表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/70

反撃の狼煙


「やっぱり私はあいつを許せない……。どう考えても、やり方が悪質じゃない。職員だって、最初から出てこさせれば良いのに、私らがちょっと反抗したら呼んできて……。完全に悪者扱いに仕立て上げてたじゃない。それに聞いた? 最後の捨て台詞。『除霊擬き』だって。そんなことを言う必要あるの? 明らかにこっちを馬鹿にしてるじゃない。そりゃ、やってることは変だし、意味不明かもしれない。でも、サークルなんてみんなそうでしょう? 人が集まって、共通意識をもって何かを達成していく……。それがサークルじゃないの? サッカーだってテニスだって、みんな根本的には意味不明じゃない。そんな中で奥の院だけなんて。

……私はやる。あのロクマとかいう男に一泡吹かせてやる。奥の院の再開はそれから。みんなが行かないなら、私一人で」


「ミツメさん……」


 とイヌマキは絞り出すように言った。確かに、イヌマキもミツメと同意見だった。世界には、納得はいくが許せないものがある。それを、諮問委員会は身をもって教えてくれた。しかし、彼らに挑むのは無謀としか思えなかった。大学本局を後ろ盾にする学生部の人間たちに逆らうのは、どう考えても危険だった。流石のイヌマキも、大学を除籍される可能性を恐れずにはいられなかった。


 その時、談話室の扉がガラガラと開いた。誰かと思い全員がそちらを見ると、ヨツツジがそこに立っていた。


「ヨツツジ? ここにいたんじゃないのか」


「……お前たちが大学を出てから、俺は一人だったが」


「そうか……」


 ヨツツジ以外の全員が、申し訳なさそうな表情をする。いくら無口だからといって、存在の有無すらあやふやになっていたことを反省しつつ、彼の気配の消し具合に驚いているようだった。


「それで、何処に行っていたのだ」


 フセミがそう問いかけると、ヨツツジは手に持っていた紙束を、中央の丸机にばさりと置いた。そうして一言。


「……ロクマという男。あいつを、潰す理由ができた」


 思考が追い付かない四人を無視して、ヨツツジは話を続ける。


「……奴、ロクマは俺たちを個人的な理由で潰そうとしている」


 四人が彼が持ち込んできた紙束を眺めると、そこにはメッセージアプリのスクリーンショットが印刷されていた。


「……今、コンビニで印刷してきた。ロクマと、諮問委員会の内の一人だったノノミヤという女の会話だ」


「こんなもの、短時間でどうやって手に入れた」


 イチジョウが聞いても、ヨツツジは小さく首を振るだけだった。「諜報員だからだ」と意味をなさない返事をしたので、イチジョウも深く詮索することはやめたようだ。


「うわ……。これは酷いわ」


 その場にいた全員が、その内容に引きつっていた。端的に説明すると、ロクマは意中のノノミヤになんとか振り向いてほしく、メッセージで必死さを隠しきれていないアプローチがかなり前から繰り返されていた。典型的で気障な台詞ばかりチョイスしてノノミヤを落とそうとしている絶望的なセンスに、イヌマキたちはしばらく言葉も出なかった。『今日は月が綺麗だね』というメッセージを見た時、全員吹き出しそうになっていたが、大事な話だったので皆堪えた。しかし肝心のノノミヤはロクマのアプローチを全く意に介していないらしく、返事は極めて素っ気なかった。数か月前から続いていた見るに堪えないやり取りを眺め続け、ついに昨日の会話にに辿りついた。


「なんだこれは」


「哀れよ。哀れ」


 昨日、ロクマは、素っ気ないノノミヤの反応にしびれを切らしていた。『君を振り向かせるために、地位のある委員長に努力して成ったのに』と見当違いな文句をノノミヤに送りつけている。


「救いようのない奴ね」


 その後も、自身がどのような努力を重ねて諮問委員長になったかのプロセスを延々と語っていたが、鬱陶しいだけなので割愛しておくことにする。


 それに対するノノミヤの反応も、また鋭いものだった。『あなたの強いところ、和私はまだ知らない』と一蹴。その後、これまでのうっ憤をすべて晴らすようにノノミヤの長文での反撃が始まった。『諮問委員会なんてほとんど機能していないも同然なのによくそんなに威張れるね。私のことを副委員長に推薦したのもあなたでしょう?誰がそんなことを望んだの? あなたの物差しで考えないで。私、こんな訳の分からない委員会で意味の無いことをしている人が一番嫌いなの』


「そりゃあそうなるわ」


「うむ、少しすっきりしたな」


 と二人が一言。ノノミヤのメッセージの後、数時間の間、ロクマからの返事は来ていなかった。奥の院全員が、流石に諦めたのだろうと思い次の印刷用紙をめくる。『君がそう言うなら分かった』というロクマの返事に続いた言葉で、全員が今回の陰謀の真実を知った。


『ノノミヤ君。君が僕の強いところを知らないというのなら、明日見せてあげよう。諮問委員会がどれほどの力を持った組織なのか。そして君の嫌う、訳の分からない組織で意味の無いことをしている人間たちを、僕の権力を使って排斥して見せよう。明日の定例総会の後、第二演習室に向かう。楽しみにしていてくれ』


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


 すべて読み終えた五人は、しばらく無言だった。皆思うことは様々だろうが、ロクマと言う男への憎悪だけは共通して持っていたに違いない。「どうする」と言わんばかりに、四人はリーダーの顔を見る。イチジョウは、期待に応えてやろうと、いつもよりもきっぱりとした声でこう言った。


「……作戦会議は四日後、場所はこの公民館の、談話室二だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ