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作戦会議

  四月十二日 第二演習室


「では、本作戦の概要を説明していく。質問があれば、適宜聞いてもらって構わない」


 本作戦のリーダーであるイチジョウが、仰々しい態度で言った。


「作戦No.は00324、ロケーションは都内のR区画、住宅地にある築二年の民家だ」


「随分、新しいのね」


 サブリーダーのミツメが意外そうに言う。


「土地自体が侵食されているのだろう。今回は用心が必要やもしれん」


 医療リーダーのニノツキも、神妙な表情をしている。そんな中イチジョウが続ける。


「こんなケースは稀だが、作戦内容は通常どおり進行する予定だ。それで、予想される敵勢力だが…、おい、ヨツツジ」


 第二演習室の隅で腕を組み、聞いているのか聞いていないのかわからない様子だった諜報員のヨツツジが顔を上げた。


「…最も目撃情報が多かったのは、髪の長い女。時間帯は夕刻、または明け方。主な現象はラップ音、物体浮遊、騒霊」


 ヨツツジは必要な情報だけを機械のように伝えて、再びうつむき加減になった。

「髪の長い女……。察するに、攻撃手段は『呪髪』か?」


「……」


 何も答えないヨツツジの反応を、イチジョウは肯定と捉えたようだった。


「コンタクト(敵対)に備えて、気道確保の対策が必要だな。皆、やり方は忘れていないな」


「自信のない者は、この後私を尋ねてくれたまえ。努めて伝授しよう」


「では、気道確保については、ニノツキに任せよう。そして現状の被害状況についてだが、霊障による怪我人が四人、引っ越しを余儀なくされた世帯が二年間で六世帯」


「うーむ、多いなあ」とニノツキが唸ると、イチジョウがさらに続けた。


「不動産業者のヤマモトという男によると、住職や霊媒師を呼んでもすべてお手上げ、自分たちの手に負えないと逃げられてしまったらしい」


「そういう物件が、私たちのところに回されてくるものね」


ミツメの言葉にリーダーは、「まあな」と言って、手元に置かれた資料に目を通した。


「物理的に干渉してくる個体は、経験上危険な奴が多い。“弾薬”はいつもより多めに用意しておいた方がよいだろう」


「であれば私の出番だな。“補給所”には私から連絡しておこう」


 自信げに話すニノツキに頷き、イチジョウは作戦概要の伝達に戻る。


「作戦期間は四日後、四月十六日から三日間を予定している。戦闘状況によって、期間が前後する可能性があることも、頭に入れておいてくれ。集合場所は物件の最寄り駅。伝達事項は以上だ」


「それと」とイチジョウは付け加える。彼の目線の先は、不安げにあたりを見回す一人の一年生に向けられていた。


「本作戦より初参加の新入生だ。ハンドルネームは『イヌマキ』。親切にしてやってくれ」


 全く会議についていけず、蚊帳の外にいた中で、急に注目されたイヌマキは、思わず面食らった。


「……あの、イヌマキと申します。よろしくお願いします」

 彼女はたじろぎながらも何とか挨拶を済ませた。ミツメとニノツキが暖かく拍手する。


「『イヌマキ』、素敵なハンドルネームね」


「困ったら、何でも尋ねてくれたまえよ」


 ヨツツジは彼女を一瞥しただけで、何も言わなかった。歓迎ムードがひと段落したことを確認したイチジョウが続ける。


「では解散。各自、作戦当日に備えてくれ。それとミツメ、イヌマキに細かいことを教えてやってくれ。女性同士の方が話しやすいだろう」


「そうね、承知したわ。それじゃあイヌマキちゃん、これから色々と教えるから、どこかゆっくり話せるところに行こっか」


ミツメはイヌマキに微笑みかける。困惑に困惑を重ねた彼女も、頼りなく立ち上がった。

「はい、お願いします……」


 


本編はこれよりスタートでございます。

よろしくお願いいたします!

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