表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられし陰の皇女ですが、生贄嫁いだ隣国で「蛮王」に甘く愛され、飯テロ&内政チートで国を救うことになりました  作者: 夏野みず
王妃への道のり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/28

正式な婚礼と、国を救う初めての「飯テロ」

 スーザンが内政改革の第一歩として流通システムに手を加えてから、わずか一ヶ月が過ぎた。王宮に届けられる食糧の質は劇的に改善し、兵士たちの食事にも栄養価の高い食材が回り始めた。目に見える変化は、王の健康だけでなく、兵士たちの士気にも好影響を与え、スーザンに対する王宮内の評価は、単なる「王の寵愛を受ける女」から、「王の命運を握る賢女」へと変わりつつあった。


 そして、ロキニアス王とスーザンの婚礼の日が訪れた。


 婚礼は、派手な外交儀礼を嫌うロキニアスの方針により、最小限の規模で行われた。しかし、トロイセン王国の最高位の貴族と武官たちが集結し、厳粛な雰囲気の中で執り行われた。


 スーザンは、トロイセンの伝統的な衣装に身を包んだ。それは、豪華絢爛な帝国のドレスとは異なり、動きやすくも威厳のある、厚手の革と上質な布を組み合わせたものだった。


 ロキニアスは、正装の鎧を纏い、いつもの冷酷な仮面を維持していたが、スーザンと向かい合い、誓いの言葉を交わす際、彼の銀色の瞳には、誰にも気づかれないほどの微かな熱が宿っていた。


「スーザン・ロア・マドレス。貴様は今日より、トロイセン王国の正式な王妃である。我が命ある限り、この国と、貴様を守り抜くことを誓う」


 誓いの口づけは、儀礼的なものだったが、ロキニアスの唇は冷たく、そして力強かった。その瞬間、スーザンは自分がこの国の運命と、この蛮王の孤独な魂を、完全に背負うことになったのだと実感した。


 婚礼の儀式が終わると、スーザンは早速、王妃としての公務を開始した。彼女の最初の公務は、王宮内の食堂で、兵士たちのための「栄養改善プログラム」を発動することだった。


「王妃殿下、兵士の食事までご心配いただかなくても……」


 グスタフ宰相は、いまだスーザンに不信感を抱いていたが、王の命令と、流通改善の実績を前に、表立って反対はできなかった。


「宰相殿。兵士こそが、このトロイセンの盾であり剣です。彼らの体力が回復しなければ、国力は上がりません。そして、栄養はただの食事ではなく、戦術です」


 スーザンは、公の場で、自らの知識を初めて披露した。


 彼女は、兵士たちのための新しい食事体系を提案した。それは、彼女の知識と神眼で特定された、栄養価の高いトロイセン産の穀物と野菜を組み合わせた、「パワー飯」と呼ばれるものだ。具体的には、米に様々な豆類と乾燥野菜を混ぜて炊き込み、発酵調味料で味付けした、いわゆる五穀米と具沢山の味噌汁の組み合わせだった。


「これは……味が濃く、力強い。だが、これまでになく、身体に染みわたる」


 兵士たちが一口食べると、驚きの声を上げた。彼らは日頃から塩辛い乾燥肉や硬いパンに慣れていたが、スーザンの作る食事は、素材の旨味と深いコクがありながらも、胃に優しく、持続的なエネルギーを与えるものだった。


 スーザンは、この「飯テロ」を通じて、兵士たちに直接訴えかけた。


「皆様が戦場で命を懸けられるのは、健康な体と、確固たる士気があってこそです。わたくしは王妃として、皆様の体力を維持する責任があります。この食事は、皆様の命を守る盾となるでしょう」


 この行動は、たちまち兵士たちの間で絶大な人気を呼んだ。スーザンは、上流階級の貴族だけでなく、国の基盤である兵士たちの支持も獲得したのだ。


 その夜、ロキニアスは、王妃となったスーザンの部屋を訪れた。


 彼の纏う鎧は脱がれ、動きやすい簡素な服姿だ。彼はスーザンを寝台に座らせると、自分もその隣に腰を下ろした。


「兵士の食事改善。なかなかやる」ロキニアスは素直に褒めた。


「彼らが元気になれば、王の負担が減りますから」


「ふん。そうか。だが、貴様が他の男たちに優しく振る舞うのは、見ていて気が散る」


 ロキニアスは、スーザンの顔を両手で包み込んだ。彼の大きな手は、彼女の小さな顔をすっぽりと覆い隠してしまう。


「貴様の優しさと知恵は、私と、この国のためにだけ使え。他の誰にも、貴様の温かさに触れさせるな」


 彼の銀色の瞳には、冷酷さではなく、燃えるような独占欲が浮かんでいた。それは、もはや蛮王の仮面を脱ぎ捨てた、一人の男としての激しい感情だった。


「王よ……わたくしは、王の王妃です。わたくしのすべては、この国と、王のためにあります」


 スーザンは、彼の手に自分の手を重ね、力強く頷いた。その瞬間、ロキニアスは、スーザンの額に深く、そして長い口づけを落とした。


 それは、儀礼的な誓いではなく、二人の魂を強く結びつける、情熱と執着の証だった。蛮王の溺愛は、ここから加速し、トロイセンの国全体を巻き込む壮大な内政チートの物語が本格的に動き始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ