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虐げられし陰の皇女ですが、生贄嫁いだ隣国で「蛮王」に甘く愛され、飯テロ&内政チートで国を救うことになりました  作者: 夏野みず
水の改革と、帝国からの経済制裁

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蛮王の甘い看病と、三度目の危機

【水の浄化儀式】を終え、その直後から高熱を出して倒れ込んだスーザンを、ロキニアス王は誰にも触れさせず、自ら看病した。彼は、戦場で何千もの敵を討ち、何万もの兵士を率いた【蛮王】の姿を捨て、ただ一人の女性の看病に全てを捧げた。


「水だ、スーザン。一口でもいいから飲め」


 彼は、氷で冷やした清浄な水を、スーザンの唇に何度も運んだ。彼女の体は、この数ヶ月に及ぶ【硝石プロジェクト】と【水の改革】、【食糧外交】という、休む間のない激務によって、極限まで消耗していた。彼女の内政チートは国家を救ったが、代償としてその身を削っていたのだ。


 ロキニアスは、自分が略奪してきた宝よりも、この王妃の命の方が遥かに価値があることを痛感していた。


「目を覚ませ、スーザン。貴様が倒れてしまえば、トロイセンどころか、私自身が意味を失う」


 彼の声は、戦場での号令とは似ても似つかない、甘く、切羽詰まった響きを持っていた。彼は、スーザンの細い手を握りしめ、自分がこれまで彼女にかけた負担の全てを、今、償おうとしているかのように、献身的に看病を続けた。


 数日後、高熱は引き、スーザンはゆっくりと意識を取り戻した。目の前にいたのは、頬に無精髭を生やし、甲冑の代わりに柔らかい寝間着姿のロキニアス王だった。彼は、スーザンが目を覚ましたことに安堵し、涙腺が緩むのを必死で堪えた。


「王よ……政務は、どうなさいましたか」


「知るか。貴様が倒れている間、全てグスタフに任せた。貴様がそばにいない政務など、無意味だ。貴様は、ただ私のもとで、ゆっくりと回復すればいい」


 ロキニアスは、スーザンを抱き起こし、彼女がこの世界で最も愛する【米と、ミョウバンで浄化した水】で作られた、消化に良いお粥を、自ら食べさせた。


「食え。貴様が作ったこの国の最高の恵みだ。貴様自身が、これを食べなければならない」


 スーザンは、王の変わらぬ溺愛に、心からの安堵を覚えた。彼が、彼女の知恵だけでなく、彼女の存在そのものを愛していることが伝わってくる。


「ありがとう、王よ。わたくしの身体は大丈夫です。あと一週間もすれば、完全に回復します」


 スーザンの回復を知ったグスタフ宰相は、安堵とともに、緊急の報告を携えて私室へやってきた。


「王よ、王妃殿下。神聖教団国家から、外交使節団が到着しました。彼らは、王妃殿下の【水の浄化儀式】について、公に【異端審問】を求めに来ました」


 グスタフの顔色は、帝国との経済戦争時よりも遥かに青ざめていた。教団の使節団は、単なる外交官ではなく、その背後に【精神的な暴力】と、全大陸の【信仰的な圧力】を背負っていたからだ。


「異端審問だと?」ロキニアスは激しい怒りを見せた。


「彼らは、王妃殿下の【ミョウバンを用いた浄化】は、神の恩寵を冒涜する【魔術】であると主張しています。さらに彼らは、もし王妃殿下が教団の裁きを受け入れなければ、全大陸の信徒に対し、トロイセンへの【精神的な不買運動】と、【聖戦の呼びかけ】を行うと脅しています」


 これは、帝国とは比較にならない、トロイセンの【蛮族の民】の心に深く刺さる攻撃だった。蛮族の民は、ロキニアス王を恐れ、スーザンの奇跡を信じていたが、彼らの根底には、幼い頃から教え込まれた【神聖教団国家の信仰】が深く根付いている。もし教団がスーザンを魔女と断罪すれば、民衆の心は一瞬で離反し、内政は完全に崩壊するだろう。


「スーザン……貴様が耳元で囁いた【狂気的な計画】とやらを、今すぐ実行する時が来たのか?」ロキニアスは、スーザンの手を取り、真剣な瞳で見つめた。


 スーザンは、まだ完全に回復していない体を起こし、力強い眼差しで王を見つめ返した。彼女の瞳は、疲労の色を消し去り、知恵の光に満ちていた。


「はい、王よ。これは、剣や火薬では解決できない【信仰の戦い】です。わたくしは、彼らが最も恐れるものを、彼ら自身の前で突きつけます。彼らはわたくしを魔女と呼ぶ。ならば、わたくしは彼らの前で、【神の代理人】としての【最後の奇跡】を演じてみせましょう」


 スーザンは、ロキニアスに対し、使節団が到着する前に準備すべき【三つの指示】を出した。一つは、王都の地下深くから、【奇妙な鉱物】を大量に運び上げること。二つ目は、王都の全ての貴族と重臣、そして可能な限り多くの民衆を、謁見の場に集めること。そして三つ目は……【火薬が完全に完成した】という【虚偽の情報】を、使節団の中に潜むスパイにリークすることだった。


「王よ。わたくしの最後の知恵は、この世界に、真の【光】と【科学】の力を示す、最初で最後の舞台となります」


 彼女の、静かで決定的な言葉に、ロキニアスは全身の血が熱くなるのを感じた。蛮王と陰の皇女による、神聖教団国家との【命運を賭けた知恵の対決】が、今、幕を開けようとしていた。

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