表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/71

紗グ目

午後九時零分


「親父!」


 仏間に、ナルユメの声が響く。ジュントクは、呼吸こそしているものの、もうほとんど動かなくなっていた。


「全員無事だな」


「はい! イチジョウさんたちは?」


「まあ、なんとかな」


「実を言うと、死にかけたのだ!」


「あら、私たちもよ。ビルから落ちそうになったり、人ごみに圧死もしかけたりね」


 奥の院一同も、数時間ぶりの再会の喜びを分かち合っていた。お互い、かなりボロボロになっていることが、激闘、困難の何よりの証明となっていた。


「皆様 お揃いでしょうか」


 迎撃チーム、捜索チームが互いにそろったことを確認したスズリが言った。隣には、カクシノが立っている。


「これからスズリちゃんが、君たちの作戦『宵山作戦』の裏で進行していた『真 宵山作戦』の真相を語ってくれる。みんな、よく聞いていてね」



        〇



「……お話は、三百年以上前の京都にさかのぼります。当時この屋敷、サグメ家は、有力な地主のお家でして。周辺の農民たちよりは恵まれた生活を送っていました。……今私、若様の苗字を言ってしまいましたが、問題ありませんでしたか? ……そうでしたか、であれば良かったです。そう、主人様たちの上のお名前は、サグメと言うのです。


 しかし京都と言えども、こちらは洛外。飢饉の影響が大きく響いていたようです。


 そして桜町天皇の御時、天災としか言いようのない大飢饉が、この北山を襲います。このままでは全員が餓死してしまう……。そんな時、当時のサグメ家当主、カイシ様が、口減らしのために周辺の人民を大量に殺してしまったのです。屋敷の人物だけでも助かりたいという思いが、そのような凶行を起こさせてしまったのでしょう。正式な数は存じかねますが、飢饉の時勢に豊かな暮らしをされていたことから、一つの村の人口程は殺しただろうと推測されています。


 サグメ家は権力もありましたから、殺人をもみ消して、一切のお咎めは無かったと言います。

 多くの人間の命を奪われたカイシ様でしたが、赤子を身ごもった母親を殺してしまったことで精神が崩壊、そのまま自刃されてしまいました。それが、今からちょうど三百年前の今日、祇園祭宵山だったのです。


 カイシ様の死後、彼の息子であるトウマ様は、犠牲者たちを供養するため、この仏間に祭壇を作りました。しかしその次の年、同じ宵山の日に、彼はは不審死を遂げられました。仏間で、外傷もなく、ただ心臓だけが止まっていたと記録されています。


 更に次の当主、サトミ様は、自身も死んでしまうことを恐れ、祇園祭宵山の日に“戻って”くる犠牲者の霊たちを封印する祝詞を考案されました。悪いのはサグメ家であることは承知の上であったでしょうが、自身の家系を守るため、彼らを悪霊として撃退することを決められたのです。これが、現在まで続く、儀式の始まりでした。


 そして時は現在に戻ります。十二代目当主であったジュントク様は、やはり自分たちの行いで命を落としてしまった犠牲者の霊を、悪として仕立てることに、昔から疑問を抱いておられました。そんな罪悪感があったからなのでしょう、主人様は、儀式後に体の具合が悪くなられることが多かったのです。唯一の拠り所は、若様と過ごした、祇園祭の思い出だけ……。奥様は、随分と前に亡くなられていましたから。


 そして数週間前、遂に吞まれてしまったのです。罪の意識、サグメ家の呪いに。


 これ以上の儀式続行は不可能。しかしご子息である若様に、自分の様に苦しい思いをしてほしくない。ですがこのままでは、若様自身が助けに来る。それを何とか阻止したいという思いから、ジュントク様、カクシノ様、カガリ様と私の四人で考え付いたのが、『宵山作戦』だったのです。若様、そして奥の院の皆さまをだますような形をとってしまったこと、本当に申し訳ございません。これが、若様が最も苦しませず、サグメ家の呪いと儀式を断ち切る最良の方法だったのです。


 どうか、お許しください。皆様」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ