵は、私を狂わせる。貴様がこの私から離れ、他の国へ、他の男へと知恵を分け与えるのではないか。私は、その恐怖に耐えられぬ」
彼の情熱的な独占欲は、私にとっては最高の愛の証明だ。彼は、私をただの王妃としてではなく、彼の精神的な支柱として扱っている。
「王よ。わたくしは、あなた様から離れません」私は静かに答えた。
「わたくしは、あなた様が蛮王として、わたくしの知恵を最も尊重し、最も激しく愛してくださることを知っています。わたくしの知恵は、トロイセンの、そしてロキニアス王のものです」
その夜、ロキニアスは私に、帝国の誓約書が持つ本当の重みを教えてくれた。
「あの誓約書は、貴様を外交的な人質にするためのものではない。あれは、貴様が私の王妃であることを、全大陸の強国に認めさせるための儀式だ」
「儀式……」
「そうだ。もし、貴様が帝国で何か問題を起こし、私が貴様を連れ戻すために軍を動かしたとする。その時、帝国は、あの誓約書により、私を正当な権利者として認めざるを得ない。そして、教皇庁が貴様を『魔女』として再び非難すれば、帝国は、誓約書に反して貴様の安全を保障しなかった罪を負うことになる」
彼は、私の知恵と同じくらい、緻密で戦略的な思考を持っていた。彼の愛は、単なる情熱ではなく、武力と権威による最強の安全保障だったのだ。
「王よ……。あなた様の愛は、わたくしの知恵を遥かに凌駕します」
私は、心から感動した。彼の蛮王としての本能的な愛情こそが、私にとって、この世界で最も価値のある宝だった。
その夜、私たちは深い愛を誓い合った。外の世界の喧騒や、政治的な陰謀は、この寝台の天蓋の外には届かない。私は、彼の腕の中で、初めて故国を失った皇女ではなく、トロイセンの愛された王妃として、心からの安らぎを得た。




