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諮問説明会

  午後一時四分


 ロクマが我に返った時、進行係である自身が放心していることを不審に思った聴衆が、心配げにこちらを眺めていた。「大丈夫かな」、「ぼうっとしてても素敵だわ」などとコソコソと話す声が聞こえてくる。


「失礼しました。早速ですが説明会を始めようと思います」


 気を取り直し、ロクマは進行を再開する。先ほどは少し面倒にも感じてしまっていたが、数日前にイチジョウに言われたことを思い出し、完全なる目標ができた。『奥の院を完膚なきまでに叩き潰すこと』。そして『隣で座るノノミヤに何としてでも強い自分を見てもらうこと』……。


「まず、この説明会を開催した意図なのですが、それは大学の皆さまへの誠意が大半です。正当な説明もなく、一つのサークルを廃部にしてしまうことへの抵抗……。サークルの廃止がどのように皆様へのメリットとなるか、それをお伝えするためにここへ招きました」


 納得いただけるよう、全力で取り組んでまいります。と彼は付け加え。一礼をする。観衆からの嬌声が舞い上がる。



  午後一時十分



「なーにが誠意よ。イチジョウが提案するまで、こんなことする気なんて一切なかったじゃないの」


 ロクマの一礼後、湧き上がる記念ホールの喧騒に紛れて、ミツメは小声で文句を言った。


「ミツメさん、ここはこらえて……」


 イヌマキもロクマに苛立ちながらも、隣に座るミツメをなだめる。


「ここで怒っても仕方がない。前とは違い、我々には勝機があるのだ。ここはぐっと我慢だ、我慢」


 パイプ椅子が破壊されそうなほどどっかりと座ったフセミもそんなことを言う。


 説明会の際、討論などを行うつもりは無いと言ったにも関わらず、ロクマは奥の院の五人に、ホールの真ん中の特別席を用意した。「相手にとって失礼のないように」と彼はうわべを語っていたが、実のところは晒し者にするためにわざと中央に座らせたのだろう。


「ではまず、サークル廃部の概要から説明します。今回廃部を命じたのは、事故物件完全攻略サークル『奥の院』」


 奥の院とロクマが言った瞬間、会場にどよめきが生じた。元々不気味だという評判が浮上していたが、諮問委員会との軋轢によって、かなり悪い評判が出回っているようだ。観衆は口々に「あのオカルトサークルか」や「基地外集団のね」などと口々に言っている。


「皆さんも大学内で、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。確かに彼らは身内だけで除霊の真似のようなことをしているだけなのですが、内容が内容です。なんでも、滅茶苦茶な入部試験を設けていたり、物件の窓を叩き割ったりなど……。契約的、法律的には問題がないものでも、倫理的な問題がそこに生じます」


 それに、とロクマは付け加え、これが決め手だと言わんばかりに大きく言葉を溜めてから放つ。


「彼らは去年、京都市で開催された祇園祭の会場で、不法侵入の疑いで警察官に事情聴衆を受けたという事実もあります」


 彼の言葉に、聴衆は大きくざわめく。今までは、ただ得体のしれない奴ら程度だった認識が、犯罪行為も厭わない危険な集団というものに変わった。


「こんなことをする集団が、同じ大学に所属していると思われたくないはずです」


 畳みかけるようなロクマの言葉に聴衆は扇動され、口々に叫ぶ。


「そうだそうだ!」


「大学の面汚しよ!」


「今すぐつまみ出せ」


 そんな罵詈雑言を無言で聞き入れる奥の院一同を、ロクマは見下ろす。『私の力がなくとも、君らは破滅する運命なのだ』とでも言うように。


 しかし、とロクマは考える。大きな会場にして正解だったと。母数が増えると、当然ロクマのファンの女学生が増える。彼女らの同調圧力で、野次馬たちの意見も、諮問委員会側に傾きだしている。


「ふん、君らとは支持の多さが違うのだ」


 ロクマは、誰にも聞こえないようにそう呟いた。



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