毒麦の告発と、トロイセンの闇
スーザンが王の別室で厳重な看病のもと回復に専念する中、ロキニアス王は、火薬の安定生産と軍備の増強に全力を注いだ。火薬は、スーザンが開発した【ミョウバンによる化学加速法】により、従来の予想を遥かに上回るペースで増産体制に入りつつあった。
しかし、六ヶ月の猶予期間が三ヶ月を過ぎた頃、トロイセン国内で【予期せぬ内紛】が勃発した。
問題は、【穀物】だった。スーザンが開発し、周辺国に分け与えたはずの【新しい高収量穀物】が、王都内の穀物市場で【毒麦】として流通しているという告発が、市民から寄せられたのだ。
「王よ!この穀物を食べると、頭痛と吐き気を催します!王妃殿下がくださった命の種が、なぜ毒麦になったのですか!」
訴えは、すぐに王都全域に広がり、市民の間にはパニックと、スーザンへの【疑念】が生まれ始めた。教団の【魔女】という非難は払いのけたものの、生活に直結する【食糧】の問題は、民衆の信仰心よりも遥かに根深く、破壊的だった。
ロキニアスは、直ちに調査を命じた。調査を担当したのは、グスタフ宰相ではなく、王直属の秘密諜報部隊だった。王は、この問題が単なる事故ではなく、トロイセン内部の【深い闇】に根差していることを直感していた。
調査の結果、判明したのは、驚くべき事実だった。毒麦は、王妃が開発した穀物と【見た目は全く同じ】だが、【別の品種の麦】が意図的に混入されていた。その毒麦は、収穫量が極めて少なく、本来なら流通に値しない【劣悪な品種】だったが、ある特定の部族が、王妃の種を市場に流通させる直前に、密かに混入させていたのだ。
その部族は、ロキニアス王が力を増す以前から、王都の【食糧流通】を一手に握っていた【旧勢力の貴族】と癒着していた。彼らは、王妃の【内政チート】によって、自分たちの【独占的な権益】を失うことを恐れていた。
「王妃殿下の新しい穀物によって、彼らの腐敗した【中間搾取】が不可能になった。だから、彼らは王妃の評判を貶め、民衆の信頼を失わせるために、毒麦を混入させた……」報告を聞いたロキニアスの怒りは、頂点に達した。
これは、帝国や教団ではなく、トロイセン内部から発生した【自壊行為】であり、スーザンが最も恐れていた【内政の混乱】だった。
「王妃の知恵は、国を外敵から守った。だが、その知恵は、同時に【利権】を失った者たちの【憎悪】を呼んだ」
ロキニアスは、スーザンにこの事実を伝えるべきか迷った。彼女を安楽椅子から引きずり出して、この問題を解決させるのは簡単だった。彼女ならば、この【内政的な毒】の解毒剤を、すぐに用意するだろう。
しかし、彼は【永遠の休息】を誓った。彼は、自らの手で、この国の闇を切り裂かなければならないと決意した。
「グスタフ。毒麦を混入させた部族と、それに加担した全ての貴族のリストを作成せよ。彼らが集めた不正な富も全て洗い出せ。この国に、王妃の【善意】を汚すことを許す者は、一人たりとも存在させぬ」
ロキニアス王の処断は、迅速かつ冷酷だった。彼は、市場での【公開裁判】を執り行い、毒麦を混入させた部族の長を、自らの手で処刑した。
「我が王妃がもたらした【命の種】を、己の利権のために毒に変えた者には、【蛮王】としての私が裁きを下す。今後、王妃の知恵と恵みを汚す者は、家族もろとも、このトロイセンから追放する」
この処断は、蛮族の民衆に、ロキニアス王の【絶対的な恐怖】を改めて植え付けたが、同時に、【王妃の善意】を疑う心を完全に払拭させた。ロキニアスは、強大な武力をもって、スーザンの【内政チート】と【王妃としての権威】を、自らの手で守り抜いたのだ。
この事件により、スーザンは、トロイセンの王妃としての地位を、名実ともに【絶対的なもの】とし、彼女の知恵は、もはや誰も手出しできない【神聖な領域】となった。しかし、ロキニアスは、この【内なる戦い】が、外部の敵以上に神経をすり減らすことを知った。彼は愛する王妃に、二度とこの世界の【汚い争い】を見せたくないという思いを、一層強くした。




