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虐げられし陰の皇女ですが、生贄嫁いだ隣国で「蛮王」に甘く愛され、飯テロ&内政チートで国を救うことになりました  作者: 夏野みず
水の改革と、帝国からの経済制裁

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清らかな水の供給と、蛮王の民の忠誠

 硝石プロジェクトが秘密裏に進行する一方、王都では公衆衛生革命の象徴である上水道アクアダクトの建設が、ロキニアス王が動員した蛮族の労働力によって、驚くべきスピードで進められていた。


 ロキニアスに絶対的な忠誠を誓う部族の民たちは、かつて略奪と戦いでのみ生きてきたが、今は王妃の命によって、土を掘り、石を切り出し、巨大な水路の建設という平和な労働に従事していた。彼らの士気は極めて高かった。なぜなら、これは単なる土木工事ではなく、「王妃の神聖な知恵を守り、王都の民の命を救う戦い」だと彼らは信じていたからだ。


「王妃様の教えは、王の剣よりも鋭い。この水路は、王妃様が民に与える命の源だ!」


 部族長たちは、汗まみれになりながら石材を運び、王妃スーザンが描いた設計図通りに、アーチ状の高架水路を正確に組み上げていった。彼らの野蛮なまでの膂力と、スーザンの精緻な設計が融合し、王都の景観は日を追うごとに変わっていった。


 そして、建設開始から三ヶ月。ついに、王都の郊外に設けられた集水地から、清らかな水が高架水路を通って市街地へと流れ込む、歴史的な瞬間が訪れた。


 王都の中心広場に設けられた最初の給水所。スーザンの合図とともに、石造りの獅子の口から、大量の清冽な水が勢いよく噴き出した。


 その場に集まっていた市民たちは、歓声を上げるよりも先に、その水の透明度と冷たさに驚愕し、静寂に包まれた。それまで彼らが飲んでいた井戸水は、わずかに濁り、生ぬるいものだったからだ。


 一人の老人が、恐る恐る手を差し出し、その水を飲んだ。そして、彼の顔に、生まれて初めて経験するような、純粋な驚きの表情が浮かんだ。


「神よ……清い。こんなに清らかな水は、生涯で初めてだ!」


 歓声は、やがて王妃スーザンへの熱狂的な崇拝の叫びへと変わっていった。


「王妃様に感謝を!聖なる王妃様、我々の命の恩人!」


 スーザンは、ロキニアス王とともにその光景を見ていた。ロキニアスは、民衆の歓喜の波に飲まれながらも、視線はスーザンから離さなかった。彼の表情は、征服者としての満足感ではなく、愛する王妃が民に認められたことへの、深い喜びと誇りで満たされていた。


「見ろ、スーザン。これが貴様がもたらした光だ。私の剣では、このような歓喜は生み出せぬ」


「王よ。わたくしはただ、王の命を守るための知恵を使っただけです。この水路は、王の決断と、民の力が作り上げたものです」


 この水の供給により、王都の疫病発生率は劇的に低下し、公衆衛生革命は疑いようのない成功を収めた。スーザンの人気と信頼は、王のそれと並ぶほどになり、もはや彼女を「生贄」と呼ぶ者は、トロイセンには一人もいなくなった。


 しかし、この歓喜の影で、硝石プロジェクトはまだ道半ばであり、経済制裁による物資の枯渇は深刻化していた。


 そして、帝国は、トロイセンの内政チートを阻止するため、さらなる卑劣な一手を打ってきた。


 それは、トロイセンの経済の生命線である食糧輸出を標的にした、国際的な農作物買い占め工作だった。帝国は、莫大な資金を投じ、トロイセンが周辺国に輸出する穀物や、特産品を全て高値で買い占め、トロイセンの国庫に入るはずだった外貨を根こそぎ奪い取ろうと画策したのだ。


「水の次は、パンの奪い合いか……」


 スーザンは、王宮に届いた緊急の報告書を前に、深く息を吸い込んだ。彼女の神眼は、この絶望的な状況を打破する、新たな「知恵」を求めて、光を放っていた。

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